【ざっくりレビュー】2019 J1リーグ第4節 大分トリニータ戦

akira(@akiras21_)です。
お昼前の気候で服装を判断して、結果見誤る傾向にあります。春ですね。

【前節までのあらすじ】

松原健、高野遼を欠きながらも昨季覇者・川崎フロンターレに真っ向勝負を挑み、土壇場で引き分けに持ち込んだマリノス。大きな自信と手応えを掴んだ選手たちは大分トリニータとの一戦に向け、自分たちのサッカーに対する信念の強さを口々に語っていった。

一方、大分は開幕戦で鹿島アントラーズを破るなど、的確な補強と確かな対策で好調ぶりを見せていた。かつてマリノスに所属した松本怜をはじめ、数々の実力者を擁する昇格組相手に、果たして勝利を収めることができるのか…?

ということで、先発メンバーは以下。

[4-1-2-3]
GK:飯倉大樹
DF:広瀬陸斗、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトン
MF:喜田拓也、三好康児、天野純
FW:仲川輝人、エジガル・ジュニオ、マルコス・ジュニオール

前節は契約条項の関係で出場できなかった三好が先発復帰。ミッドウィークのルヴァンカップ予選・湘南ベルマーレ戦(●0-2)に引き続きメンバー入りを果たしました。

他に特筆すべきは、とうとう畠中が日本代表に選出されたということでしょう。ミッドウィークの湘南戦でも得点が欲しい状況で投入されるなど、いよいよ横浜の防波堤を支える大黒柱になりつつある畠中が、代表合流前ラストとなる今節どのようなパフォーマンスを見せるかに注目が集まりました。DAZNもカメラで追いまくってたしね!

しかしながら、大分が簡単に勝たせてくれるとはさらさら思ってませんでした。普段の練習から※戦術的ピリオダイゼーションを導入するなど先進的な取り組みが兼ねてから注目されていたり、あの名将・片野坂知宏に率いられてJ3から2年でJ1へとストレートインし、開幕戦では鹿島に勝っちゃったりと勢いマジ卍以外の何物でもない大分が相手とあらば、まー快勝とはいかんだろうと思っていました。

※戦術的ピリオダイゼーション
トレーニング構築の理論のひとつ。実際の試合を想定したメニューが中心で、ゲームモデル(試合の進め方・運び方)やクラブのコンセプト・理念なども構築の要素として取り入れられる。「深掘りしようとするとめちゃくちゃ深そう」と一部界隈で話題に。
(参考:林舞輝。新世代コーチが語る、「日本サッカーの日本語化」とは?

ええ、こういうときほど予感は当たるものなのです…では強い気持ちで見ていきましょう。例によって長いので、よろしければ目次をご活用ください。

「縦ポン」は無策なのか?:マリノスも大分もやりたいことは同じ

はいやってきましたよ、大分による開始早々の縦ポン!

マリノスとはアプローチこそ違えど、①縦志向の強い攻撃、②相手をハーフコートに押し込めてエリア的な主導権を奪いに行く…という明確な意図を持ったやり方です。「縦ポンってロングボールのことでしょ?それだとマリノスも守備を整えられちゃうじゃん」というのはその通りです。

でも、同じ時間で大分も陣形を整えられますよね。あと、陣形を整える際に意図を持って整えれば、位置的優位を確保することもできます。たとえば、「競り合いで跳ね返ったボールを奪いやすくするためのポジショニング」や、「跳ね返ったボールを相手に取らせないためのポジショニング」を、余裕を持って整えられたりするわけです。

「無策な放り込み」などと言われる縦ポンですが、「時間の使い方」という観点から見てみるとあながち無策でもないんじゃないですかね。知らんけど。

大分の10秒:垣間見えた「ヘビーメタルフットボール」の片鱗

このままだと試合開始15秒から話が進まなくなっちゃうので、サッサと次に行きますよ。といっても2分しか進まないんだけどね!

