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鬱雨

精髄から中枢に声がかかる
「一度帰って解受したらどうだ」
そうだなと思った
それなら帰るべきだ
支度をして荷物を持って扉に挨拶をした

日は待ってはくれないぞ
急いで向かおう
切符を買って乗り込んだ
さぁさ向かおう
日は待ってはくれないぞ

隣の席から尋ねられた
「お父さんとお母さんが夜に喧嘩ばかりするの」
「寝ぼけたことばかり言ってちゃいけないよ」
「あぁ 眠いな」
「違うのよ テレビが言っていたのよ」

到着の放送があったので新聞を折り畳んでプラットフォームに降り立った
「やぁ 良い空気だなぁ」
両手を広げて息を吸うと黒い煙が肺に沢山紛れ込んだ
咳き込む なんたる技術の美しさ!

「おや」
灰色の空からは雨粒が降り注ぎ始めた
お天道様も水やりの時間らしい

そうだ羊羹を手土産に持ってきたのだった
外に晒された木製のベンチに座る
綺麗な透明たちが楽しそうに手元に舞う
「そうかい 嬉しいかい」
うん と返事が聞こえた

さて一口頂こうと添え付けの竹串を差し込んだ時
駅員がやって来て腕を掴んで社会の下に連れてかれた
「何をしているんですか」
「戯れてるんだよ 久しぶりの家族との時間さ」
「風邪をひきます」
「なぜ」
「こんな大雨に外にいて ずぶ濡れではありませんか」
「祝福だよ どうしてそんなに嫌がるんだい」
「家は」
「ずっと向こうさ」
「お客様 もしかして酔っていらっしゃる」
「まさか」
「ご家族にご連絡しましょう」
「その必要は無いよ」

これから 帰る のだから

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