野球選手がするべきウォーミングアップ
「どんなウォーミングアップをすればよいの?」「自分に合ったウォーミングアップの方法が分からないなぁ?」
このような疑問を持っていませんか。
この記事では、トレーナーの筆者の経験・知識を基に野球選手に関するウォーミングの疑問を解決します。
ぜひ、最後までお読みください。
ウォーミングアップはなぜ行う?
ウォーミングアップはスポーツをした方であれば、全員がしたことがあるでしょう。
しかし、なぜウォーミングアップを行うのか、どんなウォーミングアップがいいのかを深く考えた経験がある方は少ないと思います。
私は高校生まで野球をやっておりましたが、ウォーミングアップについて詳しくなく適当に走って適当にストレッチをするだけでした。
トレーナーとして勉強するなかで、ウォーミングアップの奥深さを学びました。
そこで、少しでも皆さんに私が学んだ知識が役立つようにウォーミングアップについて解説させていただければと考えております。
ウォーミングアップの効果
ウォーミングアップで得られる効果は、以下の通りです。
筋温の向上
ケガの予防
身体・心の準備
これらの効果を得るために、ウォーミングアップを実施します。
筋温(筋肉の温度)とケガの予防については、後で詳しく解説します。
身体・心の準備について説明させてもらいます。
いきなり試合に入っても心が準備できていないと、いいパフォーマンスは発揮できません。
大事なプレゼンがあると考えてください。
プレゼンの資料は完璧に準備しましたが、発表会場に開始時間ギリギリについてしまったとしましょう。
このような場合は、心が準備できずによいパフォーマンスが発揮できないと想像できます。
ウォーミングアップも同様で、今からベストパフォーマンスを出すために徐々に心を準備する必要があります。
ウォーミングアップの6つの基本
ウォーミングアップには、6つの大事な要素があります。
筋温上昇
筋刺激
脳刺激
競技特性
時間
強度
これらの要素を理解し、それに合わせたメニューをすると自分に合ったウォーミングアップになります。
それぞれについて詳しく参考するため、参考にしてください。
➀筋温を上昇
ウォーミングアップでは、必ず自分の筋温を上げるようにしましょう。
筋肉の温度が上がると、発揮できる筋力が上がります。
また、筋肉の粘性も低下します。
粘性と聞くと難しいと感じるかもしれませんが、簡単にいくと元の状態に戻ろうとする力です。
つまり、
粘性が高い→筋肉が伸びづらい状態【すぐに元に戻ろうとする】
粘性が低い→筋肉が伸びやすい状態【すぐに戻ろうとしない状態】
といえます。
野球というスポーツには、走ったり身体を捻ったりと筋肉が伸ばされる場面が多くあります。
そのため、筋温を上昇させ粘性を低くさせましょう。
②筋刺激
筋肉に刺激を入れるようにしましょう。
ここでいう刺激とは、
筋肉に力が入る刺激
筋肉が伸びる刺激
の2つです。
具体的な方法は、
筋肉に力が入る刺激→ダッシュ・メディシンボールスロー
筋肉が伸びる刺激→ストレッチ(アクティブ・バリスティック)
です。
野球はパワーが求められるスポーツであるため、速い筋収縮は求められます。
また物にパワーを伝える(打者:バット、投手:ボール)ため、なるべく道具を速く動かす筋収縮をするとよいでしょう。
ストレッチにはゆっくりと伸ばすストレッチ(スタティックストレッチ)も重要ですが、それ以上に身体を動かしながら伸ばすストレッチ(アクティブ・バリスティック)の方が大事です。
20秒間筋肉が伸ばされた姿勢を維持するよりも、動かしながら筋肉を伸ばします。
代表的な例としては、マエケン体操です。
しかし、スタティックストレッチを行わないわけではなく、スタティックストレッチ後に身体を動かすストレッチをするようにしてください。
③脳刺激
脳を刺激するために、素早い動きや複雑な動きをいれるようにしましょう。
具体的には、
短い距離のダッシュ
ラダー
のようなメニューです。
野球では、止まるという動きが多くあります。
そのため、ウォーミングアップでも止まる動きを取り入れるようにしましょう。
④競技特性
ウォーミングアップでは、野球の特性を入れるようにしましょう。
野球をするのに、サッカーボールを蹴ったりボールをレシーブしたりする動きはあまり意味はありません。
