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農業を自分事に ー農家が生み出すつながりー

秋田県大潟村。

かつて日本で二番目に大きかった湖、八郎湖を干拓してつくられたこの土地では、農業が盛んです。

そんな大潟村農家さんの1つに、「大潟村松橋ファーム」があります。

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大潟村松橋ファームは、米やネギ、アスパラガスなど約15品目の農作物を栽培しています。
小売店での購入や飲食店のほか、オンラインショップでも大潟村松橋ファームの野菜を味わうことができます。

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撮影場所:秋田県のお肉屋さん「メルカートわかば山王店」
季節ごとの野菜を購入できる。


そんな大潟村松橋ファームでは農産物の栽培だけでなく、農業を通じたコミュニティづくりもとても大事にしています。


農家がつくる日本酒プロジェクト

大潟村松橋ファームと秋田県五城目町の酒蔵「福禄寿酒造」がタッグを組んだこちらのプロジェクト。
そのコンセプトは”日本酒を通して人と人がつながる”こと。

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【農醸】
当プロジェクトで作られる日本酒。
お米のうまみが感じられ、雑味のない綺麗な味わい。
プロジェクトメンバーに参加すると、一般販売しない限定酒が届く。
※今期プロジェクトのメンバー募集は終了しています。
(購入・撮影場所:下タ町醸し室HIKOBE

そのコンセプトどおり、このプロジェクトではたくさんの体験・交流イベントが用意されています。

種まき・田植・稲刈りの体験で酒米づくりを一から経験する。
その酒米が醸され、「農醸」ができたら、みんなで完成披露パーティ。

体験は、プロジェクトメンバーはもちろんのこと、メンバー以外でも誰でも参加できます。
作り手と参加者、さらには参加者同士のつながりが広がります。

稲刈り体験

稲刈り体験の様子。
農醸に使われている酒米は、秋田酒こまちと改良信交の2種類。
飲み比べて酒米の違いを楽しむこともできる。
※写真提供:大潟村松橋ファーム

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農醸完成披露パーティ。こちらはメンバー限定イベント。
※写真提供:大潟村松橋ファーム

瓶の裏ラベルには掲載を希望するプロジェクトメンバーの名前がずらりと並びます。
「農醸」という名前もメンバーが名付けたんだとか。
メンバー全員でつくりあげた、まさに自分たちの日本酒です。

瓶裏ラベル

掲載を希望すれば、裏ラベルに自分の名前を記載してもらえる。
自分が携わった日本酒だと実感できる。
※写真提供:大潟村松橋ファーム


コロッケへの道

こちらは秋田県男鹿市のお肉屋さん「グルメストア・フクシマ」とのコラボプロジェクト。

グルメストア・フクシマの大人気商品、フクシマのコロッケ。

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こちらのコロッケには大潟村松橋ファーム産の野菜も使われています。

肉屋のフクシマがじゃがいも栽培を体験したり、農家の大潟村松橋ファームがコロッケづくりを体験したり。
お互いの仕事を知り発信しようと始まり、この過程を自分たち以外にも体験してほしいと企画されたプロジェクト、それが「コロッケへの道」です。

日本酒プロジェクトは大人が楽しめる企画ですが、こちらは親子連れに大人気!

じゃがいもを植えたり、収穫したり、作業後はみんなでBBQしたり。
日本酒プロジェクト同様、自分が携わったじゃがいもが大人気コロッケに生まれ変わる過程を、作り手と参加者同士でワイワイ楽しみながら体験できます。

お子さんにとっては食育にもなる、貴重な経験です。

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じゃがいも収穫体験の様子。
大きなじゃがいもを箱いっぱいに詰め込みます。
※写真提供:大潟村松橋ファーム

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【コロッケ食堂】
飲食店を貸し切り、自分たちのコロッケを味わえる人気企画。
フクシマの専務取締役・福島智哉さんが揚げたてのコロッケをお皿に盛りつけてくれる。
※写真提供:大潟村松橋ファーム


農家が生み出す価値

大潟村松橋ファームでさまざまな企画を実行している松橋拓郎さんに、農業を通じたコミュニティづくりについてお話を伺いました。

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【松橋拓郎(まつはし・たくろう)】
秋田県大潟村出身。
教師を志し大学では教育を学んでいたが、大学時代の経験がきっかけで農業に関心を持ち、北海道での農業研修を経て農家へ。


ー教師を目指していたとのことですが、どうして家業の農家を?

