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雪の降った日に書いた詩


どうして 声に出して
貴方を呼べたら
ただ それだけなの
願いが連なって
あがないがたい
ものものを しめあげている

わたしのものなど
ひとつもない
貴方のものなど
どこにもない
欠片ばかりが よりそって
こんなにもうつくしい

だから 声にだしたい
ただ 鋭い欠片を
喉の奥で 腐らせるだけだとしても

小舟

小骨で作った 舟を寄せる
雪が ひたとつれそっている


果てのひと

とおい とおいと 鳴る
おおい おおいと うたう
あの手は白いか
いつかは赤に
あの子は白いか
いつかは百に

あーん あーんと 泣く
いつか いつかと 零す
あなたがほまれに
こころの果てで
あなたが 一粒から立つ
そのひとはだに 触れる


雪も下りない

雪のあとをたどる
アナタの甘い穴
たどれば 匂いはのこる
ワタシの細くなる指先を呼んで
知っているのはアナタだけ
穴だらけの ワタシは砕いて
知っているだけのワタシを
アナタの穴に落として
深く 含んで
消えてしまうくらい
アナタにあえたなら
雪が溶けても必ず
雪が止まずとも必ず
アナタが生まれる時
ワタシの指先が埋まる場所
タガイだけを結んで
深い 
望みよりも濃く
絶望よりも粗く
辿った
アナタの閉じた喉の奥

雪の盃

雪の盃をかわせたら
わたしもアナタになれたかしら
唇の熱が同じになれば
その肌に寄って白く変ずれば
どこからか同じになれたかしら

うつくしい音がする
どこか遠い日に目の前できいた
もうどこにもない

ふと 気まぐれに降った
また雪の盃はつくれなかった


雪はいつも新しいにおいがする
遠くの音を覚えていて
近くのものをぼやかしていく

雪はどこでも目を惹いて
その冷たさで伏せさせる
彼方を知っている その軽さ

雪は喉を通り抜け
ふりつもるところをえらべない
さいはてに立つ 
その肩にさえ重く 重なることしかできない

わたしの今

さまよったかわりに
とどまった

とどかないかわりに
つみあげた

つながれないかわりに
つづいてきた

つたえられないかわりに
うけいれられた

あなたがいきたさきに
わたしのいまはいきて


2021.1.19


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