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"本荘こけし"が県の指定する伝統的工芸品に

こんにちは。秋田県由利本荘市でごてんまりを作っています〈ゆりてまり〉です。

今日はごてんまりではなく、本荘こけしの話題です。
というのも、なんとこのたび"本荘こけし"が秋田県の伝統的工芸品に指定されたんです!
おめでとうございます㊗️!!


※よく誤解されるのですが、本荘ごてんまりは令和6年1月現在、伝統的工芸品の認定を受けていません。
伝統的工芸品の指定を受けるには、およそ100年以上の歴史があることが条件の一つです。


この2024年の辰年に本荘こけしが伝統的工芸品の指定を受けたのも、なんだか運命的です。
本荘こけしの始祖と言われているのが河村辰治という人ですし、さらに現継承者の菅原修さんが昭和27年生まれの辰年です。
2024年、今年は本荘こけしがアツい予感ですよ!

今回はわたしが本荘こけしについて調べたことをまとめたので、良かったら最後までお付き合い下さい。


◯本荘こけしとは

本荘こけしは宮城県の鳴子にルーツがあります。
胴体に首をはめ込む「はめ込み式」の構造で、頭を回すとキイキイ鳴ります。
これが鳴子系のこけしの特徴です。
頭部の描彩は「水引手」(御所人形に由来する、前髪を水引で結んだ頭部模様)と言われるもので、前髪を水引で結んだところが赤い花弁模様で表されます。
一文字に描き出した長い眉、目は一筆(眼点なし)、口は小さく紅で描きます。
胴模様には「楓」「カスリ」「菊」「ナデシコ」「井ゲタ」などがあります。

本荘こけし

◯本荘こけしの歴史

本荘こけしの始まりは、旧本荘市の河村辰治だと言われます。
辰治は鳴子の高橋直蔵に弟子入りし、直接的には直蔵の弟子に学びます。修行しているうちに、箱根の流れ木地師で盆を挽く技術が非凡と言われた伊沢為次郎に出会い、手取式大車による大型盆類を挽く技術を学びます。
辰治は明治32年(20歳のときとも22歳のときとも言われます)に本荘に帰って河村家の養子となり、「河村木工所」を創業しました。
ろうそく立て、茶びつ、椀類、橋のらんかんの擬宝珠などの木地挽きのかたわら、こけしやだるま、鳴子笛などの玩具を作ったそうです。
そして鳴子系のこけしから独自のスタイル、通称「外鳴子」と言われる「辰治型」こけしを創案し、「本荘こけし」の源流を作り出しました。

辰治には長男・清太郎と次男・音次郎の二人の息子と、北原鉄造という弟子がいました。 
『秋田の民芸』秋田魁新報社 昭和58年によると、「本荘こけし」がこけし界で話題になったのは、昭和13年4月号の雑誌「展望」に稲垣武雄が「本荘こけし」として文献的に紹介したことがはじめてだそうです。
清太郎(明治35年〜昭和45年)が河村木工所を継ぎますが、昭和14年に応召されたため、留守を北原鉄造に託しました。
清太郎の死後は北原が清太郎の三男・守と相談して木工所の設備を借り受け、「本荘こけし」の製作に集中します。

昭和40年代後半から50年代前半にかけて、こけしブームがおこり、本荘こけしも本荘市の観光土産品として脚光を浴びます。
こけし作りに本腰を入れ後継者探しをしていたころ、昭和50年2月15日に北原が死去します。
本荘こけしを継承するものは守さんただ一人になってしまい、本荘こけしは一時途絶えかけました。
そこへ神奈川県鎌倉市で7年間木地修行をしていた菅原修さんが帰郷し、守さんの元を訪ねます。
「自分に作らせて欲しい」と頼んだのは、昭和53年に菅原さんが帰郷して間もないときのことだったそうです。
以後四半世紀ほど菅原さんが一人で本荘こけしの伝統を継承していましたが、現在では菅原さん含め4人の工人が製作しているそうです。


菅原さんとお弟子さんのこけし

◯現在の本荘こけしについて


現在本荘こけしを製作している工人の1人に齋藤祥子さんがいます。
祥子さんは菅原さんの弟子で、伝統的な本荘こけしと創作こけしの両方を作っています。
何度かお話しさせていただいたことがあるのですが、大変明るく可愛らしい方です。
ご本人のキャラクターをそのまま投影したかのようなこけしは、誰でも思わず「かわいい!」と言ってしまうような、明るく朗らかな魅力があります。

さらにモチーフが大変ユニークです。
寿司、コーヒー牛乳、あけび、しらす丼、メロン、ラムネ、チョコミントアイス、カルピス、ノアザミ、チューリップ、栗、ウサギなど。
彼女にかかればこけしにできないものは存在しないのではないかと思われるほど、実にバリエーション豊かなこけしを作っています。(やや食べ物系が多い気がしますが)
そしてなんと、以前には胴模様に本荘ごてんまりを描いたこともあるとか!


これだけ多くのモチーフを表現できるのは、描彩の腕が確かな証拠です。
並の腕ではやりたくてもできない領域ですよ。
祥子さんのこけしは大人気で、ナナカマド(木のおもちゃ美術館内のショップ)に置くとすぐ売り切れてしまうそうです。
本荘こけしが県の伝統的工芸品に指定されたこともあり、ますます争奪戦になりそうな予感です。

気になる方はぜひ、ご本人かナナカマドのInstagramをチェックしてみて下さいね!




◯参考文献、サイト
『秋田の民芸』秋田魁新報社 昭和58年
『秋田の宝・おらほの宝ーー地域の文化遺産発見ーー事業 お宝発見ハンドブック〜工芸技術編〜あきたの工芸』平成19年 秋田県教育委員会
『こけし伝統と美 心豊かな人形の世界と系統』西田 峯吉 1975年 池田書店
『子吉川風土誌』高野喜代一 1977年 秋田文化出版社
『秋田大百科事典』秋田魁新報社 昭和56年
「本荘こけし 四半世紀、一人で継承」『秋田魁新報』平成25年2月17日



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