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秋田柴子
2022年7月1日 19:25
「――おまえ、また山に来たのか」不意に後ろで声がした。木の陰に座り込んでしゃくり上げていた佐助は、泣き腫らした目をこすりながら振り返るや思わず声を上げた。手を伸ばせば触れられそうなすぐ近くに、一匹の狐が座ってじっと佐助を見つめている。「き、狐がしゃべった……!」腰が抜けたようにへたり込んだまま、手だけでずりずりと後ろに下がる佐助を見て、狐はおかしそうに笑った。「驚くことはない。我