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雨が降っているな、と書いた詩

ただの手

あなたは ただしくて
ただしく ひとりで
あなたは あかるくて
ただただ たんいつに
あなたは はげしくて
ただならぬ こげあとだ
あなたは あなたであろうと
たくさんを みたした
いくつもの かんぺきを
たったひとつ あろうとした
あなたがおとした影に
ひかりはのみこまれて
どこにも でぐちはない
あきらめがつくのなら
その手をただ手として
はらいおとしてしまえたら


あした

あした
また、あした
この喉がもちあがる
ああ どの目が
私を 見送ってくれる
外を指さす
それが正しい
だから正しいことを
私は踏み荒らして
また あした
また いつか
いつの日か
どんなものを加えていっても
すべてのみこんで もう明日


咲きあれる

かさねたものが 愛だと
知った顔はいう
この身から あふれては
あなたを充してくれると

ふと
あてがわれた温もりが
もしかしたら 愛かもしれないと
すがりつく手はこぼす

そうかもしれない

そうだったかもしれない
も、あきらめているくせに
あなたが愛だったと
失った片手で探す
足りないことも失った
私は私でもう充分になっていた

ああ
たしかに
私が愛そのものに
醜く、うつろい
ひくつに焦がれ
大声でわめきながら
伸ばしたたゆびの先から
花弁にかわる
あわい色という色を灯した
爪先がばらばらと割れていき
名もない草花にうまる
これがたしかに と
うきあがる

雨中

雨の高さを見上げるとき
故郷の青を視界は探す
あの空といたわりあう
やさしい山の肌
深く 奥まる緑
触れようと請えば
ふくらんでやわらかく迎えてくれる
雨音がはずみあって
互いの音をまた高くはじきあう
古い記憶だと言うのに
目の前の色より鮮やかな
この背をそっと 真っ直ぐに返してくれる
あのしなやかな力まで
ここに呼びよせる
この近しい 雨の日は

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