相乗効果


何かをしている時に、たまたま別の何かもそれに近い現象になったり、後押ししたりして、小さい火が気づいたら炎になるみたいなことがある。

電車で本を読んでいた。
読んでいたのは、重松清の「きみの友だち」。
(いつも頼んでいたのはチキンライス、みたいだなと読み返して思った)
端的に言うと泣ける。
「みんな」とつるむべきか、1人の「友達」と思い出を作るべきか。
友達の意味とか意義を考える内容で、小中学生のあの不穏な生活を思い出して、とにかく心に来る話だ。

残り20ページ程となり、物語は完結に向かっていた。
私はすでに泣く一歩手前のところにはいて、電車ではなかったら余裕で泣けるほどだった。
私は吊り革に掴まりながら、もう片一方の手で本を開いていた。
目の前の座席は埋まっていて、横にも同じように立っている人がそれなりにいた。
急に泣き出したら、怖がらせちゃうかなとの独自の見解で、ギリギリで耐えていた。

物語の最後は、それまでの話を総括しつつ、唯一の友達の死を偲び、それぞれの成長を見届けるといった内容で、もうそろそろ耐えられないなと感じていた。
私は電車に乗って読書をする時、なるべく音を統一したいので、イヤホンで音楽を聴くのだが、ちょうどそのとき流れてきたのが、「君が思い出になる前に もう一度笑ってみせて」という歌詞だった。
読んでいる内容とその歌詞が、絶妙にマッチした。
急に映画を見てるぐらいの臨場感が付与された。
涙が溢れてしまった。
抑えろという命令を飛び越えてしまった。
目の前に座っていた女性が怪訝そうな顔をしてこちらを見てきた。
なんかめんどくさくて、構わず本を読み切った。

後で調べると、スピッツの「君が思い出になる前に」という曲だった。
アプリから適当に流すBGMから、私の生涯忘れられない一曲になった。
今では、バイト先のスーパーで流れるこの曲のインストルメンタルバージョンで泣きそうになる。
人間みたいなことしてしまって、申し訳なくなる。

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