ボールを投げるやスイングをする、また、トスバッティングをするなど野球に合った動きをしましょう。
また、野球の競技特性を正しく理解すると、全てのウォーミングアップの動きに活かせます。
例えば、野球で使われる筋肉を知るとその筋肉に合わせてストレッチができます。
詳しい野球の競技特性は、後で解説します。
⑤時間
ウォーミングアップをするには、時間を考えるのが非常に大事です。
ウォーミングアップに1時間・2時間かけてしまうと、疲労でベストパフォーマンスを発揮したいときに疲労してしまいます。
また、短すぎると十分に筋温は温まりません。
筋温の上がりやすさは気温により変わるため、私は以下のように考えています。
個人差があるため、この時間を参考に自分で調整してください。
⑥強度
強度も非常に大事です。
強度は、心拍数と筋肉への刺激の2つに分けて考えられます。
筋刺激は前述したため、ここでは心拍数の強度を紹介したいと思います。
心拍数は、試合で起こり得る心拍数まで上げた方がいいです。
野球は、心拍数が160~180分/拍まで上がるとされています。
そのため、ウォーミングアップでは160~180拍/分まで心拍数を上げるようにしましょう。
ウォーミングアップの順番
ウォーミングアップは以下の順番でしましょう。
筋温上昇
可動域確保
筋刺激
脳刺激
筋刺激
詳しく解説していきます。
➀筋温を上昇
最初に筋肉の温度を上昇させましょう。
筋温を上げる方法は、受動的と能動的の2つの方法があります。
受動的:お風呂やサウナなどで筋温を上げる
能動的:身体を動かして筋温を上げる
ウォーミングアップでは、能動的に筋温を上げるのがおすすめです。
そのため、ジョギングやランニングをして筋温を上げるようにしてください。
②可動域確保
可動域を確保するために、ストレッチをしましょう。
ストレッチは、以下の順番にストレッチするのがおすすめです。
スタティックストレッチ
アクティブストレッチ
いきなり、アクティブストレッチからしてしまうと筋肉を傷めるリスクがあるため、注意してください。
③筋刺激
次に筋肉に刺激を入れるようにしましょう。
具体的には、
最大パワーの発揮
バリスティックストレッチ
の2つを行うようにしてください。
④脳刺激
次に複雑な動きをして、脳に刺激を入れましょう。
また、音や動きに反応して瞬間的に動くエクササイズも入れるとよいでしょう。
⑤筋刺激
また、筋刺激?と思うかもしれませんが、最後に全力のダッシュを入れてください。
全力で走る機会は野球で多くあります。
肉離れの予防のためにも、多めに入れましょう。
正しいウォーミングアップをするために知っておきたいこと
正しいウォーミングアップをするためには、野球という競技を知らないといけません。
以下の2つの点で詳しく解説したいと思います。
求められる動き
使われる筋肉
求められる動き
野球で求められる動きは、走・打・守・投の4つに分けると理解しやすいです。
走
直線走(22m)程度→盗塁
直線走(30m)程度→一塁までの距離
30mの直角走(60m・90mの2パターン)→二塁打・三塁打
この動きに加えて目でみた情報を判断する能力が求められます。
打
身体の回旋→力強いスイング
ボールとバットを当てる能力→ミート力
守
ボールとグラブの距離感を把握する能力→捕球能力
ストップ動作→守備体勢を整える力
投
身体の回旋→球速・肩の強さ
狙ったところにボールを投げる能力→コントロール力
このような動きや能力の特性があります。
使われる筋肉
野球選手で多く使われる筋肉の代表例は、以下の通りです。
ハムストリングス
大腿四頭筋
腸腰筋
殿筋群
腹斜筋群
広背筋
大胸筋
前鋸筋
肩のインナーマッスル
前腕屈筋群
この他にも多くの筋肉が使われますが、優先順位が高いのは上記になります。
個人の状態やポジション・既往歴よっては優先順位が大きく変わるため、相談できるならトレーナーや指導者に聞いてみてください。
野球選手向けウォーミングアップメニュー
野球選手向けの具体的なウォーミングアップを紹介します。
この内容を参考に、自分・チームのウォーミングアップを作り上げましょう。
➀ジョギング:5~10分
最初にジョギングをしましょう。
身体を温める目的と気持ちを少しずつ高める目的で行います。
