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イクス中目黒店ありがとう(2019年の振り返り①)

今年も1年、 BOTANICが運営する各サービス「ex. flower shop & laboratory(以下、イクス)」「霽れと褻」「Lifft」をご利用くださり、ありがとうございました。

本年を振り替えると、

①「イクス蔵前店」「イクス中目黒店」の閉店&リニューアルOPEN
② COOの参画により、フラワーショップからフラワーカンパニーへ
③ Lifftのローンチ

の3点が会社としては、主なニュースになりますが、今日は①について書きます(②についてはこちら。③については後日改めて)。

イクスを支えてきた中目黒店、蔵前店の2店舗が閉店&リニューアルすることとなりました。
蔵前店は、カフェの移動という外部要因が背景にあったのですが、中目黒店に関しては、ぼく個人の判断に因るものです。

そんな中目黒店に感謝の意を込めて、ちょっと昔話を。

6年半前の2013年6月、ぼくは不動産屋を回っていました。開店のための予算は全て合わせて50万円。結果は散々で、店舗を開店するなら300万から500万くらい必要と言われました。不動産屋に具体的な予算を伝えると呆れられ、全く相手にしてくれません。
ほとんど諦め、途方に暮れていた時に、中目黒の不動産屋から、急に携帯に電話がかかってきました。予算内の物件が奇跡的に見つかったのです。

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念願の店舗出店のためなら立地とか大きさとか、贅沢は言ってられません。ぼくはさっそく大家さんに会い、なぜ花屋をやりたいかを必死に訴えました。当時、フローリスト経験は2年弱。数社とのコンペだったのですが、実力も実績も信用もないぼくに大家さんはぜひ頑張ってほしいと言ってくれ、無事契約できました(大家さんはその後、ぼくが住居を失った(!)際に住民票を置いてくれたり、感謝は尽きません)

物件の初期費用を支払ったら、持ち金は10万弱になりました。お金がないので、店舗の壁紙は自分で貼り、塗装し、什器は全てIKEAで調達し、看板も手作りしました。本当は頭にイメージしている格好いい什器を揃え、綺麗にディスプレイしたかったのですが、そんなお金はなかったのです。

1日分の家賃も勿体なかったので、昼夜関係なく店作りに明け暮れ、1週間位で準備を終え、2013年7月8日(菜っ葉の日!)に半ば無理矢理OPENしました。店名は「ex. flower shop & laboratory」。ex.は、「experipent=試行」と「experiment=経験」が由来です。実は、店舗を出す前に、出資を受けてオンラインのみでのフラワーサービスを進めていたのですが、大半の人が花屋(実店舗)で花を買う事実を知り、花を扱う本質を学ぶために、花屋を自分で経験したい、次世代の花屋のあり方を試行錯誤していきたいという思いが背景にありました。さらに、「laboratory」を加えて、研究室の意味合いも加えました。

何とか開店に漕ぎ着けたものの、結果は散々でした。1日の売上が0円の時もざら。近所の人に「こんな所で商売しても無駄。近いうちに潰れるよ」と言われました。でも、ぼくは諦めず、休みを設けず365日店に立ち続け、週に3回必ず早朝に市場に行き、夜はWEB制作等のデスクワークを続けました。それは、自分で決めたことはやり切るというぼくの信条もありますが、何より、生き物である花が、ぼくが休むことで1日寿命が短くなることが可哀想だったからです。花を愛する気持ちは今もぼくを支えてくれます

1万円仕入れて、1万2千円売れるような低空飛行な毎日を、2年程諦めずに続けると、周りの人の見る目が変わってきました。常連さんもつきました。更に頑張り続けると、気付いたら沢山の方々が応援してくれるようになりました。その時のお客さんが蔵前店をいま一緒に運営している、テイくんマオさんであり、来年からBOTANICの拠点となるブルーボトル中目黒と繋ぎ合わせてくれた村上さんです。

一緒に働きたいと言ってくれるスタッフが出てきました。社員1号目のさいちゃん、2号目のあやさんが入社してくれたのはその頃です。

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その後も、仲間は増え、多くの方に応援していただき、今があります。

なぜ、BOTANICが沢山の方に応援してもらえるのか。
それはぼく個人の能力ではなく、花、植物の潜在価値が魅力的であり、ぼく自身が花、植物を心底愛していること、そして、BOTANICがミッション「花き業界をアップデートし、花、植物に関わる人を幸せにする」を掲げているからだと思います(当時はここまで明確に言語化していなかったですが)。

あと、会社はミッション達成のために存在し、私物ではなく、公器だとずっと言ってきました(その覚悟を決めるため、何も結果が出ていないのに開店半年くらいで法人成りしました)。こういう考えは他産業では一般的ですが、花卉業界、特に花屋では珍しかったかもしれません。

正直、BOTANICよりお洒落な花屋、花の技術を学べる組織、労働環境に恵まれた会社は沢山あります。ですが、BOTANICが掲げるビジョン、ミッションは、その熱量も合わせると唯一無二で、国内外でどこにも負けるつもりはありません。(実際に、アメリカの大手花屋の経営者が来日の際、イクスに来てくれました)

なぜぼくが代表として、このようなミッションを掲げているかと言うと、花の価値を向上させ、1人でも多くの人が1本でも多くの花を愛で親しみ、豊かさに溢れる社会を目指しているからです。

では、花の価値とは何なのか、これは完全に現時点での私見になるのですが、4つの要素があると考えています。

それは、「美」「愛」「時間」「生命」です。

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美しいものは、理屈なく、無条件に人の心を豊かにしてくれます。花は自然のままで十分に美しいのですが、人が手を加えることで、より一層美しさが増幅します。

友人の誕生日、プロポーズ等、花は幸せな気持ちを満たしてくれます。一方で、私たちは親愛な人を弔う際にも花を捧げます。花は、愛を視覚化し、その気持ちに寄り添ってくれるのです。

現代人はビルに囲まれ、あくせく暮らす中で、四季を感じにくくなり、今日と明日の違いすら分からなくなっています。花は、私たちに季節の移ろいを教え、部屋に時の流れを与えてくれます。

日々、生活している中で、身近に生命の存在を実感させてくれるものはどれくらいあるでしょう。枯れゆく花を愛でることは、生命の尊厳を教えてくれます。

私はこれらの価値を信じ、その価値を向上させるためにミッションを掲げ、真摯に会社経営と向き合っています。

想いは偶然繋がり、イクス中目黒店に1人立っていた頃に知り合った村上さんとのご縁で、来年2月(予定)、ブルーボトル中目黒カフェの2F/3Fに、「オフィス」「イクス中目黒の新店」「LIfft制作スタジオ」を併設した、BOTANICのビジョンを体現する施設を作ることになりました。このプロジェクトを必ず成功させ、BOTANICは次のステージに進んでいきます。※詳細は後日、発表します。

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今日(12月30日)は中目黒店の最終営業日。お店の前で珍しく泣きそうになりました(というか泣いていたかも)。

中目黒店、6年6か月ありがとう。本当に感謝しています。
店舗としての貴方の形はなくなりますが、いまのBOTANICの全ては貴方が紡いでくれたものです。

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