マガジンのカバー画像

余情

56
小説。 あなたに一目会うために十年を繰り返すわたしのお話し。
運営しているクリエイター

2022年4月の記事一覧

余情 23 〈小説〉

 試験勉強をいっしょにしましょう、と言って連れてこられたはずなのに、結局は本を読んでいる…

とし総子
2年前
3

余情 22 〈小説〉

 少し、心配していたの。  そうあなたのおばさんは口を開いた。私は飲み干したホットココア…

とし総子
2年前
3

余情 21〈小説〉

 街は粛々と秋を受け入れようと動いていた。ショッピングモールの中のマネキンたちが一斉に肌…

とし総子
2年前
5

余情 20 〈小説〉

 かわいい後輩は、夏休みの間、私をよく呼びつけた。  暑くて、溶けてしまいそうな光の中、…

とし総子
2年前
2

余情 19 〈小説〉

「私とは、本当は会いたくなかったんじゃない?」  あなたのおばさんは、やわらかく本心を…

とし総子
2年前
6

余情 18 〈小説〉

 後輩の家に寄るようになって、彼女の家族とも話をするようになった。 二人だけのときは、彼…

とし総子
2年前
3

余情 17 〈小説〉

 あなたのおばさんが、会わないかと声を掛けてくれたのは、夏休みが間近に迫ったある日のことだった。  彼女は、私の母と連絡を取り合っていたらしく、 「今度の日曜日に会いたいそうだけど」 と切り出してきた。  あの日―あなたが亡くなり、お別れをするために出掛けたはずが、倒れてあなたのおばさんに夕方近くに送ってもらった日―以来、母は、あなたのことも、何故倒れたのかも、彼女との関係も聞かれたりはしなかった。それはきちんと大人同士が会話を終えていたからだったのかと、今さら気付いた。 「