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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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16年後の目覚め初見感想(ネタバレ有)


はじめに

シネ・リーブル池袋さんで開催中の「週末インド映画セレクション」、
本日、2024年3月3日の上映「16年後の目覚め」(原題:Comali)を見てきました。英語字幕でしたが(途中の会話のやりとりは判らないもの)映像で大体把握できるので楽しめました。
主演の俳優さんは、今後日本語字幕で公開予定のPSシリーズでアルンモリ王子を演じる俳優、ジェヤム・ラヴィ さんということで、どんな感じの方なのか予習がてら、Twitter(X)の作品紹介文章でもきっと自分好みであるなという直感から、速攻チケット取ったのでした。

公式のあらすじ

03/03㈰『16年後の目覚め』英語字幕 ★日本初公開

Story|1999年大晦日に事故で植物状態になった高校生ラヴィが16年後に目覚める。前世紀の遺物で心は高校生のままの34歳の男となった彼は、博物館のガードマンとして働く一方でユーチューバーとして天然のユニークな社会批評をして人気を得る。同じころ、彼の勤める博物館で秘宝の盗難未遂事件が起き、その秘宝の正当な所有者が誰であるかの議論が起きる。政治風刺をたっぷり盛り込んだコメディー。
監督: プラディープ・ランガナーダン
出演: ジェヤム・ラヴィ、カージャル・アガルワール、サムユクタ・ヘグデ、ヨーギ・バーブ
原題:Comali
2019年/タミル語/149分/G相当
©Vels Films International

https://ttcg.jp/cinelibre_ikebukuro/movie/1072500.html
シネ・リーブル池袋HP「週末インド映画セレクションWeekend Indian movie Selection」作品紹介より


ネタバレ有感想

小さい頃に、父親から託された彫像を大事にしてきた主人公ラヴィ。
学生時代に、クラスメイトの女の子ニキータにある日告白をし、その彫像をプレゼントし、彼女も返事をしようとしたまさにその時に、彼らが立っていた小屋を突き破って出てきた強盗三人組と鉢合わせし、ニキータを脅したうえ、三人組は彫像を奪って逃走、ラヴィは突き飛ばされたニキータを助けようと道路を渡る途中で車にはねられ、その後16年間寝たきりの植物状態になった。
→冒頭の学生時代のシーン、子役を使わず、まさかの本人たちが演じていてい、特にヨーギ・バーブさんの高校生姿を見られるという貴重な時間に。(コスプレにしか見えない、とか言ってはいけない)

16年後、34歳になった彼が目覚めると、そこには、父親の死後、自分を世話する為に借金をしていた妹と、彼の親友であるマニがいて、妹と親友は結婚していることを知る。ちなみに全校集会?でマニが発言したジョークがきっかけで、妹はマニの事が好きになったようなので、借金の肩代わりの条件に結婚したわけではなさそう(?)。
→都会の高層マンション暮らし。マニ・妹・母はその一室でずっと寝たきりのラヴィの世話をしていた様子。
ちなみにずっとラヴィの様子を見ているシーンがあるってことは、マニは在宅勤務できる仕事なんだろうか。

16年の空白を経て、身体は34歳、心は高校生のままのラヴィは、ニキータに告白したあの日から時が止まったまま。探し出した彼女は、ラヴィを担当していた医者の妻となっていた。
親友マニは、彼女の事はあきらめてどうにかラヴィが立ち直れるよう新しい恋を推奨するが、中身が高校生のままの彼は、女学生に声をかけてしまう。大人の女性を恋愛対象にしなければいけないと、恋愛映画をいくつか見せるマニ。(※タミル映画なので、タラパティの映画のワンシーンが映ったりする)
最終的にフェイスブックを通じて知り合ったリシカと対面することに。
しかし一緒に自撮りする際に、彼女がエアキスでのポーズをとったことで、キスしても良いという同意と解釈した彼は、路上で彼女にキスをし、(もしくはしようとした?)彼女にビンタされる。それを目撃した周囲の人達によりネットで顔写真が拡散され、世間の非難を浴びることに。彼の母や妹たちに迷惑をかけてしまい、落ち込む彼だが、マニは変わらず親友であることと励ました。
→さすがにこれはラヴィが可哀想。たまたま路上で女性の人権問題のデモらしき団体が行進している時だったので、沢山の女性達に避難されたし、拡散はおそらく野次馬による煽りだったと思うけれど。

