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「Jigarthanda DoubleX」(ジガルタンダ ダブルX)ネタバレ有感想


はじめに

「ジガルタンダ・ダブルX」、3月に英語字幕で初鑑賞。
その後に、前作のジガルタンダを日本語字幕で初鑑賞。
そして4月になってジガルタンダ・ダブルXに日本語字幕がついての初鑑賞(実質2回目)。
そして4月7日(日)本日、ジガルタンダ・ダブルXの日本語字幕を2回目鑑賞でした。
便宜上、ジガルタンダのことをこの記事では「無印」、そしてジガルタンダ・ダブルXのことは「ダブルX」として書いていきます。
後半に、無印のネタバレも含まれてます。

「ダブルX」の英語字幕は、昨年2023年に自主上映でやっていたのは知っていて、その時に見てきた人からの感想が物凄い熱量で、ネタバレ感想はなかったものの「これは絶対に見ておいた方がいい作品」という事だけは判ったので、行ける時間の行ける映画館での上映に繋がったのは本当に感謝。

ですが、「ダブルX」初鑑賞の日に電車遅延で頭10分を見逃すという大失態。しかもその後に2.5次元の舞台を控えていたので、せっかくの初見感想はあっという間にうやむやになってしまい、本当の意味での初見感想は書けませんでした。ただ「なんか物凄いもの見せられたし、泣いたし、でも会話が追えなかったから、本当の意味ではおそらく半分も理解できていないんだろうな」という印象でした。
日本語字幕での初鑑賞(実質2回目鑑賞)「ダブルX」については、ようやく話が理解できたものの、あまりの衝撃にこれまた感想も書けず、ぼんやりと数日過ごしてしまったので、日本語字幕2回目(実質3回目)「ダブルX」でようやく受け止められたという感じです。

残りの平日は仕事でいけないので、2024年4月7日(日)、自分にとっての「池袋インド映画祭」の見納めになりました。

あらすじ

『ジガルタンダ・ダブルX』日本語字幕★日本語字幕版初上映

Story|新米警察官のキルバイは不可解な事件に巻き込まれ、自身が牢に繋がれる。彼は、政界に強いコネクションを持つ悪徳警視ラトナクマールに脅されて、マドゥライ地方のギャングの親分シーザーの暗殺を命じられる。シーザーに近づくために、彼はサタジット・レイ門下の映像作家と身分を偽り、彼を主演にした映画を撮るふりをする。カールティク・スッバラージ監督が激烈な社会批評を盛り込んだ衝撃作。
監督:カールティク・スッバラージ
出演:ラーガヴァー・ローレンス、S・J・スーリヤー、ニミシャ・サジャヤン
原題:Jigarthanda Double X
2023年/タミル語/172分/ PG12相当
©Stone Bench Films ©Five Star Creations ©Invenio Origin

シネ・リーブル池袋「池袋インド映画祭」作品紹介ページより
https://ttcg.jp/cinelibre_ikebukuro/movie/1085700.html

感想まじえて話を振り返る。

冒頭……しょっぱなから真っ赤な背景に白文字で「YOU DONT CHOOSE ART…」と意味深な字幕が……そして大文字で「ART CHOOSES YOU.」とドーンと表示されて始まる。
1973年のコンバイ地方?の森で、密猟された像の傍に、赴任したばかりの警視と地元警察の部下。
「赴任したばかりですみません」と現状を説明する部下。密猟者シェッターニをなんとか逮捕しようとする地元警察だが、森林警備隊?の隊員やら捜査協力者やらが次々と犠牲になって殺される現状。そこへよそから新しい警視(?)ラトナクマール(以下ラトナ)がやってきたという場面。彼は部下の話を背中で聞きながら、おもむろに煙草に火をつけるが、山火事になるので煙草は控えて下さいと伝える部下に「煙草じゃない、マリファナだ」という始末。おいおいおい。いきなり悪徳警官かよ。部下もドン引き。
そして赴任先の詰め所(派出所的な狭い小屋)へやってくると、シェッターニの居場所を吐かせるため地元の部族が不当に捕まえられ拷問を受けている状況。新しくきた警官ラトナに「あなただけが頼りです」と助けを求める部族の面々。「状況は理解している。安心しろ。今日は食事を用意した、食べていけ」と笑顔を見せながら、彼は詰め所の奥へ。そこには警察におびえてうずくまる部族の男性たちが。
部下に「これが警察のやることか」と怒るラトナ。え、マリファナ吸っているけれど、実は人情深い警官か?と思ったのも一瞬、次の瞬間、彼は机にあった硬そうな灰皿やらを寄せ集め、布でくるむと、それを捉えた男達に振り上げ、暴力をふるいだす。さすがにここまでの非道は、今までの地元警察もしていなかったらしく、部下達もビビっている。
詰め所の中から響く悲鳴に、食事をしていけと言われた部族たちも振り返って不安顔。外で待機していた警官たちも不安な面持ちで様子をうかがっている。その中の一人が、傍にいたもう一人に「善人な君が助ければいい」みたいなことを言うが、言われた方は「必要なのは救世主だ」と動けずにいる。
不安がる部族の面々の前に、ラトナがふたたびやってきて「何の問題もない」と笑うが、その右手の布からは血が滴っていた……。
もうここだけで、救いがなさすぎる。

一方、マドゥライでは警察の内定をもらったキルバン(演:SJスーリヤ)が、恋人の大学の文化祭?に遊びにくる。天使のような恰好をした彼女に、警官になったら結婚をしようと言われ、喜ぶ彼女。和気あいあいと会話する二人の間をぶつかるようにすり抜け、彼女が「ちょっと!」と文句を言おうとするがやめておけと止めるキルバン。そんな彼に「少しは男らしくなって」とため息をつく彼女。「警察になったって、僕の臆病は治らない」と彼は返す。
キルバンは親から警官になれと言われ続けなったという。「ポリス……ポリス……」とりあえず正義感が強くて志望したわけではなさそう。
丁度その時に大学の中庭?の方で学生同士のけんからしきものが見える。「警察だったら、彼らをなんとかして」と彼女がいうと、「拝命したら、なんとかするよ」と返すキルバン。そして彼女は出番だと言って、二人は別れる。
彼女を見送った後、少し考えたキルバンは、喧嘩する学生たちの方へ向かって歩いていく……。
ステージで踊っている彼女と仲間達。そこへ「学生たちが襲われた」という声が。騒ぎをききつけかけつけた彼女は、放心したキルバンを見つける。
警察は彼が凶器を持っていたということで、学生達を殺した犯人としてキルバンを捕まえたのだった。
いきなり巻き込まれ主人公ですか。
なんでこうなった?
「血を見るのもダメなのに、彼が犯人なわけがない。彼は警察なのよ」という彼女の声もむなしく、彼は監獄?へ。

