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小説「ぼくと彼の夏休み」

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2020年12月の記事一覧

ぼくと彼の夏休み(18)

 ぎしぎしと、階段を上がってくる足音が聞こえる。そして、ドアがノックされる。返事も待たずにぎぃとドアが開く。黒い影が、ベッドに横たわっているぼくに近づく。サイドボードの上に何かがそっと置かれて、ぼくの額に手が触れる。
「熱があるよ……大丈夫?……誰か呼んでくる。」
-------あ、待って。
 ぼくはとっさに、去ろうとする影を掴んだ。バランスを崩した影は、ぼくの身体に覆い被さる。体温があたたかい。

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ぼくと彼の夏休み(17)

 部屋で、ジャン・コクトーの詩集をぱらぱらとめくっていた。「少年水夫」と題された詩を見つけて、これは自分のことじゃないかしらと思う。

  死人ほど少年水夫は蒼ざめる
  今度は彼の処女航海
  彼は感じる
  不思議な貝が
  下から
  自分を呑みこんで どうやら自分を噛んでると

 ぼくも、大海原に投げ出された気分だ。
 ふと、窓の外を見る。ぼくの部屋から、薔薇園の一部が見える。入り口の門扉

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