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4月家計調査・実質消費支出・前年同月比は14カ月連続減少か。 4月景気動向指数・速報値・一致CIは、2カ月連続前月差上昇。基調判断は「下方への局面変化」維持で「悪化」への下方修正は回避。―日本の主要経済指標予測(2024年4月30日)―

4月家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は3月から減少率は縮小するも、14カ月連続減少になると予測。(6月7日発表)

 3月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は前年同月比▲1.2%と、うるう年で前年同月より1日多かった2月の前年同月比▲0.5%から減少率が拡大し、13か月連続の減少になりました。
 
 自動車購入、ガソリンなどの「自動車等関係費」は実質・前年同月比+6.4%増加しました。自動車購入は、購入数量は横ばいながら、平均価格が上昇しました。ガソリンは、外出した人が増加したことや、前年より土日が2日多かった影響などで増加しました。「仕送り金」が実質・前年同月比+37.1%増加です。外出した人が増加したため「外食」が実質・前年同月比+8.7%増加しました。
 
 一方、前年より気温が高く暖房需要が伸びなかった影響などで、電気代が実質▲19.2%、ガス代が実質▲9.3%の減少になりました。物価上昇に伴い減少基調の贈与金などの「交際費」が実質▲20.9%の減少になりました。コロナ禍を機に、葬儀や結婚式などが簡素化している影響もありそうです。また、前年実施していた全国旅行支援後の需要が落ち着いた影響から、宿泊料、国内パック旅行費などの「教養娯楽サービス」が実質・前年同月比▲7.4%減少しました。
 
 実質・季節調整済み前月比は+1.2%と⒉か月連続の増加になりました。デフレーターの全国消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の前年同月比は+3.1%でした。
 
 財・サービス別の前年同月比をみると、財は実質・前年同月比▲0.2%と13か月連続の減少。サービスは、実質・前年同月比▲1.4%と⒉カ月ぶりの減少になりました。
 
 4月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲0.8%程度と減少率は3月の▲1.2%から縮小するものの、14カ月連続の減少になると予測します。前月比は▲0.9%程度の減少になるとみました。
 
 家計調査で実質化に使うデフレーターである全国消費者物価指数は、日本銀行が2%の目標に使用している「生鮮食品を除く総合」ではなく、「持家の帰属家賃を除く総合」です。「持家の帰属家賃を除く総合」の前年同月比は1月+2.5%、2月+3.3%、3月+3.1%、4月+2.9%と推移しています。デフレーターは、4月の家計調査・実質消費支出・前年同月比に関しては3月から0.2ポイントの増加要因になります。
 
 関連の消費統計をみると、新車新規登録届出台数(乗用車)の前年同月比は3月▲19.6%から4月は▲10.6%へと9.0ポイント減少率が縮小しました。商業販売額指数・小売業の前年同月比は、4月速報値+2.4%で、3月+1.1%から増加率が1.3ポイント改善しています。一方、全国百貨店売上高・前年同月比は3月+9.9%から4月+8.9%へと1.0ポイント鈍化しています。また、日本チェーンストア協会のスーパー売上高の前年同月比は3月+9.3%から4月+0.4%へと8.9ポイント増加率が縮小しました。
 
 景気ウォッチャー調査の家計動向関連の現状水準判断DI・季節調整値は、23年10月50.4、11月49.8、12月50.0、24年1月47.9、2月49.3と推移してきましたが、3月48.3、4月は46.2と2カ月連続で低下しました。
 
 こうした様々なデータを総合的に判断して予測しました。

※24年4月は筆者予測

4月景気動向指数・速報値・一致CIは2カ月連続前月差プラスを予測。3カ月後方移動平均前月差は4カ月ぶりプラスに。(6月7日発表)

 4月速報値の一致CIは前月差+0.9程度の上昇と予測します。前月差上昇は2カ月連続です。
 
 一致系列で、速報値からデータが利用可能な8系列では、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の5系列が前月差寄与度プラスになり、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、有効求人倍率の3系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。
 