それから2年後?1975年?
とある映画のシーンが写し出される。
画面で踊る映画スター・ジェヤコディは俳優から政治家への転身を考えていた。主演作の発表直後だったが、上映予定だった映画館が、チンナという主役俳優の映画にとってかわられた。その妨害工作をしたのが、大臣のカルメガムと、彼を支持するギャングの4組織。
カルメガムが「ジガルタンダ連合……マイボーイ」と呟いて画面がフェイドアウトし、とある映画館の前に場面転換。そこでは劇場支配人なのか?男性が映画のフィルムを身体にまきつかせた状態で火を付けられ焼死。それを椅子に座って眺める男。椅子の背もたれで顔は見えない。これが、マイボーイ……もう一人の主人公だな。
大きな背もたれ付きの椅子の両側に象牙を括りつけた、特別な椅子。象牙を売りさばくギャングってことか。

タミルナードゥ州の現首相は女性で、近々国政を狙うため、州の首相をやめる意向を発表。その後釜を狙っているのが、政治家としては新人であるジェヤコディと、財務大臣のカルメガム。しかし現時点では、次期首相の座はカルメガムの方が優位。首相に自分の映画が大コケしたことを笑われ、死にたいくらい悔しいとこぼすジェヤコディ。彼の弟であるラトナ(※冒頭の悪徳警官)は「俺の出世は兄さんのおかげだ」と、彼の役にたつため、カルメガムと手を組んでいる4大ギャングを潰すことを約束。

そういや、森の木の上に隠した象牙を、紐を引くとバラバラっと上から落ちてくるシーン。プシュパの紅木のシーンを思い出させる。木を隠すなら森へ……、象牙も隠すなら森へ、か。

キルバンと、同じく無実の罪で投獄されていた3名の警官たちはラトナに呼び出され、極秘任務としてギャングの親玉を殺せば、その功績で警察への復職を後押ししてやろうと言われ、四人は承諾。
その承諾前に、キルバンが捕まった時のことを思い出すシーンが入るんだけど、どうやら白装束?の男達が刃物もってよってたかって学生を襲っていて、それを後ろからきたシーザーが止めよう近付くも、学生の血にびびって動けず、その間に皆、殺されてしまう。
キルバンは血を見たショック(というか、血だらけの学生に触られてビビった?)で倒れ、恐怖で動けずにいたところ、犯人たちに目を付けられ、凶器である刃物を手に握らされた……というのが逮捕にいたる経緯のよう。
さすがに自分が襲われたわけじゃないのに、人のそれを見て固まってしまうような人間が、警官になろうなんて、無謀すぎる。親の意向とはいえ、何故さからえなかったのか。きっとこのキルバンは、今まで何一つ周りに逆らわずに生きてきたんだろうな……などと思って見たり。

さて、キルバンが引き当てたターゲットは、ジガルタンダ連合のアリエス・シーザー。なるほどここで、主人公同士が繋がるのか。

あ、ちなみに英語字幕で見ていた時は、なんで女性の首相が「私はあと数か月でやめます」みたいなことを言っているのに、民衆の前で首相ばんざーいって歓迎されているのかなって、理解が追い付かずにいた。
タミルナードゥ州首相を経て、やがては国全体の政治家へと飛躍していく女性の姿に、市民がエールを送っているってことかな。
1973年の時点で女性の政治家でこんな人がいたのかどうかは詳しくないので、どこまでリアリティがある話なのか分からないけれど、これは画期的なことなんじゃないだろうか。この辺りはもう少し歴史が理解できてくると解像度があがるんだろうな、と。

ジガルタンダ連合?が象牙の競り?みたいなのをしているところに、ここいらを前に治めていたらしき一人の男がやってくる。
先程の映画館で男を焼死させたギャングの、あの象牙つきの背もたれ椅子が、誰にも座られることなくそこに置いてあって、それをやってきた男がハンマーで壊そうとする。すんでのところで、飛んできた縄がその椅子を引き寄せ、ハンマーは空振り。

ここでようやく、アリエス・シーザー(演:ラーガヴァー・ローレンス)の顔見せシーン!

要するにマドゥライの縄張りにて、自分に反感を持つ前のボスがシーザーの不在中にやってきて、縄張りを取り返しにきたみたいなんだけど、返り討ちにするシーザー。というか、反撃の時に、売り物である象牙を武器に使っていいのか?ここはさすがに英語字幕の初見でも、内心ツッコミ入れたよ。白い象牙が血で赤く染まったら売れないでしょうに。
この時たおされた前のボスは、この後、映画館でシーザーの手下たちに囲まれながらクリント・イーストウッドの映画を見せられ、そして最後、スクリーンの向こうから現れたシーザー(映画のイーストウッドと同じような西部劇ぽい衣装で登場)に一騎打ちを持ち掛けられ、呼び出された彼の妻と子供(10代後半か20代前半くらいの年頃?)の前で射殺される。

ジェヤコディの映画のライバル作の位置付けの作品で主役をやったチンナと大臣カルメガムの祝いの席にやってきたアリエス・シーザー。
大きな水玉模様のシャツの人がチンナですかね?
(ちなみにこの曲の和訳、なんかとても面白かったものの、ついダンスの方に目がいくので日本語字幕あまり追えなかったんですよね。ただ「パンツ」がどうのこうのって言っていたのだけは覚えている)

カルメガム大臣、シーザーを横に座らせて肩くみながら飲み合うくらいには二人は仲が良い(?)んだな。
映画の話題になった時に、チンナがシーザーに対して、酔った勢いもあってか黒い肌の映画の主役がスターになれるはずがないみたいな失礼なことをいって、シーザーが怒るシーンがあるんだけど、そこでチンナがシーザーに「Pan-Indian film(汎インド映画)のスターにでもなってみろ」みたいな事をいったあたりから、シーザーが見る側から撮られる側に興味を持ち始める。
このシーザー、誰かを始末する時に、映画でも見るか?と誘って、自分が建てたクリント・イーストウッドの映画専門の映画館に敵をつれていって、その見せ場のあたりで、主役と同じ格好で出てきて、相手に一対一の銃での勝負を持ち掛けるというのがお決まりみたい。

で、自分の映画を作りたいと思い立ったシーザーは、大々的に監督を募集しはじめる。
彼に近付くきっかけとして、キルバンは自らをレイ・ダーソンという偽名で、甥っ子を助手代わりにして、シーザーの監督オーディションの列に並ぶ。
英語字幕では、キルバンが一緒に行こうと誘ってくるこの人物、てっきり友人か何かと思っていたんですが(※無印でも主人公が友達を巻き込んでいるので)、日本語字幕でやっと甥っ子だと判明。
元々映画関係の仕事をしていた甥に、なんとか一緒にきてもらって手伝ってほしかったんだな。キルバン自身は映画業界に詳しくないから、甥っ子の仕事場である撮影現場にこっそり入ってきて、その様子を見ながら、監督が「ロールキャメラ」とか「アクション」とか言っているのを口真似しながら、色々模索している様子がある。
この時に、キルバンが余計なことをいったせいで、甥っ子はこの撮影現場をクビになって、なかばやけになって叔父と一緒にいくことになるわけだけど、その時に甥っ子をクビにした監督が、後半で出てくる監督なんだな多分。

