『デッドアンソロジー』について。
皆さんこんにちは。
ボカコレ、終わりましたね!
僕は、ゴミみたいな学生生活に振り回され変な頭痛に悩まされながら、やっと新曲を上げられ生きている実感を得られる事に、喜びを感じています。
さて、そんな僕の新曲『デッドアンソロジー』。
今回も例によって、曲を聴くのがもっと楽しくなるための解説をしていこうかと思います。
着想
「この漫画おすすめですよ。」
僕にはとても付き合いが長い仲良しのボカロP、NARUMI HELVETICAくん(以下ナルミくん)というボカロPがいます。
ある日仲間内で好きな漫画の話をしていた時、ナルミくんがおすすめしてくれたのが『児玉まりあ文学集成』という漫画でした。
僕はこの美しい画風と、試し読みでの印象から、発売中の1〜3巻をその場で購入し、家で読んでいました。そして...
スガーーーーン!!
降ってきたーーー!!!!!!
曲が降ってきました。
漫画の世界観、ストーリー、魅力的なキャラクターたちへの愛着が、僕のイマジネーションをバチバチに刺激したんです。
僕は本を閉じ、Logic Pro Xを立ち上げ、頭の中に鳴る音を打ち込みました。
「こ...これは、ボカコレ出られるかもしれないぞ!」
そうして生まれたのが、あのイントロだったのです。
音について
イントロにどういう意図がとか、どういうこだわりがとか、全然わかりません。
降ってきたやつだから。
いや......イキってるんじゃないんですよ。マジなんで...本当に...。
でも、いいイントロですよね(笑)
Aメロも基本イントロと同じ進行で続いていくのですが、メロディの3回し目「押し込めないパトスとユニーク」の部分、ベースが一瞬休む部分があります。ちょうど「ユニーク」と歌ってる部分ですね。
人間は、3回の繰り返しでパターンに慣れてしまうという研究結果があるらしいのですが、この3回し目でベースが一瞬休んで音像に変化を付ける事で、繰り返しの中にメリハリが生まれていると思います。
Bメロのイメージは「南国バカンス」です。コードワークを奏でているクラビを、エフェクトで比較的大袈裟にビブラートさせています。スチールギターみたいなイメージですね。左でボンゴもぽこぽこ鳴ってますね。かわいい。
対照的にサビ前のキメ、めちゃくちゃロックですよね。このままの雰囲気でBメロ終わっちゃったら絶対サビ作れないなと思って、ガチッとアクセントを付けました。
その後作り始めたサビ...今回もサビはめちゃくちゃ難産でした。僕はサビ作るのが一番苦手なんですよ。
なので.........
漫画を読みました。
この曲を生み出すキッカケとなった『児玉まりあ』と向き合いまくりました。理詰めで考えるより、僕はこういう作曲が性に合ってるんですよね。
その結果あのメロディとあのコード進行を思い付いたのですが、最初は全然腑に落ちませんでした。理論的にはおかしくないのに突拍子が無さ過ぎて、別の曲になったみたいに感じちゃうんですよね。
色々考えた結果、試しにキーを1つ落とすとかなりしっくりしたんです。
なので今回の曲は、サビでキーが-1しています!サビでキーを落とすのって、かなり度胸が要るんですよ。最終的にこの案を採用するかどうかというのも、結構な時間悩みましたよ。
最終的には自分の直感を信じました。ポップさとオリジナリティ、どちらも大切にした良いサビが出来たんじゃないかなーと。
2番、Bメロのベースが1番とちょっと違います。Bメロのベースは結構気に入ってるんですよね。
サビ後のシンセソロ、キーが変わりまくるのでめちゃくちゃ作るの面倒臭かったです。後半ソロのフレーズに合わせてドラムがガシャガシャやるとこは、作ってて楽しかった。
さぁいよいよラスサビですね。
白玉でジャーン!ジャーン!とやるのはロックンローラーの得意技ですね!!そしてとっておき、「きしめん」こと『True My Heart』に教わった秘法「無限ウィンドチャイム」が炸裂しています。もうこれでもかってくらいウィンドチャイムを鳴らしてます。キランキランですわ。
さて、この曲のボーカルですが、琴葉茜です。最初パパッと歌を打ち込んで再生した時、可愛すぎて泣いちゃったんですよね。もっと早く歌わせておけば良かった。
