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ストリートダンサー初見感想(ネタバレ有)


はじめに。

昨年12月に、IMW2023 Part2にて、1回限りの上映で即完売した話題作が、日本語字幕で全国上映開始。
2024年3月1日公開「ストリートダンサー」。
初日は平日だったので見に行けませんでしたが、公開2日目の2024年3月2日に初鑑賞。(なおムンナー・マイケルの後に見たので、この日はダンス映画三昧になった)

ディシュームで名前を覚えたヴァルン・ダワンさんが物凄いダンスを見せつけてくる映画、監督はフライング・ジャットの監督さん。
しかも見てきた人の感想だととにかく映画館で映える凄い映画、単なるダンス映画ではなく、移民問題などの情勢もふまえたストーリーという端的なキーワードだけ見かけて、ずっと楽しみにしておりました。

あらすじ

舞台はロンドン。インド系の青年サヘージ(ヴァルン・ダワン)率いるダンスチーム「ストリート・ダンサー」と、パキスタン系の女性イナーヤト(シュラッダー・カプール)率いるダンスチーム「ルール・ブレイカーズ」はライバル同士で、街中で鉢合わせするたびに、火花を散らすダンスバトルを繰り広げていた。
 そんなある日、10万ポンド(約1,800万円)の賞金が獲得できるダンスバトル「グラウンド・ゼロ」の開催が発表される。別々の目標のもとグラウンド・ゼロに参戦したサヘージとイナーヤトだったが、あるきっかけから友情が芽生え、同じ目的を持ち、コンペティションを勝ち進んでいく…。

映画『ストリートダンサー』公式サイト (spaceboxjapan.jp)
ストリートダンサー公式サイトあらすじより

ネタバレあり感想

場所はイギリス。イギリス生まれのインド・パキスタン系の若者たちが日々路上でダンスバトルを繰り広げる地域。

冒頭、主人公の兄率いる「ストリート・ダンサー」のチームとイギリスのダンスチーム「ロイヤルズ」が「グランウンド・ゼロ」というダンス大会で共に争っていたが、その最中、主人公の兄がジャンプの着地に失敗し、膝を骨折。2年を経ってもリハビリの日々。
彼の弟サヘージは、兄の夢を叶えるため、ダンススタジオを購入。現在のストリートダンサーのリーダーであるサヘージは、ここで自分達がレッスンをし、兄は子供たちにダンスを教えることを提案。
この時点で、兄は言葉にしないけれど複雑な顔をしているので、足が完治しないことがもどかしいのか、スタジオの購入資金の不信感をいだいているのか、どっちともとれる感じ。
実はのちほど描かれるが、この資金源は、結婚式に参列するために一時的にインドにいった際に、飲みの場でとあるブローカー(?)のおじさんに目を付けられ、彼らのしつこさに観念しえ、違法と知りながら人助けとして出稼ぎ希望の3人をインドからイギリスに連れていく。その時に得た大金でスタジオを買っていた。イギリスについたサヘージと彼らは空港で別れ、しばらくは連絡をとっていたがやがて疎遠に……

サヘージが目に仇にしているパキスタン系のダンスグループのリーダー、イナーヤト。いつも2組はクリケットの試合で興奮しては、レストランであばれ乱闘に。食べ物を粗末にして喧嘩をする彼らを溜息まじりで見るレストランオーナーのラーム。
見かねたオーナーが彼らを制する為よんできた警官、ムラリさん他の映画でも警官・刑事をやることが度々あるけれどいつも不機嫌、怒ってばかりの役どころ。でも今回はクリケットの試合中継でこんな笑顔を見せるシーンも。前半だけの登場なのが残念。

イナーヤトの家では、ダンスは禁止。肌を見せる格好でダンスなんてとんでもないという家族の手前、通りで踊っていることは秘密にしていた。彼女のいとこであるザイン、眼鏡男子キャラで、いとこと同じ「ルール・ブレイカーズ」のダンサー。

イナーヤトはレストランを出る際に、勝手口からウェイターが数人を招き入れてこそこそ何かをしているのを何度も見かけ、ある日、彼らの厨房へ。そこではホームレスたちに食べ物をオーナーの姿が。違法行為を見逃せないと責める彼女だが、彼らが食べているのは、イナーヤト達が感情にまかせて注文したものの食べずに残していった残飯だと言う。
インドからやってきて不法滞在でホームレスになってしまった彼らを支援し、送り返してやりたいがままならないという現状を知り、イナーヤトはショックを受ける。
そんな折、「グラウンド・ゼロ」の開催をきき、その賞金があれば彼らをインドへ帰してあげられるのでは?と考えるイナーヤト。
一方、兄に「グラウンド・ゼロ」での優勝をかなえたいと言われたサヘージは、仲間達と奮起。