さてマドゥライを牛耳るギャングの映画を撮れば一躍有名人になれるのか、監督に名乗りをあげる人物は結構な数の長蛇の列。しかし誰もかれもが、シーザーの気を引くことは出来ず追い返されている。
そして彼と手下たちの言動に出直そうと、キルバン達は自分達の番が回ってくる前に帰ろうとするが、シーザーは彼らを呼び止める。これはもう逃げ道はないキルバン。どうするのかと思えば、振り返った途端、臆病者なキルバンから、やや尊大な振る舞いのタミルの映画監督レイ・ダーソンに変身。いざという時のハッタリ具合が凄い。でもこの、本当は臆病なのに身の丈に合わない言動のせいで、この人、殺人事件に巻き込まれて犯人に仕立て上げられたんじゃなかったっけ?大丈夫か、キルバン。
しかもこの映画で「オスカーを取る」とまで豪語。
彼のはったりが通じ、無事、監督に合格。
キルバンは、レイ監督(シーザーいわく「レイSir」)としてシーザーの家に招かれる。そこには身重の彼の妻と、何かに怯えたような父親の姿が。
ギャングとして名をはせるシーザーも、妻との口喧嘩ではただの普通の男だなぁ。シーザーの実父はしきり「呪われている……」と口にしており、妻でマライヤラシは「何が呪いよ、そればっかり」とうんざりした様子。
「アリエス・シーザー」の名の由来を尋ねる。
子供の頃(?)、故郷の村に映画の撮影の一団がきていて、暴れ牛が主役俳優に襲い掛かった時、それを止めたのがシーザーだった。そのお礼に、彼は俳優から帽子をもらう。そして銃を欲しいと願ったところ、彼は玩具の銃をくれた。
当時、彼はアリヤンという名だったが、俳優に新しい名前が欲しいといい、そこで「アリエス・シーザー」を名乗ることに。
その俳優というのが、クリント・イーストウッドだというのだ。

そのエピソードを話すシーン▼

この公式動画で、なぜシーザーになったかを理解した。映画館では見落としていたが、カチンコのところに「CAESAR」と書いてあって、それを見て思いついたんだろう。
ちなみにこのダブルXの上映期間、実はクリント・イーストウッド主演<<ドル3部作>>4K復元版のリバイバル上映があった。
残念ながら時間が合わず見に行けなかったが、ダブルXと合わせてみたら、きっとシーザーの憧れる気持ちが追体験出来たんだろうな。

「クリント・イーストウッドが助けた礼に、おもちゃの銃をくれただって?そんな馬鹿な」と疑う二人に、彼から貰ったものを差し出すシーザー。それは銃ではなく、ハンディタイプ(?)のカメラだった。銃ではなくカメラであると言われて面白くないシーザーだが、そのカメラを見た甥っ子くんが「彼はあなたに映画スターの素質を見たんだ」といったお陰でちょっと機嫌がよくなった様子。
「さっそく撮ろう」と言い出す彼に、甥っ子くんが「すぐには無理だ。脚本を練るためにまずは一旦戻って……」と言いかけるが、キルバン(レイ監督)がそれを制し、「物語はおのずと描かれる。早速今夜から撮ろう」と承諾する。
地元警察が挨拶にきていると、シーザーの手下から紹介され、握手をする時に小さなメモ書きを渡されるキルバン。そこにはシーザーを仕留める期限がかかれていて、それは独立記念日である8月15日に指定されていた。
その夜、最初の撮影を開始する。バイクにまたがったシーザーに、「ロールキャメラ、アクション!」と指示を出すキルバン。カメラを回す甥っ子。(※ちなみにシーザーがイーストウッドから貰ったというカメラで撮影しているんだけど、このカメラがなかったなら、キルバン達は何も機材を持たずにきているから、何で撮影するつもりだったんだろう)
シーザーの後ろ姿を見ながら、だんだんと表情が意味深な顔になるキルバン。どうしたんだ?と思ったら、使命の為に偽監督を演じていたが、撮影開始の合図をした時に、本当に映画を撮影している気分になって興奮したらしい。それを話すと、それが映画というもの、と甥っ子が発言。これが映画のエモーショナルな体験なんだと知るが、キルバンはすぐさま首を振って、自分は警察なんだと言い聞かす。
一方、初撮影を終えたシーザーは、手下たちに「初めての撮影は興奮した」酔った時のようだと嬉しそうに話す。
そう、二人は同じ瞬間に映画に魅了されたんだな。
そして5日くらい撮影するふりして、さくっとやっつけて帰ろうと言っていたキルバンだが、30日?近く撮影しても結局シーザーを倒すタイミングがつかめず、ずるずるときてしまい、明日にはもう期日がきてしまう。
焦るキルバンと甥っ子。甥っ子は「(叔父さん)もうこのまま50年くらい撮影していたら、彼はそのうち死ぬよ」みたいなことを言い始めている。
今日もだらだらと撮影を続ける彼ら。
その撮影のセット中、エキストラ?の中に見覚えのある顔を見つけるシーザー。撮影を終え、街中の広場の立像あたりでそれぞれが昼休憩の為に散り散りになる中、お昼を食べに行こうとするキルバン達を、シーザーは引き止め「今から裁判所の外のシーンを撮影するぞ」と言い出す。予定外の出来事に戸惑う二人。一方、さきほどのエキストラの中に紛れていた青年が、ギャングにあいつを殺してくれと依頼し、その依頼先と共に車でシーザーの元へ突っ込んでくる。そう、前述の、シーザーに映画館で殺された……前代のボスの息子だと思う。
後ろに回れ、とキルバン達を促し、撮影を要求するシーザー。良いアクションシーンが撮れるぞって、本物の敵と戦うシーンで撮影兼ねてしまうんかい。
突っ込んでくる車に、自らとびかかって突っ込んでいくシーザー。いやいや無謀だろ。フロントガラスぶち破って、シーザーが車に飛び込む。車は突っ込んで止まる。
ついに他力本願でシーザーを殺せると密かに喜ぶキルバン。しかし止まった車の、四つの窓から同時に敵がガラスを突き破って、飛び出す。無傷のシーザーがのそりと車から出てきて、ボンネットに座り、倒れた青年に「もう少し男になってから出直してこい」と殺さずに情けをかけ見逃す。
呆然とするキルバンに「今の撮ったか?」と確認するシーザー。渋々「カット」の声をあげるキルバン。
そして甥っ子がぼそりと「独立記念日おめでとう(※おじさん、期限に間に合わなかったねの意)」と呟く。
そして8月15日。ラトナ警視に呼び出された四人の元警官(キルバンと三名)は、おそらく誰もターゲットを仕留めることが出来なかった模様。温情?か、ラトナは「9月1日までは必ず仕留めろ」と言い放ち、シェッターニが使っているのと同じ猛毒を4名に手渡す。この毒を槍の先に塗ると、人でも動物でも死ぬくらいの威力がある様子。
期限までにターゲットを殺せなかったら、家族に危害が及ぶと思えと言われ、絶対絶命のピンチ。殺せなかったら、その毒を飲んで自害しろとまで言うラトナ。
そんな折、彼らのいる警察の詰め所にシェッターニと仲間達が襲来。警察がつかまえていた密輸売人らしき老人?を取り返しにきたらしい。警察もシェッターニにはなかなか手が出せないらしく、老人を解放。それをじっと見ているキルバン。