2分10秒ごろ、大分のゴールキックでリスタートとなりますが、ここから始まる大分のビルドアップは我々として多分に学ぶべきポイントがあろうかと思います。

①大分のゴールキックに対して、マリノスの前線3人(クリリン、エジガル、仲川)は5レーンのうち中央3レーンを埋める
この形はリヴァプール(モハメド・サラー、フィリペ・コウチーニョ、サディオ・マネ)でも見ることができます。GKからのパスコースを消すための立ち方、いわゆる「カバーシャドウ」と呼ばれるものです。

②高木が(大分から見て)左サイドへと開いた福森直也にボールを出す
画面では見切れてますが、岩田智輝の姿が見えないのでいわゆる「観音開き」の状態だったのではないかと思われます。

③福森が高山薫を使ってボールを出し入れする
これによって仲川と三好の注意を惹きつけて、小塚和季へのマークを外します。

④福森が小塚を目掛けて浮き球のパスを出す
チアゴが反応し、ダイレクトパスで三好へとつながったためビルドアップは失敗に終わりました。

この間、およそ10秒。一連の流れは3つのステップに分解されますが、実はいろいろな動きが含まれています。

まず、前田はIH、小塚はアンカーとしてプレーしていましたが、このビルドアップが始まる前の段階では前田と小塚の位置が入れ替わっていました。そして、②が実行されると前田は猛然とダッシュを敢行します。

ダッシュを始めた前田は喜田の視界に入っていたので、喜田がそのままケアしに付いていきます。が、高木から高山にパスが通ったところで前田は方向転換。同時に、小塚はマリノスゴールへと向かう形で前田とは互い違いの方向にスライドし、三好と天野の間に入るポジショニングを見せます。

福森が小塚のほうへとボールを出すに従って、大分もマリノスも陣形を収縮していきます。2分20秒ごろをご覧いただけたらと思いますが、ボールの落下点から見て大分の小塚(斜め右)、前田(中央)、そして逆サイドからフラフラと寄ってきていたティティパン(斜め左)の3人で3つのコースを埋めていました。このうち誰かがこぼれ球を奪ってカウンター発動…というのが大分の狙いだったのでしょうが、チアゴのライナー性なダイレクトパスが三好の足下にピッタリと収まったため、この試みは失敗に終わりました。

ダイレクトでパスを通したチアゴ、そしてそれにバッチリ合わせてトラップした三好の質的優位が最終的に勝った場面ですが、比較的劣勢だった①の場面からボールと選手を動かして打開しようとした大分の試みには学ぶべきでしょう。

(将来的な)密集地帯に浮き球を出して自軍どころか相手の陣形をも崩し得るカオスを生み出しつつ、跳ね返りを奪ってカウンターを仕掛けに行く…って、よくよく考えたらゲーゲンプレスのひとつの形だったり、ストーミングの基本的なアイディアじゃないですかね、これ?知らんけど。

悪魔の左足:L28改ツインターボが載るのはいつの日か

さて、ティーラトンについて。なんかものすごい言われようだったそうなので「そんなに言うほどなのか?」という視点で観てみることにしました。

観てみましたが、やっぱり「そんなに言うほどか?」という印象です。まだチームにフィットしきれてないですが、できるだけ首を振ってみたり、ワンサイドに攻めが寄ってると見るやポジションを内側に絞ってみたり、彼なりの努力のしるしは幾つか見て取れます。

ただ、いまのところは一般的なサイドバックなのでしょう。「考えて走る」ようになるまでもうちょっとかもしれません。

試合中よく見られたティーラトンの動きのひとつとして、「サイドラインに背を向けたまま後ろ走りで幅を広げる」というのがありました。相手からのプレスがないからこそ選択している動きなのですが、この幅の取り方は安全な一方であまり縦方向に運べません。サイドラインに完全に背を向けてしまうと腰も縦に向いていないことになるので、ボールを受けてから前を向くまでの時間がその分長くなってしまいます。