ラヴィが目覚めたのが2016年ということで、事故にあったのが2000年。
しかも12月31日の大晦日だったから、強盗達がバイクで逃走する時に、ハッピーニューイヤーを歌っていた。
この頃の16年は確かに目まぐるしい発展だろう。
ネットやスマホ、薄型テレビなどを知らない主人公が、デジタル化についていけず、戸惑うことに。

借金返済のため、ラヴィも仕事を探すことに。しかし高卒ですらないため、会社に応募しても落とされ、最終的に妹の紹介?で博物館の警備員の仕事を得る。その博物館では、彼をビンタしたリシカが勤務していて、(妹が説明したのか?)事情を理解した彼女はキスの件はもう許していた。
そんな折、博物館に泥棒が入り、捕まえられなかったものの、だいじな展示品を守ったことで彼は称賛される。しかし泥棒が盗もうとしていた美術品を見て、ラヴィはかつて父が自分に託し、自分がそれに手を加えたものだと気付き、それは我が家のものだと主張する。だが展示されている彫像は、議員のダルマラージの所有物とされていた。
なるほど、そのダルマラージが、主人公が交通事故にあう直前にニキータを脅して奪っていたあの強盗三人組の一人ってことだ。理解。
最初はその彫像、博物館にあるのを主人公の父が盗んだもの(お父さん実は泥棒だった)って話なのかと思ってしまったが、そうではなくて、その彫像は由緒正しき高貴な身分の人のもので、その末裔が主人公の父でありラヴィであるということらしい。
しかしダルマラージがそれを奪って自分がその末裔だと偽って、政治家としてのし上がった様子。

なお妹とマニの間にうまれた子供は二人で、一人はまだ小さいんだけどお兄ちゃんの方は頭がもじゃもじゃの子で(※この作品でのヨギバブさんは髪型がかっちりしている珍しい役どころだけど、この子役の子は、普段のヨギバブさんみたいなモジャ頭なので、彼の子供でると髪型で示唆している)彼はずっとゲームをしてばかりで全然話さない子。
それがのちにラヴィが団地の子供たちとクリケットで交流するようになってからは、ゲームではなく外で遊ぶ子に。ラヴィが教えるアナログの遊びを楽しむ子供たち。
やがて団地全体で、住人同士が集って屋上で月見をしたり、デジタル化した生活から離れて、楽しむ様子が出てくる。
子供たちの提案で、彼が遊ぶ様子などスマホで撮影して動画を流したところ、人気となり、彼はユーチューバーとして人気を得、博物館の警備員の仕事の他に副収入を得られた様子。(もしくはもう警備員の仕事やめたか?)
その他いろんな時事情勢についてコメントする動画が人気となり、チャンネル登録者数が増えた。

さて。
ラヴィはなんとかして彫像は自分のものであり、その彫像が盗まれたものであることを証明したくて、リシカ達の手助けを借り、ダルマラージの元へ乗り込み、その話し合いの中で、彼から盗んだものであることを引き出し、ネットでリアル配信しようと画策。身体にボタンカメラを仕込んで、いやダルマラージの元へ。しかしマニが刃物で脅された状況で、ラヴィの汗がカメラに触れたことで感電。計画がバレてしまう。なんとか逃げ出すものの、ネット配信を見てかけつけた記者たちに取り囲まれ、ダルマラージは配信映像を見るが、その映像がカメラの故障により途中で中断しており、肝心の証拠がとれず、彫像がラヴィのものであることは証明できなかった。

それならば、と学生時代にとった記念写真を探し出し、そこに映った彫像を証拠として権利を主張できるのでは?と考えたラヴィは、ニキータの元へ。
学生時代、恋人寸前までいった二人の仲を知っているニキータの夫(医者)は、ラヴィとニキータが親しく話す度に嫉妬で怒り狂う。なんとか問題のカメラのフィルムを探し出し、さっさとラヴィに帰ってもらおうと躍起に。ようやく見つけたフィルムを、興奮した医者はその場でフィルムをあけてしまい、写真は台無しになった。
医者がいいわけめいて「自分はデジカメ派だから」みたいなこと言っていたようだけど、いやいやあんたの年齢ならフィルムカメラ知らないわけないだろ、単なる完全なミスだろ。

