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リンドウ:秋吉台の花

万葉集の「思ひ草」はナンバンギセルと別項で紹介しましたが、リンドウが「思ひ草」だという説もあります。

リンドウの地下茎は「熊胆よりも苦いので竜の胆並みの苦さであろう」という謎の理由で中国で「竜胆」と字をあてられ日本でも使われています。
漢方では主に地下茎が用いられ、現在も竜胆を「リュウタン」と呼称し健胃生薬や消炎薬として用いられています。

古今和歌集の巻十で紀友則は「りうたむのはな」と題して「我が宿の 花ふみしだく とりうたむ 野はなければや ここにしもくる」とリンドウの古語の「りうたむ」を「鳥打たむ」と掛詞にしています。
清少納言は枕草子に「竜胆は、枝ざしなどもむつかしけれど、異花どもの皆霜枯れたるに、いと花やかなる色あひにてさし出でたる、いとをかし。」と述べ、紫式部の源氏物語の中にも「竜胆」が数か所表れます。

秋吉台では秋の気配が濃くなるとリンドウの開花がはじまり、11月初旬には台上の様々な場所で見ることができる秋の代表的な彩りです。
草丈が低い場所を好むので遊歩道脇でも見られ、夏草を刈った跡地にも好んで開花します。
肥沃な場所だと多くの花を付けますが、秋吉台は赤土剝き出しの場所も多くささやかな開花が長く続くことになります。
リンドウの開花が終わると秋吉台は山焼きまで長い眠りにつきます。

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