互いにグラウンド・ゼロの優勝を目指してライバル視する「ストリート・ダンサー」と「ルール・ブレイカー」だったが、レストランオーナーのラームは、それぞれのチームだけでは優勝は無理、二組が協力するように助言。
同じチームで戦うなんてありえないと去っていく二組。

サヘージたちは踊っているところを、ロイヤルズのリーダーに注目され、戦力として買われ、ストリートダンサーのメンバーから数名が彼らのチームに入ることに。ストリートダンサーのロゴジャケットを脱ぎ捨て、ロイヤルズの上着に着替えた彼ら。
兄が負傷したダンスバトルの際の敵方チームへの加入は、サヘージにとっては手早く優勝を手にする手段ではあったが、兄との気持ちがすれ違っていく。

ロイヤルズのメンバーになったサヘージ達は、ストリートダンサーの仲間とも疎遠にならざるをえなくなる。
一方、ルール・ブレイカーズのメンバーの一人と、ストリートダンサーのメンバーのポディが実は恋愛関係で、ブレイカーズの優勝目的を知った彼は、サヘージ達と共にロイヤルズのメンバーに選ばれていたが、やめて、ルール・ブレイカーズのメンバーと合流。

ダンス大会が始まり、ロイヤルズとルール・ブレイカーズが順調に勝ち進む。
パキスタンの彼女と恋愛関係なんて、と当初は猛烈に批判していたサヘージだ。仲間の裏切りを許せないと怒る彼に「俺たちも同じ(敵チームだったロイヤルズにいる自分達も同じ)」と言い放つ仲間。
またバスの中で偶然、イギリスに違法に入国させたメンバーのうちの一人と再会し、仕事のあっせん人から裏切られたと聞かされる。「助けて欲しい」と懇願する彼を、拒絶するサヘージ。しかしインドにいる祖母の「困った人を助ける」の言葉を思い出し、苦しむ。

色々あって、サヘージもしだいにロイヤルズとして踊ることを間違いだったと気付く。
お兄さんも主人公にもう少し早くあれこれ語り掛ければ、主人公も大会が始まる前にロイヤルズに在籍することを後悔しただろうに。

ホームレスの移民たちに、大会での優勝を宣言するルール・ブレイカーズのメンバー。それをそっと遠くから見ているサヘージ。本当はあの輪の中に入りたいと思っているんだろうな。そのホームレスの中に、バスで拒絶した彼・アムリンダーもいる。

最終的に準決勝の段階で、ルール・ブレイカーズが相手に押され気味だった時に、サヘージと他のメンバー(ロイヤルズ合流組のストリート・ダンサーのメンバー)。
ロイヤルズは決勝を前に、自分達を裏切ったサヘージ達を許さないと奮起。
決勝戦まではあと数日。ルール・ブレイカーズと合流したサヘージ達。メンバーは彼らを歓迎する。パキスタンとインドの合同チームがここに完成。
「チーム名はどうする?」となった時に、サヘージはルール・ブレイカーズのままでいいというが、イナーヤトが(兄の為に頑張る主人公の事情を知っているので)「ストリートダンサー」という名を提案。
彼らのレッスンに、サヘージの兄もアドバイスで加わり、新生ストリートダンサーは決勝に備える。

決勝戦では圧倒的な実力を見せつけ、観客を虜にするロイヤルズ。
しかし負けまいと奮闘する「ストリートダンサー」達。
観客の声援をうけ、焦ったロイヤルズのメンバーの一人が、ヒューズをぬいて音楽を止めてしまう。ダンスが再開できなければ、このままロイヤルズの優勝だと審査員。
そんな時、彼のピンチを救おうとドラム缶を叩いてリズムを刻む移民のアムリンダー。バスで見捨てたのに助けてくれた彼に、サヘージはステージから感謝を示す。一緒にイギリスへ渡ってきた残りの二人も太鼓をかかえて合流し、彼らのリズムで踊りだす「ストリートダンサー」達。
観客も再び湧き出す。
その一体感あるステージに感服し、ロイヤルズのリーダーも称賛の拍手を送る。しかしロイヤルズのメンバーがヒューズを抜いたとしり、戻してこいと指示して、再び音楽が流れ始め、一気にダンスは最高潮に。
最終的に優勝したストリートダンサーは、サヘージの兄の望みをかなえ、同時に移民たちをインドへ帰国させる資金を得ることに。
そして最後、母親の元へ帰るアムリンダーの姿が。
ストリートダンサー達は、移民たち支援の活動をはじめたことを示唆する終わり方でエンドロールへ。