撮影を続行するキルバン。
妻のマライヤラシの安産祈願と称して、踊りまくるシーザー。
(▼70年代だからシーザーのパンツ、パンタロンスタイルだね。)

シーザーの個人的なイベントなのに、ちゃんとカルメガム大臣がきている。なるほど、マイボーイと愛称を呼ぶだけのことはある。とはいえ、映画の撮影を兼ねたイベントなので、画面の端にでも自分が映っておいて顔を売る良い機会だと思っている説もありうる。
この曲の最後に、踊りつかれたシーザーがどっかと椅子に座って、お煎餅みたいなのをぱりって食べるところがなんだか可愛い。
そう、シーザー、怖いギャングなのに時折かわいいのだ。
バカ騒ぎする夫シーザーを叱咤するマライヤラシ。
そして彼を撮影するキルバン達にも、呆れている。
マライヤラシは「何故、もっと立派な人の映画をとらないの?」とキルバンに問い掛け、「立派な人の映画は誰も見ない」と返すところ、これはスッバラージ監督なりの皮肉なんだろうな。
「あの人も前はこんなんじゃなかった。あのことさえなければ、今頃、森の守り人になっていた」と呟くマライヤラシ。
そして彼女から、シーザーの過去をきくキルバン。

シーザーことアリヤンの故郷は象を大切にしていたが、イギリスが大金で象牙を買いとるという話があって、アリヤンの父親と兄がそれに賛同して、象を捕まえていた。しかし子供だったアリヤンは、まだ子供だった象に同情し、逃がしてしまう。
後日、人間に散々(象牙搾取で)おびやかされてきた象が襲ってきて、兄が打ち所が悪かったのか死んでしまう。
父親のいう「象は恨みを忘れない」の言葉が呪いのようにアリヤンを苦しめ、彼は森をすて、マドゥライでギャングの道に進む。
マライヤラシの父親は、マライヤラシに「お前の夫は象牙の密輸で今は稼いでいる」と責める。
しかしマライヤラシは、キルバンに「兄さん」と呼びかけ、この映画がきっかけで夫の人生が変わるのではないかと密かに期待していることを告げる。

その夜、仲間のギャング(カルメガム大臣と繋がる4ギャングのうちの別の一派かな?)の親分のところに「明日のイベントには遅れずに来てくれよ」と告げにいくシーザー。そしてべろべろに酔っ払ったシーザーを迎えにいくキルバン。シーザーを家に連れ帰り、酔いつぶれた彼をソファに寝かせて、帰ろうとするキルバンと甥っ子。
眠り込んだシーザーに、ラトナからもらった毒を仕込むには絶好の機会だったが、マライヤラシの話を聞き、自分を兄さんと呼んでくれた彼女が悲しむから今日はシーザーを殺さないと、甥っ子に言い訳めいて話すキルバン。勿論自分の命もかかっているので使命を果たさない訳にはいかないが、マライヤラシの話のせいで、若干シーザーに同情も感じているのかもしれない。兄を失っていなければ、今のシーザーはなかっただろうから。
その帰り道、道端でぶつかってきた男は、キルバンと同じくラトナから極秘任務を指示された一人。キルバンを見ると「ターゲットを仕留めた」と告げ去っていく。
その様子を、遠くからシーザーの手下(?)であるムルガンが目撃し「レイSirどうしたんですか?」声をかけてきて、あわてたキルバンは「道を聞かれただけだ」とごまかす。その場は何事もなく終了。

翌日、マライヤラシとシーザーの安産祈願イベント(?)にいつまで待っても来ない仲間がいる。(※昨夜、キルバンにぶつかった男が仕留めたターゲットのこと)
彼を待たずに始めようと促すマライヤラシに対し、彼を仲間として大事にしているシーザーは彼が来るまでは待つと言い出す。そこへシーザーの部下が、実は来ないのは彼が既に殺されているからだと告げ、ギャングの抗争にうんざりしていた(と思う)マライヤラシは、いつもこんなんばかりだと怒り出し、その態度に怒ったシーザーは彼女の足(?)を蹴り、マライヤラシの父が「妊婦を蹴るなんて」と激怒。マライヤラシは「故郷に帰る」と言い出す始末。「故郷だって危ないんだぞ」と慌てる父親。

殺された仲間に不信感をもったシーザーは、葬式よりも先に解剖をしろと言い出す。解剖の結果、彼は他殺だと診断され、シーザーはその場にいたメンバーたちを疑い暴れ始める。それを撮影しながら、仲間同士で殺し合ってくれればいいと思うキルバンだが、結局は誰も死ぬことなく、一旦休戦。仲間を疑ったことを謝罪した上でシーザーは、殺された男の元に、昨夜女の姿があったことを思い出す。彼女を探し出し吐かせると、ラトナの使命をうけた男に辿り着く。しかも彼が警察に関係しているということまでバレてしまう。キルバンと同じ境遇の元警官である彼を殺そうとするシーザー、そしてそれを撮影するはめになったキルバン。
撮影中、ムルガンがやってきて、カメラを向けられている男が、昨夜キルバンと話していたことを思い出し、キルバンが怪しいと思い始め、彼をちらちらとみる。キルバンも自分が怪しまれていることを察知するが、撮影中なのでじっとムルガンを見つめたまま、首を横に振る。今は何もいうな、という合図か。
しかし我慢できず、ムルガンは撮影中のシーザーに声を掛け、「その男はゆうべ……」と言い始め、あわてたキルバンは彼の告白に被せるように、「シーザー、ムルガンが昨夜その男と話しているのを見たぞ」とまくしたてる。
ムルガンとキルバンが互いに、シーザーに向けて大声で喚く中、事態を察した男が咄嗟に「ムルガン、逃げろ」と言い放ってキルバンをかばう。シーザーはすかさず男を撃ち殺す。
そして見知らぬ男に名指しされたムルガンはショックで発作のように床に倒れ、痙攣し始める。そしてシーザーに打ち殺されてしまう。
キルバンをかばって死んだこの男性、庇おうが庇うまいが、シーザーに一騎撃ちを持ち込まれた時点で死を覚悟していたし、キルバンとてバレたら即自分の死につながるので、男性を助けることは出来ない。だからこそ、咄嗟に判断して、キルバンをかばったのは正解なんだけど、それでも事態をぱっと理解して、見も知らぬ男をムルガンと判断して声をかけるあたり、頭の回転早そう。

ムルガンを撃った後、仲間と大笑いするシーザー。ムルガンが痙攣した様子を見て、「そういや思い出した」と語りだす。
そもそもキルバンが逮捕された原因である例の大学生の死亡事件、痙攣して倒れたキルバンの手に凶器を握らせた男こそ、このアリエス・シーザーだと判明する。それを聞いたキルバンは、自分に濡れ衣を着せこんな目に合わせた彼への復讐の意味合いで、彼を殺す改めて決意をする。甥っ子に「今回は(ムルガンの)血を見ても気絶しなかった」と言い放つ。ついに腹をくくったか、キルバン。

