北の夏。日本の果て。
おれは追いかけるべき夢も、養うべき家族も、愛を捧げるべき人も居ない中年男性だ。
ただ幸せな事に気の合う友人は居る。
そんな友人と2人、バイクに跨り旅に出た。
免許取得1年未満、バイク納車半年以内、往復760km弱、ノーインカム、43歳児2人。
目指したのは日本四極の一角、日本本土最北端、宗谷岬。
おれたちは、この国の果てが見たかった。
海の向こうに利尻岳が見える。
日本百名山、最北の女王。
宗谷岬に向かう前に“ポケふた”の回収に稚内市内を訪れた。
ーーー
ここで報告したい事がある。
ここまでの先導役は稚内方面に詳しい相方おじにお願いしていた。
行きに留萌で山岡家!稚内で山岡家!帰りにもう一丁留萌で山岡家!
最高のプランだべな〜!
そう言っていた相方おじは当日朝、待ち合わせ場所に到着するや否や、奥様が握ってくれたであろうおにぎりをカバンから取り出し食べ出しやがったのだ。(しかも2つも。)
留萌通過時のセリフ。
あきニキはお腹すいた?すいてない?
じゃあ別に山岡家寄らなくてもいいな^〜?
(寄る素振り皆無の態度と表情で)
このおっさんは...!
そんな所が好きなんだけどさ。
そんな相方おじに宗谷岬への案内を引き続きお願いする。
任せなさい。
稚内は庭みたいなもんだからな。
すぐに着くから。
ヒュッと行ってヒュヒュよ!
ほんとかなぁ...?
不安になりながら相方おじについて行くと...
着いたよ〜!
宗谷岬!
え、いや山岡家じゃんここ?
何?宗谷岬って書いてあるべや。
あっ、ウン...ウン...書いてあるね...。
退店後。
相方おじ「宗谷岬も到達したし帰るべ!」
おれ「あっ、ウン...いいよ、じゃあ帰ろうか。」
相方おじ「オメー宗谷岬直前で山岡家だけ食べて帰るとか頭おかしいべや!」
おれ(おかしいよこのおっさん...)
おれ「そうだね、ごめんね。」
相方おじ「おう。」
波打ち際でセルフィーを撮りつつ馬鹿話をしながらおじ同士いちゃついていると近くにいた老夫婦の奥方が
「あらあら楽しそうね〜。仲がいいのね。」
そう話しかけてきた。
少しばかり世間話を交わした。
奥方は去り際
「いいわね〜。多様性ね〜。素敵よ。」
などと微笑みながらこぼし、夫らしき人と手を繋ぎ去って行った。
おれ「多様性...おい、おれたちゲイカップルと間違えられたぞ。」
相方おじ「エッ?!」
数秒の沈黙。
相方おじ「あきニキ、おれは妻がいるので好きとかチューとかダメだぞ?そういうのは!(ガチ目に怯えた表情でおれから距離を取りながら)」
おれ「いやおれはストレートだから...」
相方おじ「ストレート?」
おれ「おんな好き!」
相方おじ「あーーーー!はいはい!アンタ女が大好きだもんな!」
おれ(もういいや...)
宗谷岬から宗谷丘陵の“白い道”を目指す。
行きに抱えていた屈託は宗谷丘陵によって振り払われた。
家路に着く。
往復760km弱、行動時間17時間45分。
よき旅路だった。
以上。
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