SynthesizerVの琴葉姉妹は、茜ちゃんと葵ちゃんで音源が分かれておらず、作った歌声を茜ちゃんと呼ぶか葵ちゃんと呼ぶかは製作者本人に委ねられるのですが、やっぱり茜ちゃんと葵ちゃんそれぞれの歌声の、微妙なイメージの違いってあると思うんですよね。
そこをちゃんと際立たせて、歌を一発聴いてちゃんと「あ、琴葉茜ちゃんだ。」と思わせられるような調声を意識しました。ぜひ、うちの葵ちゃんが歌う『やさしい恒星』と聴き比べてみてください。
この曲を茜ちゃんに歌わせるということは、早い段階で決めていました。単に茜ちゃんだけソロ曲が無いからという理由もありましたが、あるボカロPへの強い憧れにもよります。
玉砕ネコさんです。
僕は名前がゴロゴロ変わる玉砕ネコさんが杏仁バターという名前だった頃から大ファンなのですが、この方の曲からしか得られないポップさ、そして琴葉茜の魅力というものがあって。茜ちゃんで曲を作るときは絶対参考にすると決めていました。
今回の曲を作るにあたってもかなり参考にしているのですが、分かりやすいオマージュを入れたくて、曲終わりのキメは先程貼った「プラネタリカ」の終わり方をそのまま踏襲しました。本当は「ゆるしておねがいまたあした」からの歌メロをアウトロにがっつり入れたかったんですけど、あの頃は無色透明祭の直後で何かとオマージュには厳しくて...ね(笑)
この曲、出来た時は本当に嬉しかったです。いつも曲を投稿した後は「これ以上僕は一曲も生み出せないのではないか」という不安に苛まれるのですが、前作『舌弐』を作った後は特にその気持ちが強かったんです。
なんだなんだ納得行く物は作れるもんですね。満足は、まだまだしていませんが。
この曲を作るキッカケをくれたナルミ君には、とても感謝しています。
歌詞について
(児玉まりあ文学集成のネタバレ注意)
今回の曲には「原作」があるので、やっぱり歌詞の内容も引っ張られちゃうわけで、『児玉まりあ文学集成』における恋愛の形をイメージしたラヴソングが出来上がりました。やっぱりラヴソングの作詞は楽しいです。
「恋は盲目」とよく言いますよね。
僕らはよく恋愛感情のことを「憧れ」と呼びます。美しく、自分に手の届かないような人物と接していると、やはり憧れを抱いてしまいますよね。好きになってしまうと思うんです。
でも、その憧れが、自分の勝手なイメージによって誇張されたものだったとしたら...
『児玉まりあ』の恋愛にも、そういった描写が登場します。主人公の笛田くんは、ヒロインの児玉まりあに文字通り盲目的な憧れを抱くあまり、本当の彼女を見ることができません。笛田くんの目には、天使のように美しい顔をして、長い白髪を靡かせる文学少女、児玉まりあが映っています。での実際のところ、彼女はただの女子高生に過ぎない、何の変哲も無い女の子なのでした。
しかし児玉まりあは、その盲目的で一方的な恋愛感情を、受け入れるんですよね。
笛田くんの妄想が、私に夢を見させ、私に価値をくれ、私自身を救ってくれるのだと。
現実でもそういう恋愛ってあると思うんですよね。自分の彼女ってやっぱり世界一可愛く見えるものだし、自分の彼氏は世界一イケメンに見えるものだと思うんです。でも、だからこそそのバイアスを受け取る側も、胸を張って恋人として振る舞う事が出来る。背伸びした自分を見せる事ができる。そういうものだと思うんです。
『児玉まりあ文学集成』は、それこそを恋愛のファクターとして機能させている。凄く素敵で面白いなと感じて、歌詞にしたくなったんです。
『児玉まりあ文学集成』のイメージソングとしても、普通のラヴソングとしても機能させられるバランスにしあげたつもりです。漫画を読んだ人にしか伝わらない歌詞なんて意味無いですからね。
好きなフレーズなど、ありましたでしょうか?
まとめ
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
『デッドアンソロジー』はボカコレの参加楽曲ということで、今後この曲に想いを馳せたときの感情がボカコレの結果によって左右されてしまいそうでちょっと怖い思いがあります。45位ランクイン、ありがとうございました。皆さんのおかげです。
お願いします。たくさん聴いてください。参加したからには、やっぱりランキングにしがみ付きたいです。茜ちゃんと一緒に。
この記事で、あなたが『デッドアンソロジー』を聴く時間が更に楽しいものになるなら、僕は嬉しいです。
それでは。