そういやキルバンが甥っ子に、「(これ以上は危険だから)もう帰れ、あとは自分が一人でやる」みたいなことをいって(散々巻き込んでおいて今更だと思うんが)彼からカメラを取り上げるシーンがあるんだけど、そこで甥っ子くんは「逃げてもすぐ捕まるだろうし、最後まで叔父さんに付き合うよ」みたいに返すところがある。巻き込まれてばかりのキルバンに、更にその彼に巻き込まれた甥っ子くん。二人の仲にも、当初とは違う絆(運命共同体のようなもの)が生まれているんだろうなと思った。
キルバンは甥っ子に、シーザーをシネマを利用して倒すと宣言。
ジガルタンダの無印は、まさにその流れだったので、これも映画によるシーザー暗殺(直接の死ではなく、映像を通しての彼の存在の抹消もしくは抹殺)を意味しているのかなと、期待。

シーザーの手下の一人が、ムルガンが死の間際「レイ監督のことで何か言おうとしていた」とシーザーにいい、監督も怪しいのでは?と助言するが、シーザーはじっとキルバンを見て首を横に振る。
キルバンはシーザーを殺す決意を新たにした後なのに、シーザーの方は少しずつだけど確実にキルバン(レイ監督)のことを信用し始めている。この対比よ!
そして撮影続行。裏切り者がまだいるといって、内通者をあぶりだし、次々と銃で仕留めるシーザー。それをカメラに収めるキルバン。
やがてシーザーはキルバンの方を向いて銃を構え、キルバンも監督としてカメラを構えて対峙する。
そうかそうか、ポスターとかティザービジュアルで散々出てくる『二人が向き合って、銃とカメラを片手で構えている構図』はこのシーンか!と見ていて感動。
そしてシーザーが「よく聞け、ここで休憩だ」みたいなことを言って、インターミッション。(※実際は日本での上映では休憩は入らない)
しかしこの「休憩だ」の科白も、映画の中で映画を撮影している話だからこそ自然だけど、演じ手が客席に対してメタ発言しているような部分もあって、妙ににやにやしてしまった。

英語字幕の初見では判らなかった急な展開の後半


今まで撮影した映像を自分のところの映画館でスクリーンいっぱいに写して、振り返ってにこにこご機嫌なシーザー。彼の父も「アリヤン、アリヤン……」と大画面に映る息子に興奮している様子。
そこへ「ストップ!」と中断に入るキルバン。
完成間近(?)の映像で手下たちと楽しんでいたシーザーは、「どうした、レイSir」と不思議そう。
「私は降りる!これではオスカーなんか無理だ」と怒り出し、フィルムに火をつけようとするキルバン。
「降りると言った私が、無言で去らずにここに残っている、その意味が分かるか?!」
今まで撮ってきたような映像では、スターにはなれないと語り始めるキルバン。
ゴッドファーザーでは、ギャングが稼いだ金で貧しい人たちを救う、そこに観客たちが惹き付けられる。
「俺たちに、貧しい人間に服でもあげろってか?」と笑う面々。
「いまタミル映画ではラジニカーントという色黒の新人スターが売り出している。彼は容姿も良く、演技もうまい。彼に勝つには何が必要か?」というキルバンの科白には、ニヤッとしてしまった。
(※スッバラージ監督は、大のラジニ様ガチファンだそうです。他の作品でも度々ラジニカーント氏に言及しているし、彼の映画も撮影している。現在41歳の監督にとって、子供の頃からのスターなんだろうなぁ。)
「俺はスターじゃない、悪役だぞ?」と鼻で笑うシーザーに、「そう、さらなる悪役の存在が必要だ」と言い放つキルバン。
いったい何を?と問い掛けるのに対し、キルバンは「シェッターニ」と呟く。それを聞いた手下たちは「ダメだ、彼には手を出してはいけない」と合わせてふためく。
「(成功したいなら)私の提案にのり、君はかわるか」と問い、そして「シェッターニを捉え、故郷を救え」と言い放つキルバン。
シーザーただ一人で彼に挑み、それには自分一人だけが同行すると宣言するキルバン。
当初のPan-Indian film(汎インド映画)を目指した気持ちを思い出したのか、シーザーは最終的にキルバンの企画にのり、手下たちと一次的に別れを告げ、撮影のため、故郷へ父親とキルバンを連れ帰ることに。

ここは、英語字幕の初見では全く判っていませんでした。
前半ずっとギャングの話だったのに、なんで急に(部下達を連れて行かずに)違う場所に物語が移ったのか、読み取れず、日本語字幕のありがたみを痛感。

「マライヤラシ、旦那があんたを迎えにきたよ」と突然の訪問(帰郷)に驚く故郷の面々。
マライヤラシとシーザーは同郷の民なんだね。
妊娠している娘を蹴ったんだからきちんと謝罪しないと許さないぞとお義父さん(マライヤラシの父)。
「仲直りしにきたんじゃないぞ」とシーザー。
彼は村人達を集め、皆の前で、「シェッターニを捕まえて故郷に光を灯す」と宣言。カメラが回っているので、村人たちはシーザーをあがめるような仕草をしているが、半信半疑。
「だったら警察に捕まっている村人達を解放してやってよ」とマライヤラシ。
それを受けて、シーザーは警察の詰め所へ村人達を引き連れ訪問。
ここで実権を握るラトナ警視に、シーザーはシェッターニを生け捕りにして引き渡すから、拘留されている村人達を解放しろと要求。急なシーザーの登場に戸惑うラトナ警視だが、彼は村人達にまじってキルバンが居るのを見つけ、事情を説明しろと伝える。
ラトナ警視は、村人達が字は読めないことを伝え、キルバンは「映画の撮影をエサに、シェッターニと戦わせて使命を全うする予定を伝えた。
ラトナ警視は「君の大義は判った」とにやつく。
この辺りからなんかハラハラ度合いがあがるんだよなぁ。

そういやシェッターニの象狩りのシーン。
冒頭に字幕でちゃんと「動物は実際に酷いめにはあっていない」と注釈があるので、VFXなんだけど、結構リアル。

あと、ラトナ警視にシェッターニ捕まえるから、村人を解放させろとシーザーが約束を取り付けるシーンで、キルバンがシーザーに美しいタミル語でいえよってアドバイスして、シーザーが慣れない丁寧な言い方でたどたどしく警視に話しかけるところ。好きなんだよね。ギャングのボスなのに、映画においては監督に従っているのが。

で、約束とりつけて捕まった村人達を解放してもらうことに成功。義父(マライヤラシの父)からも村人からも感謝され、ちょっと戸惑う感じのシーザー。今までギャングの子分たちから慕われてきても、こんな風な感謝のされ方はしてこなかったんだろうな。戸惑いつつも、わかったわかった、さっさといけ……と言うシーザー。この辺りから彼にだんだんと気持ちの変化が訪れていく感じ。かつて象を助けたただの少年だったころへと戻っていくのかな。