自分の身体の状態(○○が張っている・○○に少し違和感がある)を確認するのも大事です。
②ランニング
次にランニングをしましょう。
ジョギングよりもペースを上げ、心拍数が上がるようにします。
筋温を上げて、次に行うストレッチで十分に筋肉を伸びるようにしてください。
③ストレッチ
筋温が上がったら、ストレッチをするようにしてください。
伸ばすべき筋肉は、以下の通りです。
ハムストリングス
大腿四頭筋
腸腰筋
殿筋群
腹斜筋群
広背筋
大胸筋
前鋸筋
肩のインナーマッスル
前腕屈筋群
また、
スタティックストレッチ→アクティブストレッチ→バリスティックストレッチ
の順番で実施しましょう。
④競技向け筋刺激
次に、野球に合わせた筋刺激をしてください。
肩のインナーや腹斜筋群に刺激をいれるエクササイズをしましょう。
⑤MBスロー
MBスローは、野球で必要なパワー系エクササイズです。
トレーニングとして実施するわけではないため、疲労にならない程度の回数で行いましょう。
具体的には、
バックMBスロー:5回×1セット
サイドMBスロー:5回×1セット
真下MBスロー:5回×1セット
をするようにしてください。
⑥ラン
次にランメニューをしましょう。
長くても100m程度、短くても30mは全力で走ってください。
野球は30~100m程度全力で走る場面があります。
そのため、最低でもこの距離を走る必要があります。
しかし、いきなり全力で走るのはケガをするリスクがあるため、徐々にスピードを上げましょう。
具体的には、
5割→8割→10割
のスピードで走るのがおすすめです。
⑦方向転換系ラン
次に方向転換系のランメニューを行いましょう。
野球では、止まり捕球体勢を作りボールを捕る場面が多くあります。
※走りながらボールを捕る場面もあります
そのため、止まるという動きが非常に大事です。
具体的には、
45度
90度
180度
の方向転換&ストップ動作が必要です。
※バック走をいれるのもおすすめです。
⑧ラン
最後にもう一度全力で走るようにしましょう。
リードの姿勢から盗塁の動きで全力で走ったり、単純に全力で走ったりとさまざまな方法があります。
チームとして盗塁に力を入れている場合は、盗塁の姿勢で全力で入る
守備に力を入れているなら、グラブをつけて全力で走る
など自チームに合った方法に合わせてください。
そして、キャッチボールやトスに入っていきましょう!
最高のウォーミングアップは個人アップ
ここまで長々とウォーミングについて書いてきましたが、全員が同じ内容ではよいウォーミングアップとは言えません。
なぜなら、ポジションや状態は個人個人で違うからです。
そのため、ここまでの情報を参考にしていただき、自分のウォーミングアップを作り上げてください。
しかし、1日で自分に合ったウォーミングアップを作るのは不可能です。
日々の練習から試行錯誤し、トライ&エラーを繰り返す事で本当に自分に合ったメニューを作り上げられるでしょう。
チームで考えるなら個人→全体の順番で!
チームでウォーミングアップを考えるなら、個人ウォーミングアップの時間を作り、その後全体のウォーミングアップをしましょう。
全体ウォーミングアップは、脳刺激系のエクササイズや塁間全力疾走などメニューを決めてください。
その内容を事前に選手に伝え、そこまでに身体を仕上げるように指示しましょう。
そのため、ウォーミングアップの時間が30分あるとしたら
個人ウォーミングアップ(20分)
全体ウォーミングアップ(10分)
のようにしましょう。
また、個人ウォーミングアップの時間が人それぞれ違う場合もあるでしょう。
その場合は、全体ウォーミングアップの開始時間だけを決め、それまでに自分の身体を仕上げるように指示するのもおすすめです。
自分のウォーミングアップを作ろう!
ウォーミングアップには、さまざまな考え方がありますが、正解はありません。
なぜなら、一人一人ポジションや状態が異なるからです。
そのため、本当によいウォーミングアップをするためには個人でウォーミングを作り上げる必要があります。
ぜひ、この記事で紹介した情報を参考に自分のウォーミングアップを作り上げてください。
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