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オススメ参考書4 文系の数学 重要事項完全習得編 堀尾豊孝著

オススメ度 ☆☆☆☆☆☆

2013年当時、僕は新宿の医学部専門予備校で仕事をしていて、その行き帰りに近くのブックファーストで参考書を眺めるのが日課だった。少ないときでも週に1日、多ければ週に4回くらい足を運んでいた。参考書というのはそんなに新書が出るわけではないのでいつ行ってもラインナップはほぼ変わらない。僕は棚の隅から隅まで何の本があるか把握していたし、どれも一度は目を通し良いものは積極的に購入していた。


そんなある夏の日にこの本と出会った。河合塾のコーナーにちょこんと並べられていたのだが、手に取った僕は衝撃を受けた。今でこそ知名度も上がった当書だが出てからの数年は使っている人も少なく、職場の予備校で生徒用に配布しようと提案してもあっさり却下された。

それでは僕が衝撃を受けるほど良い内容とはなんなのかというと、厳選した問題の少なさと丁寧な解説である。例題に限ればⅠAⅡBで152問と驚きの少なさ。後ろの演習問題が120問。問題が多いほうが有難がる受験生もいるが、作る側からすると問題を増やすことより減らすことのほうがはるかに難しい気がする。そして、解説講義という項目がすべての問題にあり、とても丁寧でわかりやすい。歴史に残る良著だと思う。

この本の良さは問題選別だけでなく解説の良さにある。解けた問題も含めて解説を熟読してほしい。それなりに出来る生徒の中にも解説を読まない生徒は一定数いるが、それではこの本の良さは堪能できない。また、せっかく問題数が少ないので1周で終わらせずに何周もやること。これはほかの参考書にも言えることだ。

解法もなかなか洗練されていて、たとえば149の整式型の漸化式、階差型になったあと与えられた漸化式を用いて消去するという解法をしっかり取っている。ちなみに青チャートや基礎問題精講は階差型を解いてしまっている。
ただ、難しい別解にはあえて言及していないようで5人ジャンケンのあいこの問題では余事象は用いるものの1~4人をそれぞれ考えるという解法のみであった。



 (どんな人に向いているか)


「文系の~」というタイトルから理系の受験生に敬遠されるかもしれないが、理系の受験生の基礎固めに最適である。実際、僕は私大の医学部を目指す浪人生(クラスとしては下のレベル)に積極的にすすめている。発売してすぐの時も青チャートを周回しても頭に入らず偏差値が河合で40くらいの生徒にすすめたら半年もかからず60を超えた。もちろん網羅度でいうと青チャートなどより下がるが数学は最初から網羅ばかり意識すると失敗したり挫折することが多い。まずは各分野の骨格を作ることが重要だ。


◎文系理系問わず浪人生の基礎固め
◎模試の偏差値が河合で55を切ってしまう高3生
◎青チャートやフォーカスゴールドのような網羅系をこなせていない生徒
〇ⅠAⅡBが一通り終わりそうな進学校の高1~2生



 (問題のレベル) 2~5(10段階)


典型問題の基礎的なレベルを扱う。簡単な問題だと因数分解や文字を含まない2次関数の最大最小など。難しいとこでは3個のサイコロの出た目の積が6の倍数になる確率(ド・モルガンで解説している)、推移律を使う不等式の帰納法など。例えば軌跡の分野だと、頂点の軌跡と重心の軌跡(除外点なし)を扱い、解と係数の関係を使う中点の軌跡は演習問題で扱っている。数列だと3項間漸化式は「文系の数学実戦力向上編」という別の本で扱っている。


 (気になる点)


演習問題の位置づけがわかりにくい。冒頭でも演習問題については軽く触れられている程度で不鮮明だ。最初の例題の応用問題なのかなと思うと、違うパターンの典型問題が入っていたり、同じパターンの同じような難易度の問題があったり、同じパターンの少し難しい問題があったりというかんじだ。人によっては演習問題をやらない生徒もいるかもしれないが、群数列の問題などは演習のほうがより重要なパターンのような気がする。

また同じ著書のもので「文系の数学実戦力向上編」というこの本より難易度の高いものがある。この本からの接続を何人かの生徒で試みてみたが、意外と難易度が高く挫折がちになることが多かった。この点に注意したい。生徒のレベルとしては決して低くなかったように思うが。


※参考書を批判する目的ではなく良いものを紹介する目的です。すべての参考書で気になる点を挙げています。

良ければyoutubeもご覧ください。

オプスタ

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