村人達が無事もどってきたのに静かにみんなで飲むなんて……、景気よく太鼓でも叩こうと提案するシーザー。すると慌てて「シェッターニに見つかるからやめてくれ」と制止が入る。
しかし太鼓をたたかなくても、馬の足音が近づいてきて、シェッターニの仲間達が近付いているのが判明。
シーザーは村人達をそれぞれ配置して、自分がおとりになった上で、弓矢などで応戦。そしてシェッターニの仲間を生け捕りにする。彼の居場所を吐かせ、こんな月の明るい晩ならば彼は象を狩りに出てくるだろうとのこと。シーザーとキルバンは、捕らえたシェッターニの仲間を道案内として連れて、彼を探しに森へ向かう。象を倒して象牙を取ろうとしているシェッターニに遭遇。
しかしシェッターニの仲間が待ち伏せをしていた。
銃をもって応戦しようとするシーザーを、「生け捕りにしろ」と指示するキルバン。「ここが見せ場ってやつか」みたいなこといって、別の刃物の武器(斧か?)をもって丘をかけていくシーザー。カメラを構えたまま彼を追うキルバン。
シャッターニの仲間達を次々と倒し、シェッターニとも一騎打ちになるが、彼の武器で傷を負い、おそらくそれに塗られた毒で眩暈を起こすシーザー。
当初はシェッターニがシーザーを始末してくれれば願ったりだと思っていたキルバンだった。
出産を控えた象が逃げられずにいるところを狙うシェッターニに対し、必死に戦うシーザーをカメラで追ううちにキルバン。
そしてシェッターニと仲間は退却。
倒れ込んだシーザーは、瀕死の状況。
ついに警視からの使命を果たしたキルバン。
彼を一人残し、森を抜け、さきほどシェッターニが倒した象のそばで荷物を一つずつ手放していくが……、虚しさを感じるような眼差しで彼は涙を流す。彼が死ねば、妊婦であるマライヤラシはどうなるか……そんな思いもよぎっただろう。いまや村にとって希望の人となったシーザーが居なくなったら、この村はどうなるか。
そう、復讐を誓ったはずのキルバンにも変化が。
瀕死のシーザーを村へ連れ帰るキルバン。マライヤラシがなんとか傷口を手当し、一命をとりとめたシーザー。
それを見て、キルバンもホッとしたように座り込む。

村に象たちがやってくる。
シェッターニに日々襲われている象にとっては、人間は最大の敵。
村が襲われるのか……とざわつくが、マライヤラシが象の目を見て、そうじゃない、礼を言いに来たんだとシーザーを説得。そして近付いてきた象は、自分を助けたシーザーの頭にそっと鼻をのせる。かつて子供の頃に助けた象かもしれない。
そして兄の死がきっかけで異様に象を恐れるようになってしまった父親も、象に触れたことで「彼らに許されたんだ」と涙する。
その姿を見て、シーザーも父親をとても穏やかな眼差しで見つめている。そして象に許されたことでやっと気持ち的に解放された父親は、マライヤラシの膝枕でそっと息を引き取った。
父親を埋葬しながら(だと思うが)、シーザーはそっとキルバンに呟く「俺の人生をかきかえる時がきた」と。キルバンは「ペンを握り続けていれば、おのずと人生は綴られていく」と彼に後押しの言葉をかけた。

あらためてシェッターニを探しに森へ。
キルバンがカメラを構える中、激しい戦いの末、シーザーは彼を生け捕りにする。
それにしてもシェッターニ役の俳優さん、四つん這いで走ったり、大変だな……。

ギャングとして敵を見据えるシーザーと違って、シェッターニを捕まえる時の顔のシーザーって、どこか穏やかなんだよなぁ。気持ち的に充実しているということなのか、父親が呪いから解き放たれて楽になったことも影響していそう。
シェッターニに「来いよ」と言う時も、とても表情に余裕があるし。死の淵から生還した強みもある。

そしてラトナ警視のもとへいくシーザーとキルバン。
キルバンは「計画は失敗しました。タミル州首相を呼ばないと、シェッターニは引き渡さないそうです」と文字で警視に伝え、首相がヘリで村へやってくる。
「警察の恥です、民間人がシェッターニを捕まえるなんて」と警察を責める首相。一方で、村人達に対しては「村の皆さんに(在住?)証明書を発行します」と約束をする。
シェッターニを引き渡し、首相と握手を交わすシーザー。
村人の誰もが笑顔で、シーザーを担ぎながら帰り、村ではお祭り騒ぎに。

シェッターニを警察へ引き渡した後、村に戻ってからのシーン。

皆と踊るシーザーの満足そうで幸せそうな顔よ。
それを撮るキルバン。
途中キルバンが目を止める女性、ラトナ警視に捕まっていた村人達を解放した時に一緒に戻ってきたパインギリという女性なんだけど、彼女を見つめるキルバン……からの、二人の様子に気付いてにやにやするシーザー夫婦。そしてキルバンとパインギリの婚約の儀式(結婚?)までの展開が早い早い(笑)。
そして産気づいたマライヤラシが家に戻って、いよいよ出産間近。
外で歩きまわって落ち着かないシーザー。可愛いな。
村へ戻る前に、安産祈願で騒いでいた時と全然表情が違う。
義理のお父さん(マライヤラシの父)が、なんたらの葉をとってくるのが習わしだと言って、彼を森へ促し、シーザーはキルバンも一緒に……と三人で行く。娘の出産にうきうきのお義父さん。
するとどこかで突然、銃声が。なぜ?シェッターニは逮捕されてもう密猟は終わったはずなのに?
義父を家に帰し、シーザーとキルバンは共に銃声のした方へ。
ここでシーザー、キルバンの手を引いているんだよね。
もう映画を撮る側と撮られる側という関係でも、監督とギャングでもなく、完全に友人なんだよなぁ。
そして川の近くで倒れている象を見つけ、警察の銃が落ちているのを発見。どういうことだと顔を見合わす二人。
更に歩いていくと、岩陰で怪我して動けずにいるシェッターニの姿が。
おいおいおい。

シェッターニは、警察に引き渡された後のことをシーザーとキルバンに話し出す。
州首相は、カルメガム大臣を呼びつけた。シェッターニを、自分がかわいがっているシーザーがつかまえたってことで喜ぶ大臣だったが、警察の詰め所に呼ばれて顔を出すと、首相はいきなり履物をぬいで手に取り、大臣をその履物でバシバシ叩きながら怒り大爆発。
「何がマイボーイよ。彼はあえて野放しにしていたのに、余計なことを」と。
え?どういうこと?大臣と同じく意味が分からずにいると、どうやらこの首相、ここいらの土地をいずれ売りつけて、国政に進出するための足掛かりにする(あるいは資金にする)予定だったらしい。シェッターニを手名付け、象の密猟にかこつけて、人間も動物もすべて殺し尽くす契約をしていたとのこと。
え、人間も?ここいらの部族を殲滅するってこと?
女性の首相だからって、甘くみていた。とんだ悪党でした。
その計画を台無しにされてカンカンの首相にまくしたてられ、大臣は「彼とは縁を切ります……」と、か細い声でいって去っていく。
一方、残ったラトナ警視に、首相は「(ばれてしまったからには)シェッターニを始末しなければならない」と言い出し、え、そこに捕まったシェッターニ本人がいるのに、そんなこと言うの?と思ったら、
「シェッターニことシーザーを始末するのよ」と言い出して。
すごいこじつけ過ぎる。それがまかり通っちゃうのか?
首相が帰った後、ラトナ警視は部下達を集め「捕まえたのはシェッターニは偽物だった。本物のシェッターニことシーザーをこれより始末する。そして彼を匿った村人たちも同罪だ」みたいなことをいい、殲滅作成を言い渡す。
これは明らかに無理があるのは、地元警察は皆承知のこと。
それでも権力には逆らえない。
映画の序盤で「善人の君」と揶揄されていた警官、戸惑いと驚きと焦りの顔で、ラトナ警視を見ている……。

