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失恋墓地【毎週ショートショートnote】
「失恋した心を供養する?そんなのは嘘っぱちさ。見てみろよ」
薄汚れた墓守は顎をしゃくった。
広い墓地を埋め尽くすように立ち並ぶ墓石はべったりと汚れ、供えられた花はみな枯れて、無残な姿を晒すがままだ。
7年付き合った恋人に振られて、生きる気力も失った私が辿り着いたのは『失恋墓地』。そこへ傷ついた心を埋葬すれば立ち直れる、と聞いたのだ。
「こんなところに埋めたからって供養なんかされるわけがない。残った怨念がいつまでもクダ巻いてるだけさ」
「そんな……藁にも縋る思いで来たのに……」
墓守は肩をすくめた。
「馬鹿だな、あんたは。心なんて閉じ込めたら腐るに決まってんだろうが。どんなに辛くても、心は心だ。あんたそのものなんだよ」
「私そのもの?」
「そうだ。自分で自分を供養する阿呆がどこにいる。どうせいつかはみんな墓に入るんだ。それまで懸命に生きてみるんだな」
墓守が再び、顎で足元を差す。
枯れ果てた墓地にたった一株、小さな水仙が根を張り、ひっそりと白い花をつけていた。
(424字)
*すみません、少し410字をオーバーしました。
【あとがき】
少々忙しくて出遅れたので、もうすっかり皆様の作品が出揃ってて……。
というわけで、ちょっとナナメの視点から書いてみました。
ちなみに水仙の花言葉は「自己愛・うぬぼれ」などがありますが、ラッパ水仙ですと「再生・復活」という意味もあるのだとか。今回はそちらのイメージで書きました。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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