車旅

前の職場の探偵仲間でほったらかし温泉に行った。
メンバーは私含め4人。
前いた会社で、全員不遇な扱いを受けたことにより仲良くなった。
それでもお互いがお互いを少し馬鹿にしているので、マウントの取り合いになる。
ただ全員、馬鹿にされてもヘラヘラしているので、なぜか心地がいいそんな人たち。

1人は、前日まで30時間ぶっ通しの現場に入ってて、いきなり1時間半の大寝坊をかました。
「遅れてすいません、きんにくバスターだけは勘弁してください」ってずっと言ってた。
そういうノリがあるのかなと私は黙ってたが、他の人も黙ってたので、そんなノリはなかったのが怖かった。
最年長のおじさんが車を出してくれた。
車を最近買い替えたらしく、意気揚々とサンルーフを開けてくれたが、直射日光が暑すぎてものの1分で閉めてたのが、笑いを堪えるのに必死になった。
ハンドル握ると性格変わるタイプで、小鳥呼んでのかってくらい舌打ちしてて怖かった。
もう1人は最近起業したらしく、なんの会社か聞くと、自分で作ったカードゲームを売ってる会社だった。
ポケカ、遊戯王、MTGを喰おうとしてて、目がマジで怖かった。

昼ごはんをほうとう屋で食べることになった。
カードゲームと小鳥おじさんは、「30超えると脂っこいものが食えない」と熱弁していたのに、天丼食べてて怖かった。
きんにくバスターは、私が着ていた白いニットにほうとうの汁を飛ばして、ニヤニヤしながら謝ってて怖かった。

ほったらかし温泉はあっちの湯、こっちの湯が選べて、「こっちのあっちの湯にしましょうよ」「いや、あっちのこっちの湯にしよう」というしょうもないのが楽しかった。
ただ、4回目ぐらいでカードゲームの、「ここにきたら全員やるやつですね」という一言でめっちゃ萎えてあっちの湯に決めた。

ほったらかし温泉、今まで行った全ての温泉の中で一番良かった。
広いしあんまり人いないし、晴れてて景色も良いし、程よく涼しくて。
頭に被る笠が自由に使えて、流浪人が人知れず温泉にきてるみたいな小芝居もできる。
笠をはらって、「何やつ」っていう遊びをしていたら、カードゲームが「芸人しないでくださいよ」って言ってきたので、めっちゃ萎えて笠を元あった所に戻した。
途中和風のお墨を入れた方が入って来られて、それまではしゃいでたのに、全員黙りこくってそそくさと上がったのが情けなかった。
ただでさえ刈り上げってだけで怖いのに、和風墨のコンボでより怖かった。
お墨があっても入れる温泉なので、みなさんもぜひ。

休憩所で、実際にカードゲームが作ったカードゲームをみんなでやってみた。
馬鹿にするにはやけにデザインのクオリティが高いので、なんて言えばいいのかずっと難しかった。
素晴らしい景色を見ずに人が作ったカードゲームやってるの、意味がわからなすぎて面白かった。

帰りの車中で、それまでカードゲームがあまり本音で話さないことに気づき、みんなでそれを指摘した。
すると、「二十歳以前の記憶があんまりない」と割とマジで言ってて怖かった。

半日ずっと、なんか怖かった。

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