シェッターニはもう死を覚悟しているのか、ずっと追い続けていたあらくれ象と戦うことだけを望み、シーザー達には「(警察が来る前に)逃げろ」と告げる。急いで村へ戻るシーザーとキルバン。村では生まれた赤ちゃんを祝って笑顔があふれている。シーザーをマライヤラシの元へ促す村人達。しかし先程の殲滅作戦を聞いてしまった彼は、村人達の笑顔をぼんやりと眺めながら無力感に苛まれている。
そして赤ちゃんを抱いたマライヤラシが待っていた。

村人達を集め、シェッターニから聞いたことを伝え、そして「すぐに逃げれば、何人かは助かる」と言うキルバン。
しかし「村を捨てることなど出来ない」と言う人たち。
「命を落としたら元も子もない」と主張するキルバンに対し、一度村を捨ててしまったらもう戻れない、村の外へ避難させている若者・子供たちにこの村を残すためには、この村を捨てることはできないという。
(※警察の暴力とシェッターニの脅威が蔓延しているので、若者・子供は安全な場所に避難させていて、この村には年寄りと一部の女性たちしか残っていない)
戦って倒せたとしても、相手とてただの警察の駒。命令を出している人間は安全な遠くで生きていて、たとえ追い払っても、今度はもっと大人数で村に攻め込んでくるだろうとキルバンは主張。
戦いは無意味。
「タレイヴァー(リーダー)でしょ、何かいって」と妻に促されるシーザーだが、「(俺は)リーダーなんかじゃない。自分は無力だ」と言う。
逃げることはできない、でも戦いも無意味。
しばらく考え、シーザーはキルバンに「カメラを回せ」と促す。
シーザーは最後のシーンを撮ろうと持ち掛けた。
それは村を捨てず、しかし武器をもって戦うことはしない、という。どんな理由で警察が自分達を抹殺しても、自分達の死の事実は記録として残る。
シーザーは、カメラ目線で訴える。暴力では対抗せず、我々の武器はシネマ(映画)だと……。
あの、ギャングとして散々人を蹴散らしてきたシーザーが、いま、非暴力で村人達と一緒に、権力をもった敵に立ち向かおうとしている……。
なんて話なんだろう。
最初は映画の撮影の為に、村へ戻ってきたシーザー。
村人たちと過ごすうちに、かつて象を助けた少年だったころの彼が戻ってきた。

やがて銃をもった警察の一団が村へ到着。
彼らを出迎えるための曲は、かつて象のために焼身自殺をはかって女神としてまつられた女性の曲を選ぶ。シーザーが「セードゥカーリーの曲をやろう」と覚悟を決めるシーンが格好良い。

パインギリとシーザーの赤ちゃんをサイドカーに乗せ、バイクで去ろうとしていたキルバンだったが、カメラを手に道を戻る。
そして撮影場所をさがし、木の陰からカメラを構える。

太鼓をたたき、警察と向き合う村人達。太鼓のリズムに肩をゆらしながら、いやな笑みを浮かべ座るラトナ警視。
「善人な君」と言われた例の警官が、ラトナ警視に「ここには反乱はありません」と中止を申し出るが、警視は彼を撃ち殺し「反乱だ」と言い放ち、射撃の命令を出す。
皮肉なことに、善人な警察官と言われた彼は、自らの銃で村人を殺すという罪だけは逃れたことになる。
彼を揶揄した仲間の警官は、慌てて命令に従って銃を構えるが、明らかにこの状況には納得はしていない。それでも上司の命令には、警察の命令には、そして州の首相の命令には逆らえない。ただの駒なのだ。

次々と銃弾に倒れていく村人達。
ラトナ警視はシーザーだけは自分が撃つからと宣言したため、彼以外の周りの人間が撃たれては倒れていく。

キルバンは顔をそむけたくなるのも堪え、ただひたすらその様子を映像に収める。これを残すことがキルバンの一番の使命。
マライヤラシも撃たれ、シーザーにもたれかかる。
そしてシーザー1人が残ると、ラトナ警視が銃を準備し始める。
妻の死を見つめながら、それでも一人気力を奮い起こすシーザー。ふと振り返ってキルバンと目が合う。とっくに村を出たと思っていた友人、そう友人がそこでカメラを構えているとは思いもよらなかっただろう。
ラトナが後ろを向いている隙に、彼は「逃げろ!」とキルバンに叫ぶが、キルバンは首を横に振る。
友の最後の姿をフィルムだけでなく、自分の目に焼き付けることが、この瞬間のキルバンの願いだったと思う。辛いけれど、ちゃんと最後を見守る。
かつてラトナ警視の提案にのってシーザーを殺すために近付いたキルバンが、今はラトナ警視に殺されるシーザーをシネマの中で生かそうとしている。
警視がにやりと笑い、シーザーの額に銃弾が……。
後ろに倒れたシーザー越しに、ラトナ警視が画面に写されるカットはエグイな。
キルバンの涙が眼鏡を伝い、キルバンの指はカメラのスイッチから離れる。シーザーの最期の瞬間をきっちりおさめ、キルバンは急いでその場を離れる。
これを村の外で持ち出し、世に広めなければいけないし、彼の残した子供を安全な場所へ届ける義務がある。
走り去るバイク。しかし銃声が響き、パインギリが撃たれ、そしてキルバンが撃たれ、バイクは崖から落ちる。
彼らを撃ったラトナ警視はニヤリと笑い、決め台詞をいい、この物語に幕を下ろす。
一人残ったおばあちゃんが、死体の山を目の前に嘆くシーンでフェイドアウト。
(※ちなみにおばあちゃんが別の場所でずっと祈っていて殺されるのを免れたのも、後世にこの事実を伝えるためにシーザーが残って欲しいと伝えたのかな。皆の死を伝えるために生きてくれっていう願いも、背負わされた方はきついな)

