オンラインヨガの受難

ヨガの先生と知り合い、オンラインのヨガを体験させてもらった。ツールはもはやインフラと化したZOOMだ。
オンラインの坐禅会には参加したことがあるが、ヨガは初だ。

坐禅とヨガで一番違うのは、そのバリエーションだ。
坐禅であれば毎回お決まりな形に沿っていくので、参加する方は気楽だ。
しかし、ヨガは毎回アーサナ(ポーズ)が変わる。

何度かお邪魔している教室では、近くにいる人をちらっと見ると「ああ、そうやるのね」と合わせて行くことができる。
だが、オンラインではそうは行かない。アーサナをやっているうちに画面から視線が外れると、これで良いのかと不安になる。

そして画面をみても、他の参加者の映像は小さくて見えないし、先生もみんなの様子をチェックするためにアーサナを解いていたりもする。

画面をガン見している先生と視線が合い、なんとも気まずい感じに。

他にも数人の参加者がいるが、どうやら僕のやっているのは「なんか違う」感じだったようで、個別に指導を受けることになってしまった。

「他の人はそのまま続けてください」

なんだか申し訳ない気持ちになる。


ヨガの最後にはシャバアーサナの時間になった。「屍(しかばね)のポーズ」とも言われる。
仰向けに寝転がり、大の字に手足を広げるやつだ。


このシャバアーサナをやっているとき、先生がボソボソと何かを言っているのが聞こえた。

「それでは、ありがとうございました」
これははっきり聞こえた。


「え、、、」


焦った。もしかして、ボソボソ言っている時に、「みんな起き上がってください」とでも言っていたのかもしれない。


もしかして一人だけシャバアーサナで寝っ転がり、他の参加者はとうに起き上がり、お辞儀をしているのかもしれない。

これはお恥ずかしい!!!
とっさに起き上がった。

先生は合掌していた。


他の参加者は、寝っ転がった(シャバアーサナ)ままだった。
先生はにっこりと微笑み、両手で「あ、どうぞ寝てください」というサインを出した。

僕は「あ、どうも」というニュアンスが伝わるように小さく、そして素早く頷いた。苦笑いをしている自分の顔が、画面越しに見える。

再び仰向けになり、手足を大の字に広げる。

「恥に恥を重ねたな」

最初の恥は脳内で勝手に作ったものだったか。
まあ結局最後の恥も、頭の中で作っている恥なのだけれど。

軽く視線を画面の方に向ける。
ZOOMは終了していた。

そういう流れなのね。
慣れないオンラインヨガのシステム。

そのままもう少しシャバアーサナを続ける。

屍のポーズ。


上手くやれなかった感に打ちひしがれた僕は、そのまましばらく再生の時を待つことにした。

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