フィルムを失い、途方に暮れるラヴィたち。
そんな折にマニのスマホが鳴りやまず、苛々したラヴィは、デジタル機器に頼り切った現代人への痛烈な批判を。
そこから、急にダルマラージへの計画を思いつく。
屋敷にセキュリティをしいているダルマラージだが、彼も人間、精神的な恐怖によって彼を追いつめる作成に。
ラヴィは物的証拠で彫像の権利を主張できない以上、ダルマラージの家に忍び込んで偽物とすりかえて取り返すしかないと判断し、彼の留守中を狙って、彼の妊婦である妻と接触。
彼の妻が、金庫の中の彫像をチェックしている様子を目撃し、彼女の目を盗んですり替える事には成功するが、部屋を出る際に見つかってしまう。
夫であるダルマラージに急いで連絡をする妻。しかし滑って転んで、身体を打ったショックで陣痛が始まってしまう。
マニは動けない彼女を見て、彫像を奪い、さっさと逃げようと言うが、小さい頃に言い聞かされた母親の言葉を思い出し、人助けの気持ちを取り戻したラヴィは彼女をかかえて、オートリキシャで病院へ行くことに。
しかし町は大雨で道路が冠水し、オートは進めなくなる。
道路の向こうで、ロープにつかまりながら、冠水した道路をなんとか移動している人たちを見つけたラヴィは、妊婦の彼女を抱えながら、必死に歩いていく。(もう腰くらいまで水がきていて、冠水レベルじゃないんだけど)
ロープにつかまっていた人たちが互いに助け合い、彼女をぶじ冠水した道路の向こう側まで運ぶ。女性も、妊婦のお腹に自分のサリーを脱いでまで被ってあげて、無事はこんであげてとラヴィを見送る。
水が浅い道路までいって、そこにいたオートの運転手が声をかけてくれ、二人を病院まで送る。病院の人間たちが無事彼女をつれていき、ラヴィはオートの運転手に値段をきくと、運転手はいいよっていって笑顔で去っていく。
無事子供が生まれ、そこへかけつけたダルマラージに、妻は神に感謝し、ラヴィが彫像を盗んだことには触れなかった。そしてダルマラージも、自分を一度はネットにさらして貶めようとした(ラヴィからすれば自分の正当性を主張したかっただけ)ラヴィに対し、感謝の言葉を一言かけてもうそれ以上は手出ししなくなった。

後日、借金返済のため取り返した彫像を売ろうとするラヴィとマニの元へ、リシカ達が「ストップ!」と止めに入る。
実はラヴィがフィルムを失って感情的になっていた辺りを、リシカが(子供の助言で)スマホでこっそり撮影していて、それをYoutubeで公開したところ拡散され、その広告収入で借金が返済できるようになったとのこと。
彫像は、父親の遺影の前に飾られることに。
ラヴィも、Youtuberとして成功を納め、それによって安定した収入をえてリシカと結婚した。
結局のところ、デジタルを非難した彼も、デジタルツールとネットによって収入を得て生活を再建したという、一種の皮肉を込めた終わり方。
いや、面白かった。

なお、この映画が公開される前後、劇中にでてくるラジニカーント氏のテレビでのシーンで、その映像を見た主人公が「今は1996年じゃないか」って言うところ、事実と相違があるってことで物言いがついたらしい。
その情報だけ事前に知っていたので、そのシーンカットされるのかなって思って見てましたが、そのまま流れましたね。

ネットググって調べた補足

痛烈にデジタル社会を批判した映画を、ググって調べるのもまた面白いですね。
「Comali」という単語を調べると「ピエロ」という意味らしいですが、下記の公式トレーラーを見ると「Coma」で区切っているところがあって、「Coma」で調べると「昏睡」って意味だそうです。なるほどね。
このトレーラーにも、ヨギバブさんの高校生姿(学校の制服)見られます。

あと、この映画に出てくる2016年という年。
前年の2015年にチェンナイで洪水被害があったようで。
映画の後半で人が助け合う様子を見て、主人公がいまの時代にも人には助け合う心は健在だなってほろりとするシーンがあるので、その洪水ネタも含めているのかなって。

余談ですが、この映画の前に新文芸坐さんで「メルサル」を見て居まして、そのヒロインの一人がカージャルさんだったので、
この映画、前情報ほとんどなしに(ヨギバブさんが出ること自体は、チケット購入前の画面にのっていた作品紹介のサムネ写真で理解していた)鑑賞したので、中盤以降で出てきたカージャルさんにちょっとびっくり。
今日は2作連続で彼女を見たことに。

途中のマニとラヴィの科白など、英語字幕追えなくて理解できなかったところもあるので、日本語字幕でまた見てみたい作品でした。