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『SNS少女たちの10日間』 子どもにスマホを持たせるなら、知っておくべき事実を描いた映画

3人の12歳の少女のSNSに10日間で、2,458人のオオカミたちが
言葉巧みに、時には脅迫しながら、現代の子どもたちへの性的搾取の実態を描いたドキュメンタリー

『SNS 少女たちの10日間』

が、すごかった…いや、ヤバかった。

映画の途中から、頭がボーッとしてきて感覚が遠のいていった。
性的搾取って、別の国の話、とか家庭環境が大変な子が遭っている、という遠い話ではなくて、試写会の参加者らの感想にもあるように
「これ、普通に日本の日常で全く同じことが起こってる」

そして、今日の結論はもう、一言。
観て!(特に子どもを持つ親)」


あらすじ

簡単に説明すると、この映画の監督らはインターネット上での子どもの性的な虐待について社会に問題提起をするために、
12歳に見える俳優(本当は18歳以上)をオーディションをして3人選び、
彼女たちに7つのルールを課した上で、偽のアカウントを使いコミュニケーションを取らせる。

実はオーディションの時から、既に衝撃的なことが発覚した。
23人の応募者のほとんどが、ネット上で性にまつわる何らかの嫌な経験をしていたことだ。

冒頭にあるように、10日間の実験で2,500人近くの人間が、
「12歳」の少女にコンタクトを取り、中には上半身(胸)を見せるように、または実際に会おうと言葉巧みに仕掛けてくる。
実際、映画の中でも、彼女たちのSkypeのメッセージは、
彼女たちが対応しきれず、何人もの人が未読になっているのがわかる。

少女に群がっている男性の中に、映画のスタッフの知人がいたことから、
さらに話が面白くなっていく。
その知り合いの職業が…(衝撃)

ネタバレ読んで、映画を観にいかない人を増やしたくないので、
あらすじはここでストップしておく。

エンディングのSkypeの「タンターンタン♫」というあのコール音が
さらになんとも言えない気分にさせる。


暴力直接ふるってないのに性暴力?

この映画のことがもっと知りたくなって、パンフレットを購入。
その中に、恥ずかしながら私が感じていたことを15歳の少年が見事に言い当てていた。
「エロ画像見せられるだけで性暴力?」
別に直接的に傷つけてないのにね。なんで?

この「暴力」の意味はこの映画を観たらわかる、というか体感する。
・モザイクがかかっているけれど、露出した性器の写真や動画が何十枚も出てきたり
・優しい大人の顔をして上半身裸になるよう、要求したり、
・上半身裸の写真(合成)をばらまくぞ、と恐喝したり…
それを見続けたことにより、冒頭に述べた「頭がぼーっとする」感覚。
私の心は傷ついていたのだ。
(10日間リアルに立ち続けた俳優3人は本当に大変だったと思う。)

自分が12歳だったら、と仮定して12歳の自分と重ね合わせてみると
・絶対親には言えない(怒られる以上に悲しませたくない)
・でも、上の人に興味を持たれるって私って魅力あるんかな…?
と、12歳では、自分のとった行動の影響がきちんと想像できないお年頃なので、刺激的な方向に流れてしまいそうな気持ちは正直わからなくもない。


性暴力って実は、とても身近に存在している

思い出したことがある。
大学1年生の時に出会った友人が
「高校生の時の彼氏は妻子持ちの40代だった」
と言っていたことだ。
不貞のことはさておき、17歳って法律でダメなんじゃない?と思って調べたら、法律上日本の性的同意年齢は13歳以上。
明治時代から変わってないらしく、日本、やばくないか?
(ちなみに金銭の授受を伴うと犯罪です。ブランド物買ってもらってたらしいけど…)

いつの時代も危険は身近にあるけれども、
今回の映画で、SNS上で被害に遭うことは「特別な子」ではないということを痛感した。
さらに、今の子どもたちの中には、自分の裸の写真を送信することは、一種のスリルのような感覚を持ったり、小遣い稼ぎ、また、友達に仲間外れにされないための、防衛手段にもなるケースもあった。


監督らが意図した通り、この映画によって国内(チェコ)では社会的な関心が非常に集まり
・警察が動いて裁判にかけられ、判決が出た
・行政機関が動いて、小学校3年生から性教育を取り入れようという動きがある

国を動かすくらい、この映画には衝撃的な映像と展開がある。


この事実を知った自分たちには何ができるのだろうか?

俳優も含め、映画の製作者や、試写会参加者は、
親子が話し合い、相談できる環境を普段から醸成しておくことを挙げていた。
間違いない。絶対に必要なことだ。

しかし、思春期の子ども全員が親と相談できる環境を作ることは難しいだろう。
高校生には全校集会でも、保健体育でも、特別授業でも、104分使って鑑賞会をすることを提案する。
前出の15歳の少年は、観賞後
「ヤバそうになった友達がいたら、その子に観ることを勧める」と言った。
本当は、ヤバくなる前に、一部の大人に高校生の君らの存在は、あのように映るのだと知っておくべき知識として学校全体で行動するべきだ。
一度見れば、万一、危険な場面に出くわした時に知識が役立つ時が来るだろう。

残念ながら、15R指定のため中学生は鑑賞できない。
ただ、知らない大人と気軽につながることや
自分の裸の写真を他人に送ることで、
何が起こるのか、自分や周囲がどんな気持ちになるのか、といったことを
考えるきっかけになる学びを提供することはそんなに難しくないはずだ。


終わりに

緊急事態宣言が出てしまい、該当都府県は映画館が閉鎖になってしまったが、時期をずらしてでも、ぜひ上映をして頂いて、たくさんの方に観ていただきたい。
私は、公開翌日にミニシアターで鑑賞したのだが、前列と二列目以外、ほぼ満席であり、注目の高さを感じている。

映画に一人だけ、性的搾取目的ではない大学生がいた。(途中で顔のモザイクも取れた)
そのシーンで、世の中全ての大人が、オオカミではないことを伝えているのだろうけれども、映画館を出て駅に向かう途中、普通の顔したすれ違う人たちの中にも、オオカミがいるのではないかと少し恐ろしくなった。



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