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夏に海の前に座り込んで書いた詩

海に立ち

あおく みどりの海原に
島のような船
影のような島
砕かれた石が光を返す
波音になぶられていると
ふと 自分自身が海に沈んでいるような
錯覚をかぶる
たましいが削られ
ゆたかになっていく
その最中に 遠く
潮の香りがふくらんだ

海に撫でられる

海を前にしていると
私は無数の点のうちの
いち
だと思えなくなる
世界は点描ではなく
あくまで混ざり合うものだと
どこまでが私の手で
どこかがこの岩の温もりか
あの青と
あの青の
別れるところはあるのか
船に海は抱かれ
海鳥はあやされる
撫でられる岩の上に生きる緑は
水面を通る光にとける酸素に
生かされる
風の音と波の音が重なり
その上に工場の機械音が並び
そこにそっと
私の黒いワンピースのひるがえる音が
忍び足でくすぐる

止まらない水の
直中に居る
解けていき
そして
整いながら
流されていく
そして
私の身を打つこの音は
つま先を押し付けてくる
いつのまにか少し窪んだ
この水はそれを埋めるために
止まらない

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