屍鬼という作品

皆さんは屍鬼という作品をご存知ですか?内容としてはよくあるゾンビもの?ヴァンパイアもの?みたいな感覚なんですが、めちゃくちゃ日本の風土に落とし込むことで丁寧にホラーにしているんですね。今回はこの屍鬼という作品の特に、比較的ハッピーエンドだった?アニメの方を語りたいと思います。

まずはざっくりあらすじだけ。舞台は陸の孤島のような閉じた集落。この集落には1つだけ大きな洋風の城があります。(最初、ラブホかなんかの廃墟だと思いましたが、アニメ見てる限り違うっぽいですね。改造したのかも知れませんが)この村に都会的な家族が城に引っ越してきます。主人公も村だと結構浮いてる都会的な家族みたいな感じです。(多分、主人公だと思ってるけど、一番活躍するのは村医者なので、多分違うかも。)で、このあとの流れはバタバタと人が死んで、違和感を感じて調べると、吸血鬼に乗っ取られそうになっていて・・・という結構王道の吸血鬼対人間のコンパクトな戦いの話+ホラー要素みたいな感じですね。

さてここからが本題。この作品のポイントは3つぐらいあると思うんですが、1つ目がリアルな田舎を視聴者に訴えかけてるとこですね。なにがリアルって地方の町医者、寺がかなり中核なのが非常にリアルです。また、道が複数ないから一個潰れたら終わりみたいなとこもリアルです。あと、冒頭に出てくる派手な子が浮いてるみたいな感じで表現されているんですけど、マジで田舎で都会情報手に入れて、憧れてなにかをするってめちゃくちゃ浮くんですよね。それが外来の人なら受け入れられるんですが、在来の人であれば、結構変な人、変な子みたいな目で見られます。良くも悪くも超保守的ですね。また、ときどき出てくる、他者を工務店の・・・・製材の・・・みたいに職業+下の名前みたいな呼び方をするんですが、これもめちゃくちゃ田舎のリアルです。その職業の◯◯さんにこれを頼めばいいみたいな、小さな経済圏みたいなものが田舎にはあるんですよね。これ、舞台が多分20年ぐらい前だから、この頃は本当にこの景色は田舎の当たり前だったと思います。ただ、現在は高齢化などで、この光景は少し残るのみであると言えますが・・・

さて、2つ目。これは主人公と吸血鬼一味の外からのパーソナリティ性みたいなものの対比ですね。どちらも町外、村外から来た家族です。で、どちらも割と村に受け入れられています。割と田舎が排他的みたいなイメージあるんですけど、新しいものは割と好きだったりします。で、主人公と吸血鬼側のトップが家族に否定的か、肯定的かで一つ対比があります。ただ、利他的という点ではどちらも一致します。で、主人公はほぼ、個人での行動が多いです。しかし、吸血鬼サイドは誰かと行動することが多いです。これは特性もあるんでしょうが、対比なのかなぁと思ったりもできます。これも話が深くなっているポイントだと思います。

3つ目がホラーの要素、吸血鬼がその地域では民間伝承として根付いており、違和感を感じた住人がそれになぞられる点ですね。割とよくある手法だと思いますが、これが見事なんですよね。丁寧に成功している。最初はなにかが起きているんじゃないか?と視聴者は想像します。タイトルから、途中のおきあがりという伝承から、まつわる話が展開されることは理解していますが、どういうものか全容が把握できない。未知の恐怖を見せられながら進んでいく、この展開が本当に面白い。で、少しネタバレを含みますが、最終、おきあがり退治で人が人型の、自分たちと同類の見た目のものを殺すわけですから、ものすごく恐ろしく、禁忌的な行為なわけですが、これにより、もしくは、集団だからか、少しずつ狂っていくんですよね。この集団パニックのようなものも恐ろしさの一つであると言えます。

このように、なんとなく怖いものが見事に重なりあった恐怖のような作品なので、なにかしらの視聴手段があれば、もしくは、少し後味が悪いですが、小説版などを手にとっていただければありがたいと思います。


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