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結局は、すべてが_「愛は愛は愛は」

須磨のあいうえむという喫茶店の二階で月に一回開かれている詩の教室に通い始めたのですが、
この間行った時、
先生の福永祥子さんから
「これ、あなたに渡そうと思って探しておいたの!」
と言って渡された本がありました。
それがこの、時実新子さんの句集「愛は愛は愛は」でした。

赤の地に黒のハート、しかもちょっと歪というのか、
筆で塗りたくったような形。
そこに白抜きのタイトル。
おお、かっこいい。
というのが手に持った時の一番の印象でした。
私はハートのモチーフがあまり好きではないのですが、
これはいい。
すごく好き。と思いました。

普通の単行本よりも少し小さいサイズで、
そのサイズ感もデザインとしっかり嵌っていていいです。

この句集には、
未発表のものも含めて352句が収録されています。

文字数にすれば、とっても少ない一冊なのですが、
満足感が物凄い。
さっき読み終えたのですが、
剥き出しの心臓をあげると言われたくらいのどぎつさと、
幾重にも重ねられたベールの向こうからの声しか届かない、というくらいの上品さ。
それなのにどこか蓮っ葉な笑い声が聞こえてくる。
どこまでも時実新子という人の川柳は魅力的でした。

ぎりぎりの愛へ向かう心境と、
家の台所や居間がつらなっている。
湿った胸の肌の感触と、
相手への愛情の深さが掘った谷の深い影が同居する夜。
そういった相反するようなものが、
十七音のなかに存在していて、
それが352句もあったら、なかなか読み終わらないのでした。

感想をあれこれ書いても、まだ内側が重たいくらい。
川柳は本当に面白い。

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