感想

とにかくもうタイトル通り、ダンス、ダンス、ダンスなんですが。
最後は色々と感動して泣いてました。
インドとパキスタンの若者たちが度々争うこの関係性、日本人である自分としては彼らの気持ちは、充分には理解できない。
しかしそんな彼らがそれぞれ別の方向から気持ちを変化させて、やがて一緒のチームとなる流れは胸熱。

中盤で、レストランのオーナーがサヘージに「踊れない人間にわかるもんか」みたいなこと言われて、いきなり踊りだすシーン。
いや確かに、見る前に映画の紹介で「伝説のコリオグラファーが踊る」ってのは聞いていたけれど、その人どこから登場するのかなってずっと思って見ていたら、最初から出ていたオーナー、あなただったんですかって踊りだした瞬間ツッコミ入れたくなった。
このキャスト紹介ですでに顔写真みていたのに、ずっと気付かなかったよ。

あとイナーヤトが決勝直前に、家族にダンスしていることがバレちゃって出られないってなって、いとことサヘージが彼女の家に説得に行くところ。
お父さんが本当に理解ある人で良かった。
「決勝はいつなんだ」って言った瞬間、涙があふれた。

ロイヤルズのリーダー、ダンスの才能ある人に対しては素直に褒める。街で太鼓たたいている移民に対しても、リズムが気にいったのかダンスのりのりだったし、彼らを侮辱するような発言もない。差別はない。
ロイヤルズの元々のメンバーを見ても、確かに白人だけじゃなく、アジア系の女性も所属しているし。そういうところの人種的な偏見がない人で良かった。ただまぁ大会目指して一緒に練習してきたメンバー3人に、決勝直前で裏切られるのは、そりゃ怒るよね。欠員部分に他のメンバー急遽いれなきゃいけないんだから。

あと決勝戦になって、いきなり勝ち抜いてきたチーム名、変えちゃっていいの?とツッコミどころ満載なんだけど、そもそもサヘージ達が急に乱入してきたところですら、審査員は何も制限していないんだよね。この大会わりとそういうところは寛容なのかな。
その割には、音楽中断して踊れない彼らに対し、「このままならロイヤルズの優勝」とか理不尽な宣告するけれど。

決勝戦前に、ストリートダンサーというチーム名に決まった時に、ラームさんが「友人だ」ってサヘージの兄を呼んでくるんだけど、その友人の意味が、インド映画あるあるの「友よ」なのか、本当に昔からの知り合いの意味だったのか判らなかった。

サヘージがロイヤルズで踊ることに後悔しはじめて、スタジオで一人おどっているところに、お兄さんがやってきて松葉杖をはずして、上半身だけで踊るシーン。この時点でも兄は、ロイヤルズをやめろとは言わないんだよね。かわりに「(お前の)心にしたがえ」ってアドバイス言うだけ。
ロイヤルズの上着をきた姿を初めて見せた時の弟を、彼はどう見ていたかとか一切口にしない。

大会のシーン。
対戦相手としていくつかチームが出てくるんだけど、どれも個性的で短いながらも見ごたえあるダンスがいくつも見られた。

空港で別れたメンバーのうち、バスで再会したアムリンダーくん。ちょっとムリダンガムのピーターくんみたいな感じだった。
シク教徒としてターバンまいてイギリスにやってきたのに、不法滞在の移民として目立たぬよう身分をかくすためにターバンを外し、髪を切らざるを得なかった彼。最後に誰かにもらったであろうニットのチョッキみたいなのを着ている。描かれなかったシーンで、色々あったんだろう。

最後の移民支援の団体、シク教徒云々って日本語字幕あったけれど、あっという間だったのでこの辺りの歴史背景、情勢なども判るときっともっと理解が深まったんだろうな。