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5月家計調査・実質消費支出・前年同月比は2カ月連続の増加か。5月景気動向指数・一致CIは3カ月連続前月差上昇。基調判断は「下方への局面変化」継続か。―日本の主要経済指標予測(2024年6月28日)―

5月家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は+0.3%程度と、2カ月連続増加になると予測。(7月5日発表)

 4月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は前年同月比+0.5%と、14か月ぶりの増加になりました。 

 授業料等などの「教育」は実質・前年同月比+28.0%増加しました。仕送り金などの「その他の消費支出」は実質・前年同月比+54.0%増加しました。婚礼関係費、葬儀関係費などの諸雑費は実質・前年同月比+6.1%増加しました。

 一方、自動車購入、自動車等関連用品など自動車等関係費が実質・前年同月比▲19.7%の減少になりました。物価上昇の影響に加え、前年実施していた全国旅行支援後の需要の落ち着きの影響で外国パック旅行費、国内パック旅行費などの教養娯楽サービスは実質・前年同月比▲11.4%の減少になりました。トマト、レタスなどの生育不良による価格高騰の影響から、「野菜・海藻」が実質・前年同月比▲7.9%減少しました。 

 実質・季節調整済み前月比は▲1.2%と3か月ぶりの減少になりました。デフレーターの全国消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の前年同月比は+2.9%でした。 

 財・サービス別の前年同月比をみると、財は実質・前年同月比▲4.9%と14か月連続の減少。サービスは、実質・前年同月比+4.9%と2か月ぶりの増加になりました。 

 5月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は+0.3%程度と4月の+0.5%に続き、2カ月連続の増加になると予測します。前月比は+0.7%程度と2カ月ぶりの増加になるとみました。 

 家計調査で実質化に使うデフレーターである全国消費者物価指数は、日本銀行が2%の目標に使用している「生鮮食品を除く総合」ではなく、「持家の帰属家賃を除く総合」です。「持家の帰属家賃を除く総合」の前年同月比は1月+2.5%、2月+3.3%、3月+3.1%、4月+2.9%、5月+3.3%と推移しています。デフレーターは、5月の家計調査・実質消費支出・前年同月比に関しては4月から0.4ポイントの減少要因になります。 

 関連の消費統計をみると、新車新規登録届出台数(乗用車)の前年同月比は4月▲10.6%から5月は▲3.9%へと6.7ポイント減少率が縮小しました。全国百貨店売上高・前年同月比は4月+8.9%から5月+14.4%へと5.5ポイント高まっています。商業販売額指数・小売業の前年同月比は、5月速報値+3.0%で、4月+2.0%から増加率が1.0ポイント改善しています。一方、日本チェーンストア協会のスーパー売上高の前年同月比は4月+0.4%から5月+0.1%へと0.3ポイント増加率がやや鈍化しました。 

 景気ウォッチャー調査の家計動向関連の現状水準判断DI・季節調整値は、23年10月50.4、11月49.8、12月50.0、24年1月47.9、2月49.3と推移してきましたが、3月48.3、4月46.2、5月43.8と3カ月連続で低下しました。 

 こうした様々なデータを総合的に判断して予測しました。 

 ※24年5月は筆者予測

5月景気動向指数・速報値・一致CIは3カ月連続前月差プラスを予測。3カ月後方移動平均前月差は2カ月連続プラスか。(7月5日発表)

 5月速報値の一致CIは前月差+1.4程度の上昇と予測します。前月差上昇は3カ月連続です。
 
 一致系列で、速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列が前月差寄与度プラスになり、有効求人倍率、輸出数量指数の2系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。
 
 一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・5月速報値・前月比は+2.8%と、2カ月ぶりの上昇となりました。全体15業種のうち、工場稼働再開などの影響を受けた自動車工業など13業種が上昇、生産用機械工業など2業種が低下という結果になりました。
 
 5月の先行CIは前月差+1.0程度の上昇と予測します。3カ月ぶりの上昇になるでしょう。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差寄与度プラスに、住宅着工床面積 、消費者態度指数、マネーストックの3系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。

※24年5月は筆者予測

5月の先行DIは44.4%程度、一致DIは62.5%程度を予測。

 5月の一致DIは62.5%程度と景気判断の分岐点の数字になると予測します。5月の一致DIでは、データが利用可能な8列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の5系列がプラス符号になり、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率、輸出数量指数の3系列がマイナス符号になると予測します。
 
 5月の先行DIは44.4%程度と景気判断の分岐点の50%を若干下回ると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列中、新設住宅着工床面積、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数 、消費者態度指数、マネーストックの5系列がマイナス符号になるとみました。

7月5日公表の5月速報値では景気の基調判断「下方への局面変化」継続か。

 景気動向指数の景気の基調判断が「改善」に上方修正されるためには、「原則として3カ月以上連続して、3カ月後方移動平均が上昇 、かつ当月の前月差の符号がプラス」になることが条件です。
 
 5月景気動向指数・速報値での景気の基調判断は4カ月連続「下方への局面変化」の見込みです。5月一致CIでは、一致CI前月差がプラスですが、3カ月後方移動平均前月差プラスがまだ2カ月連続にとどまるため、「改善」に上方修正される条件を満たさないためです。

8月7日公表の6月速報値で、景気の基調判断が「下方への局面変化」から「改善」に戻る可能性は小さい。

 過去の数字が変わらないと仮定し、6月速報値の一致CIが0.1でもプラスとなると、3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇することに」なります。この場合、2014年11月から12月にかけてのように、景気判断が「下方への局面変化」から「改善」に上方修正されることになります。
 
 しかし、トヨタ自動車などの型式不正問題での生産・出荷停止の問題で、その可能性は厳しくなったようです。
 
 鉱工業生産指数・5月速報値と同時に発表された製造工業生産予測指数の6月前月比は▲4.8%で、経産省の先行き試算値最頻値は同▲6.0%の見込み、90%の確率に収まる範囲は▲6.9%~▲5.0%と下降の見込みです。第1系列として採用されている生産指数が前月比かなりのマイナスになることが見込まれることなどから、6月の一致CIも前月比マイナスになる可能性が大きいと思われます。8月7日発表の6月速報分では「改善」は先送りされ「下方への局面変化」の判断継続になってしまいそうです。

万が一、6月以降の一致CI が自動車業界の生産停止の影響が長引くことで弱含めば、10月公表の8月以降で「悪化」に下方修正の可能性も。

 なお、「下方への局面変化」の一段下の「悪化」という判断は、景気後退の可能性が高いことを示します。その条件は、原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が下降、かつ当月の前月差の符号がマイナスになることです。
 
 6月以降の一致CI が自動車業界の生産停止の影響が長引くことで弱含み、「下方への局面変化」から「悪化」という判断に将来下方修正される可能性があることも否定できません。
 
 景況感がスッキリするまでにもう少しかかりそうです。
 
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。