また、1列前のクリリンと(5レーン理論でいうところの)同じレーンの中でちょくちょく縦関係になってしまうのも気になりました。が、これは得てしてティーラトンもしくはクリリンが内側に絞る余地があったりもしたので、「どっちが行く?」という意思疎通が図れるようになれば多少なりとも改善していくかもしれません。今回ティーラトンがタイ代表に招集され(てしまっ)たので、この点についてはちょっぴり時間が掛かるかもですが…

とはいえ、的確にグラウンダーでも浮き球でも長短緩急使い分けてパスを出すなど、ティーラトンはいわゆる疑似カウンター(じっくりとしたビルドアップから速いパスを出すなど攻撃のスピードを上げること。「スイッチを入れる」とも)の起点になれるスキルを十分に備えています。そして、そうしたスキルを見せたときはハーフレーン〜中央レーンにいることが多かったので、ほんといい塩梅を身に付けてくれれば…と希望的観測を抱いてしまいます。

そのパスは…まるでくるおしく
身をよじるように 走るという…
(このネタ分かる人いるかなぁ)

あと、1失点目のときもそうでしたが、ティーラトンってパスを出そうとするときにわりと遠くの方を見ようとしてますよね。自分自身が密集地帯にいることなども関係してそうですが。知らんけど。

静と動:相手の惹きつけとミスター長嶋

マリサポのレビューなのにここまで主に大分のことばっかりいろいろ書いちゃってますが、だからといってマリノスがまったく良くなかったわけではありません。

ミッドウィークのサブメンバーを主体としたチームを観た後ということもあり、リーグ戦のメンバーは個々のスキルがやはり高いなと感じました。たとえば三好はいつも通り浮遊感のある独特な体重移動を交えたドリブルを見せてましたし、畠中も体の強さから縦パスの意識から目を見張るものを見せてくれました。

ボールホルダーへの寄せが早かったり、球際へ厳しくチェックしたりと大分がマリノスの攻撃を無効化しにきていたことは明らかですが、一方でボールを持たされたときは守備時に見せていたほどのアグレッシブさはありませんでした。じっくりビルドアップする攻めよりも、スパスパっとしたカウンターを狙ったゲームプランだったのかもしれません…って、書けば書くほどこの日の大分にはリヴァプールっぽさを感じますね。

だとすれば、大分のような相手には敢えてゆっくりと密集地帯に入っていくようなプレーで注意を惹きつけて、反対サイドに空いた広大なスペースを使いながら…っていうやり方が浮かびます。アリキック連打からいきなり延髄斬りをかますアントニオ猪木みたいな感じですね。あるいは“ミスター”長嶋茂雄リスペクトでグーッと来たらバーッと行ってガツーンですか。知らんけど。

おわりに:やりたかったことをやられるってこんな感じ

…といったところで、ざっくり大分トリニータ戦を振り返りました。本当はあと30分ちょい試合時間が残ってるんですが、2ゴール決められたあたりでグニャッとなってしまったので、ひとまず今回はこのあたりで。

「74分ごろに相手のゴールキックからボールを奪って始まったカウンターでエジガルが仲川にパスを出せていれば」「広瀬、ティーラトンの両サイドバックを下げて李忠成、扇原を投入し、喜田が1列下がってセンターバックがややワイドに開く3−1−2−4気味の前線集中砲火ファイヤーフォーメーションで1点取れていれば」…などifはありますが、この試合についてはあの片野坂知宏が用意してきた策に見事に引っ掛かってしまったのが痛かったですね。全体的に、マリノスがやりたかったことをむしろ大分にやられてしまっていたなと。

ちなみに、個人的にアガったのは12分33秒ごろに喜田が見せた「倒れながら藤本憲明の足下を奪いに行く前田日明ばりのタックル」でした。確実にファールだったんだけどね!とにかく次勝ちゃそれでええんや!!

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