後日、シェッターニ討伐で表彰されるラトナ警視のナレーションで、兄のジェヤコディのおかげと感謝を述べている。

そしてマドゥライ。
首相に見限られた大臣に変わり、ジェヤコディが台頭。
彼の映画が各地で上映されることに。
序盤でキルバンの甥っ子が助手を務めていたチャンダール監督(あっている?)、その監督がジェヤコディの映画を撮った作品らしい。
マドゥライではその監督のジェヤコディ主演作が上映。
しかしそれ以外の地域では、ジガルタンダ連合の根回しでレイ監督によるアリエス・シーザーの映画が上映される。
最初は戸惑う観客だが、シーザーの手下たちが銃で脅して、とにかく見ていけと観客をその場にとどめる。カルメガム大臣は客席で画面を見つめ「マイボーイに届け」と呟く。
大臣、あなた……悪事で繋がった絆だけど、シーザーのこと本当にかわいがっていたんだね。
何故この映画が上映されたのかというと、殲滅された村へ、カルメガム大臣が足を運んで、シーザーの死を目の当たりにしたのか(それともシーザーだけはシェッターニとして殺されたので、警察が遺体を引き上げたのかは不明)とにかくわざわざ村を見に足を運んで、その帰り際に、地面に散乱したフィルムを見つけたらしい。これはキルバンが撃たれた時に、バイクから落ちたフィルムなんだろうけれど、これを探して回収しなかったのはラトナ警視の落ち度だな。
しかもチャンダール監督に、これはシーザーの映画だって説明する映画の追加シーンまで作らせたってこと?
チャンダール監督も、映画の内容を知って、こちらの味方をすることに同意したんだろうな。
やがてスクリーンに映し出される村の現状、州首相が村人達に証明書を発行する約束をしているシーン、シェッターニの証言、村人が銃弾に倒れる様子などが次々と流れ、静まり返る客席。
映画のラスト、警察が来る前にシーザーが残した映像。
村人達と共にカメラに向かって問い掛ける。
「支配者たちよ、何故だ」
↑日本語字幕の記憶が曖昧なので、ここは言い回し違っているかもしれませんが。
客席から「こんなの間違っている」と泣き叫ぶ声が響き、それを見た大臣も、マイボーイの思いが民衆に届いたことを噛み締めている様子。
(この人も元々金と暴力で政権握ろうとした人だから、善人ではないにしろ、それでもこの内容には思うところあっただろうし、何よりかわいがっていたシーザーの死は純粋に悲しんでいると思う)
故郷に帰る前にシーザーのところにいた人(役名わからないが)も、映画が始まる前は、何故かジェヤコディ側に寝返ったのか?ジェヤコディの映画にわきたっていたけれど、シーザーの映画を見た後、思い直して映画館の外で貼っていたポスターはがして、首相とジェヤコディへの反発をあらわにしていた。

大臣とジガルタンダ連合の協力のもと、マドゥライ以外の映画館はすべてこのシーザーの映画だったらしく、映画を見た後、映画館の外に飾られたジェヤコディと首相の大きな看板は打ち捨てられた。

30年かけて掴んだ信頼は、映画1本で翻された。
ジェヤコディの対立候補にもそれぞれ映画は届けられたらしい。
首相とジェヤコディは失脚(ってことだよね)。
別の劇場では、シーザーの映画を見ながら、かつて肌の黒いスターなんてと自分がいった言葉を思い出し、涙するチンナ氏の姿が。完敗だと言わんばかりに拍手をスクリーンに送っている。この場面、シーザーに見せたい。

シーザーの映画が上映される映画館の一つに、ラトナ警視が私服でかけつける。映画館の外にいる観客たちが「あれ例の警視だよね。なんでここに」とざわつく。
彼は映画館に入ると、そこにいた観客を銃で脅して追い出す。
そして部下達?と共に、そこにいたカルメガム大臣に銃口を向ける。
「ようこそ元警視、君をまっていたよ。シーザーが取り残したシーンに取り掛かろう」みたいなことをいって、「彼」を呼ぶ。
ラトナ警視が「彼?」といぶかしげにスクリーンを見る。
キルバンの甥っ子が「ロールキャメラ、アクション」と言い放ち、スクリーンの向こうからシーザーがクリント・イーストウッドの恰好をまねたあの服装で、「彼」が登場。
シーザーよりも厚みのないシルエットが、杖をつきながらやってくる。
ひょろひょろしたそのシルエット、そう、キルバン、生きていたーーーーーー!
「友人シーザーから学んだことは」って言いながら、相手に一騎打ちを持ち帰るキルバン。
え、キルバンの射撃の腕ってどうなの?
不安もあったが、ラトナ警視を無事葬り、シーザーと村人たちの仇をうった。

最後……パインギリの元へ戻るキルバン。
パインギリは、「スクリーンを見て。あなたのパパとママよ」と言ってシーザーの赤ちゃんをあやしている。
キルバンは赤ちゃんに名前を付けなければと言い、パインギリは「マライヤラシが言っていた、女の子ならカーリー、男の子ならセードゥって」と。女神セドゥカーリーにちなんでということらしい。
キルバンは赤ちゃんを覗き込むようにして、セードゥと声を掛ける。
そうか!そうなのか。ジガルタンダの無印の「セードゥ」はシーザーの息子!
ってことは、ギャングになってからずっと口をきいてくれないっていうあの母親って、パインギリさんなのかー。うわぁぁぁぁぁ。
そうか、そうだな。
ボビーシンハーさんの丸顔、ラーガヴァーさんの丸顔、親子役がなんだか頷けちゃうよ。時空を超えた親子。なるほどね。
ボビーシンハーさん演じるセードゥが無印の後半で、「娘があなたのファンで」って若い母親に話しかけられる前後からとても穏やかな顔になっていて、
今回のラーガヴァーさん演じるシーザーが警察にとらわれた村人達を解放して感謝された辺りから段々と穏やかになって、眼差しがやわらかくなっていくあたりなんて、今おもえばセードゥと重なるなぁ。

映画館の外へ赤ちゃんをかかえて歩くパインギリ。
それを見つめている青年は、傍にとまっている車に話しかけ「彼の血筋は絶やさないといけない」と、男に殺害を依頼する。
これ例の前のボスの息子だろうな。そんな不穏なシーンでエンドロール。
こんな展開の末にきく、エンドロールの曲。
もうなんていうか、天を仰ぐ気持ちだよ。

これがジガルタンダの無印に繋がっていくんだな。
でもパインギリとセードゥは生きているわけで。
キルバンが二人を守ったのかな。
キルバンのその後、亡くなるまでの人生が気になる。
この後、彼は映画を撮り続けたのだろうか。

ラーガヴァーさん、この映画ではじめましてだったけれど、笑顔が可愛い人なんだな。

おまけリンク

作品の関連イベントの動画とかリンク貼っておきます。
本編のシーザーが辛かったので、せめてイベント動画で癒されたい。

Jigarthanda DoubleX Audio Launch


スッバラージ監督、174cmみたいな記事をどこかで見たな。
監督さんとしては大きい方だし、昔、実家にあった大きなくまさんのぬいぐるみを思い出します。ラジニ様の大ファンということくらいしか自分はまだ知識ありませんが、鋭い切り口の作品が多い印象なので、今後も注目の監督さんだなぁと。ピザは日本語字幕で見ました。ペーッタはDVD持っているので、そのうち時間つくってみます。


本日、4月13日。
感想かくのに物凄く時間がかかったのは、消化しきれない大きな衝撃が映画から浴びせられ、脳内整理に時間がかかったから。
初見の英語字幕で少し感想かきかけていたんですが、ほぼ頭真っ白になって思い出せなくて、2回目の初の日本語字幕では理解は出来たものの、内容の衝撃でやはり頭が真っ白になって、3回目にしてようやく言葉にできるように。
そしてまたいつか4回目も見たいのです。