 一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・4月速報値・前月比は▲0.1%と、2カ月ぶりの低下となりました。全体15業種のうち、生産用機械工業など8業種が上昇、前月の大幅上昇の反動などを受けて、輸送機械工業(除.自動車工業)など7業種が低下という結果になりました。
 
 4月の先行CIは前月差+0.2程度の上昇と予測します。2カ月ぶりの上昇になるでしょう。速報値からデータが利用可能な9系列では、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新設住宅着工床面積 、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差寄与度プラスに、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数の5系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。

4月の先行DIは55.6%程度、一致DIは75.0%程度と、ともに50超に。

 4月の一致DIは75.0%程度になり、4カ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を上回ると予測します。4月の一致DIでは、データが利用可能な8列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列がプラス符号になり、有効求人倍率、輸出数量指数の2系列がマイナス符号になると予測します。
 
 4月の先行DIは55.6%程度と2月・3月に続き、景気判断の分岐点の50%超になると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列中、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数 、マネーストックの4系列がマイナス符号になるとみました。


6月7日公表の4月速報値では景気の基調判断が「下方への局面変化」維持。「悪化」への下方修正は回避か。

 4月景気動向指数・速報値での景気の基調判断は3カ月連続「下方への局面変化」の見込みです。2月~4月にかけて、景気の山が数カ月前だった可能性が高い「下方への局面変化」という判断になった主因は。不正検査による一部自動車会社の生産停止という特殊要因です。
 
 4月一致CIでは、一致CI前月差がプラス、3カ月後方移動平均前月差も+0.77程度とプラスに戻り、「下方への局面変化」継続となる見込みです。
 
 「悪化」になることは回避される見込みです。「下方への局面変化」の一段下の「悪化」という判断は、景気後退の可能性が高いことを示します。その条件は、原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が下降、かつ当月の前月差の符号がマイナスになることです。製造工業生産予測指数に過去の修正パターンを反映させた経産省の先行き試算値最頻値の90%の確率に収まる範囲の下限は同▲2.9%だったこともあり、万一、4月の一致CI前月差が大幅マイナスになった場合、3カ月後方移動平均前月差が4カ月連続マイナスになると、「悪化」に下方修正されてしまうことが懸念されましたが、杞憂に終わりました。

景気の基調判断が「下方への局面変化」から「改善」に戻るのは、8月7日公表の6月速報値かあるいは9月6日公表の7月速報値か。

 鉱工業生産指数・4月速報値と同時に発表された製造工業生産予測指数の5月前月比は+6.9%で、経産省の先行き試算値最頻値は同+2.3%の見込み、90%の確率に収まる範囲は+0.5%~+4.1%と上昇の見込みです。
 
 景気動向指数の景気の基調判断が「改善」に上方修正されるためには、「原則として3カ月以上連続して、3カ月後方移動平均が上昇 、かつ当月の前月差の符号がプラス」になることが条件です。5月速報値段階では、3カ月後方移動平均が2カ月連続上昇 、かつ前月差の符号がプラスとなり、「下方への局面変化」という判断は継続となる可能性が大きいでしょう。
 
 鉱工業生産指数・4月速報値と同時に発表された製造工業生産予測指数の6月前月比は▲5.6%で、大幅なマイナスが予測されています。3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇 という条件は満たしても、かつ当月の前月差の符号がマイナスになる可能性も出てきました。その場合は、8月7日発表の6月速報分では「改善」は先送りされ「下方への局面変化」の判断継続になってしまいます。

  8月7日発表の6月速報分が駄目でも、9月6日発表の7月速報分で4カ月連続して3カ月後方移動平均が上昇、かつ当月の前月差の符号がプラスになれば、2014年11月から12月にかけてのように景気判断が「下方への局面変化」から「改善」に上方修正されることになります。
 
 景況感がスッキリするまでにもう少しかかりそうです。
 
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。