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「いつか何処かで作家志望の誰かのお役に立ちますように」(2016/11/16の日記の再編集)『毎日晴天!』シリーズのスタートの頃の話。

(前置きが長かったので前略)
 デビュー後の何年か、私はたくさんの友人を、様々な出版社に紹介していました。
 私はもしかしたらそういうこと疎そうに見えるかもしれません。他者からの私のイメージはわかりませんが、当時は友人たちを次から次へとあっちゃこっちゃに紹介していました。
 一応付け加えますが、完全なる趣味でそれはやっていました。何処からも謝礼はいただいていません。

 本当に余計なお世話ですがあの頃手伝ったことは、
「もしかしたら今の出版社、今の担当さんと合わないのでは? そんなに実力があって魅力的なものを描いているのに、仕事がないのは普通におかしい。目先を変えて、違う担当さんに会ってみない?」
 というようなことをしただけです。

 具体的に一つ礼を語ると、大手の少年誌に投稿し続けて、担当がついたものの全くデビューさせてもらえないままかなり時間が経っている友人がいました。
 私は彼女の投稿作を読んでいたので、これが商業レベルではないのは、出版社もしくは担当さんと気が合わないんだろうなあと思って、青年誌の編集さんを紹介しました。
 その編集さんは彼女の作品を読むなり顔色を変えて、
「ここから先は私とその方でやり取りさせてください」
 と瞬く間に彼女の担当編集者となり、あっという間に大々的に彼女を最良の形でデビューさせた。
 私がしたことはちょいと橋を渡しただけです。

 この話の何がお役に立つかも知れないと思ったかというと。
 私の友人たちには何人かいましたが、投稿や持ち込みスカウトで担当さんがついて、その担当さんの元で何年もどうにもならない状態が続く場合があります。
 それはもしかしたら、残念ながら作家本人に才能の目がない可能性ももちろん充分あります。
 でも今上げた例のように、この担当さんが私を唯一デビューさせてくれる人、生かしてくれる人だと、勘違いしてる場合もあるかもしれません。
 あなたがもしそれなりの才能があって、努力をしていていいものを描いていたとします。
 だけどあなたの担当さんが、真逆のものが好きな編集さんである場合があるという話です。
 これはその編集さんが悪いのではありません。
 好みが違う。相性が合わない。それだけです。全てのヒット作の内容に一貫性はないですよね。
 でもそこが合う合わないということは多分とても大事で、たとえばあなたが東の方角に向かってとてもいいものを創れるのに、担当さんの行きたい好きな場所は西なので、全力で西に行きましょうと東に向いているあなたを改変されていることもあるのです。
 それではせっかくの才能が生きない。
 若いうちやデビュー前に自分でこのことに気づくのは難しいですが、もし膠着状態に陥ったときは、たった一人の好みの合わない人に向かって作品を発信し続けている可能性も疑ってみてください。

 私自身にも、こういったことはありました。
 「毎日晴天!」は、最初はキャラ文庫から発行される予定ではありませんでした。
 某レーベルさんが、
「シリーズをやりませんか」
 と声を掛けてくださって、丁度家族ものが書きたいと思っていたので、シリーズの原型になるプロットが手元にありそれを渡しました。「毎日晴天!」の次巻は「子供は止まらない」というところまで、私のプロットでは最初から決まっていたことでした。大河と秀の話から始めて、次は勇太と真弓の話にすると内容も設定も細かく決めていました。
 ところが某レーベルさんは、どうしても1巻を「子供は止まらない」から始めたいとおっしゃいました。
 私はとにかくいつでも強情なので、テコでもこの提案に頷かず、スタートを切れずに話し合いは平行線のまま時間が過ぎました。
 私は勇太と真弓の話から始めることを受け入れられず、行く当てもないのにプロットを引き上げるところまで来ていました。
 そこに、キャラさんが現れて、私がこの話をすると、大河と秀の話から始めさせてくださるとすぐに快諾してくださいました。
 某レーベルさんには、
「1巻から書かせてくださるところがあるので、このプロットは下げさせてください。また機会があればお仕事ができたら嬉しいです」
 とお話しして、今回はご縁がなかったのですねとお互い納得して完全にプロットを下げさせてもらいました。
 その後この某レーベルさんと私は一度もお仕事をしていませんが、じゃあこのレーベルさんが能力がないのかというとそうではなく、大きなヒット作も人気シリーズもいくつも排出しています。
 私はたまたま合わなかった。本当にそれだけの話です。
 結果、私にとっては最良と思えるキャラ文庫で「毎日晴天!」をきちんと大河と秀の話からスタートできて、お休みもしたのに現在も続けさせていただいています。
 あのときのことを振り返ると、たらればになりますが、がんばって勇太と真弓の話から始めても、こんなには続かなかっただろうし、何より二宮先生という最高のパートナー(私が勝手にそう思っている)に引き合わせていただくこともなかったと思います。
 このシリーズをスタートしようとしていたときに、私がキャラの担当さんと出会えたことはただ幸運でしたが、どうしても子どもたちの話から始めたいという提案にそのときまで長く頷かなかないでいたことは、自分を褒めたい判断だったと思います。
 大きなレーベルだったし担当さんは乗り気で、「その方がきっと注目される。売れる」という気持ちで考えてくださったことであり、好意からの改変提案でした。
 頷かなかったのは、判断できたというよりはただ私が強情だったからとも言えます。

 間違った判断も、もちろんたくさんしてきました。
 それはほとんど形になっていないわけです。

「私いいものを書いているのに認められない!」
 くらいの勢いのよい気持ちがもしあるのなら、膠着状態から出て一度本気で認めてくれる人を探してみてもいいのでは。

 フリーで仕事をしているのなら、リスクを負うだけでなく、そういうメリットも最大限に活用してもいいかと思います。

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菅野彰
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