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あなたについて考えた詩

海の先

海に着く
その先に
似た姿の
あなたが
笑った

たったひとつ
おちたくらい
なみだで倒れて
流れていった
あれは鈴のように
鳴いた

立ち揺らぐ
その姿が
うつくしく
うつろに極彩色で
目の奥が
暗く ゆるむ

あなたが 吹きつけ
やがて立った波に
白く割れる
私の時間を
貝がらにして
砂に濾して
遠く
遠い
唄にまざっていく

海に着いた
その先に
遠ざかる今を
やっと越える


その間に吹く風

あなたが苦しいとき
あなたをおもうだれかが
ちがうくるしみを抱える

愛が何もかもは救えなくても
何かひとつを必ず救えるものなら
良かったのに

あなたにしかたどれない苦しみを
他の誰も追いつけないから
わたしたちは とてもくるしい

奇跡が追い付いても
希望が縋り付いても
止められない場所に
あなたは いく
それがとてもくるしい

あなたは しっている
だから
いわない
そんなあなたを 遠く遠くても
見ているから
わたしたちも くちを噤む

ただ 風が吹いている


おいたひかり

どんなときでも
これはお守り
あなたのわらった
くちもとはおぼえてる
そのまわりの
やわらかで すこし はしゃいだ空気も
それがとても はじけ飛ぶ瞬間の しゃぼんの色だったことも

あなたは 目を伏せる
いつも静かに
手をふってくれても
手をかしてくれても
その目は静かに伏せられる

どこまで深く覚めていっても
あなたは彩ったくちもとをのこす
にごった光はすくって とどめて
手の届かないところに しまわれて
あの 新しいものが生まれる直前の光を
くれようと てっしていた
日々が
わたしにくい込んで 今も
ここには
あの くちもとがのこる
あなたはいつも
静かに 伏せて



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