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あなたのことを考えて書いた詩

見送らない

わたしが あなたを 好きなのは
わたしと ともに 遠退いてくれるから

どこまでも
どこへいっても

だれより 遠くへ
ともに 背を送る


貝がら

あなたが鳴った
だれが そのゆびに触れたの
あなたにとどいた灯が
ゆらゆらゆれて
どこからも やさしく
かげがやって来る
瞳のなかで
残骸がきらめいて
おわりのない憧れ
かなしみや さみしさをはためかせて
立ち続ける
背中がわたしに焼きついた
鳴りおわった音は ひろった手の中で
ちいさく乾いて 貝がらになった


似ていくために

誰の真似もしないまま 生きてはいけない
わたしの中には あなたを真似た私がいて
君の真似をした 私がいて
きっとかさなって生きてきた間に
いいな、すてきだな、すきだな、きらいだな
ふかいだ、ふゆかいだ、にくにくしい
いらだってしまう 誰かの行動が
うごきが 詰まっている
それを選んだのが 私のわたしであること
あなたのなかの一点 真似た
その一点が私の生き方の方向だ
あなたがいて だから私はよりわたしになった
私の好きなわたしになれた
あなたの中でも きっとわたしはいて
あなたの真似をした私を
あなたは感じてくれる
それをどう伸ばして 何に結ぶのか
それがあなたなんだ
わたしはいて あなたもいた
その事実すべてが 証明で 
それは ここに生きてるだけで叶っていた
きっと ふたりは 似た顔をして笑っただろう


在ることの影

わたしは あなたの
味方にも 敵にもなれない

わたしは あなたの
重荷にも 古傷にもなれない

わたしは
あなたを さいごに抱く土にも 水にも
たどりつけない

あなたをつつむ
春にも 雨にも
なりはてない

わたしがつむぐのは その足跡
その沈んだ淵に差す影

あなたの 世界にあたえた影響
そのたった一瞬に

わたしは居た



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