大学ではボート部に所属していて、その合宿で実家のお米を部員みんなで食べる機会がありました。
みんな「うまいうまい」って山盛りにして食べてて。
その様子を写真に撮って家族に送ったらそっちもすごく喜んでいたんですよ。

ー生の反応に触れたんですね。

元々自分の仕事が誰に対してどういう風に影響するのかわかりやすい仕事をしたいっていう気持ちがあって、だから最初は教師を志しました。
そういうことがもしかしたら農業で実現できるかもって思った一番最初のきっかけです。
農業を通してお互いに幸せになれるというのが実現できるんじゃないかと。

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ー生産者と消費者がつながるプロジェクトに多く携わっているのはこういう経験があったからですか?

それもありますが、元々イタリアのスローフード運動に興味があって、その考えもあるかな。


ースローフード運動のどういった部分に影響を受けたんでしょうか?

自ら主体的に関わること、参加することに意味があるという考え方があるんです。
消費者と生産者って分けないで、「共生産者」
ともに生産するという風な考え方。
この考え方が自分なりの農業としてのコミュニティづくりにつながっていったと思います。

【スローフード運動】
その土地の食文化や食に関わる環境、人材などを見つめなおし、守る運動。
ファストフードの台頭などによる食文化の崩壊を危惧し、1986年にイタリアから始まり、現在は世界中に広がっている。


ーそうして農醸やコロッケの道などにつながっていったんですね。

農醸もコロッケの道も、僕らだけでお酒やコロッケができるまでの課程をするんじゃなくて、みんながそこに関わって体験してもらえたらおもしろいかもと。
農業を自分事にしてほしいんです。
これは自分が収穫したじゃがいもからできたコロッケだとか、自分が関わった酒米からできたお酒だぞとか。
そういう気持ちに少しでも近づけてもらえるとしたらやっててよかったなと思います。

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農家がつくる日本酒プロジェクトの田植え体験。
参加者の方々が植えた酒米が日本酒になります。
※写真提供:大潟村松橋ファーム


ーそれが共生産なんですね。拓郎さんの目指す農業はどういったものでしょうか。

やっぱり食べてくれる人やお酒を飲んでくれる人に喜んでもらうのが一番です。
その喜んでもらうための方法はいくつかあると思っていて、その中のひとつとして農業を自分事にしてもらうとかコミュニティをつくるとかがありますが、品質の低いものを作ってコミュニティがどうこう言ってもしょうがないじゃないですか。
こちらとして目指すのは「いいものを作る」。
農家としてのものづくりを大事にしたいです。

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大潟村松橋ファームのショウガ収穫の様子。
秋田県でショウガを栽培しているところは珍しいとのこと。
フレッシュな味わいが特徴。


農家が出せる価値ってなんだろうと考えたときに、もちろん農産物の栽培がありますが、コミュニティづくりとかイベントの運営とか、農産物を加工してくれる人たちと一緒にブランディングしたりとかもあると思うんです。
農家としてどんな価値を出せるのかっていうのを見極めて、皆さんに喜んでもらえるように今後もやっていきたいですね。

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【大潟村松橋ファームHP】
大潟村松橋ファームのオンラインショップや農産物が買える・味わえるお店を知りたい方はこちら
【農家がつくる日本酒プロジェクトHP】
プロジェクトについてもっと知りたい方はこちら


【著:あきたどまんなか宣伝局(秋田県秋田地域振興局)】