北の夏。
養うべき家族も、追いかけるべき夢も、表現したい自己も、愛を捧げるべき人も、生活を共にする相手も、果たすべき義務も何もない。
これは事実確認だ。
ただ幸せな事に気の合う友人は居る。
そんな友人と2人、バイクに跨り旅に出た。
免許取得1年未満、バイク納車半年以内、往復550km弱、ノーインカム、43歳児2人。
だらだらと走り続ける。
札幌を旅立ち3時間。
国境稜線...日高山脈を越えて行く。
寒さに震えながら峠を下る。
おれは峠を下りきった瞬間上着を脱いだ。
半袖姿でバイクを走らせていく。
日焼け?
そりゃあするだろう。
相棒のおじさんはマグロ丼のマグロを1枚ずつ箸で取り、醤油に浸し食べていた。
肝心のサウナは...なかなかにスパルタンな設定だった。
サ室は105度前後だったか。
2時間ほど滞在し、えりも岬に向かう。
黄金道路を走り、襟裳岬を目指す。
同行者のおじさんに騙され
19:32分のマジックアワー、紫に染まる雲と空を眺めながら走った。
何かを思い出し少しだけ胸が痛くなった。
ノーインカムで500kmoverを走行したが特に不自由は感じなかった。
外部から隔絶された空間...車で移動するよりも、生身のまま外部と接続する感覚を味わえる移動の方が好みだと言う事を再認識した。
音、匂い、温度、雨、風、快、不快。
たくさん考えたけれども、何を考えたのかはあまり思い出せない。
昔の事も、将来の事もあまり考えなかったことだけは確かだと思う。
おれは行為に没頭できたのだろうか。
だとしたらそれはとても幸せな事なのだろう。
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