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人間万事塞翁が馬−12

人生の午後

スイスの心理学者カールユングは、人の人生を、日の出から日の入りまでの時間に例え、その時間を、少年期、成人前期、中年期、老人期という4つの段階に分け、それぞれの段階と段階の間には、転換期という「危機」があると指摘している。

何故ならば、転換期に必要となるのは、それまでの段階の「ものの見方や考え方或いは行動の仕方」等を「新しい期」に適合するように大きく変える必要があるということであろう。

然しながら、理屈でいうほど簡単には変われない、変化できないのが人間という動物であろう。

特に難しいのは、中年期から老年期への転換といわれている。

中年期は、いってみれば人生の正午であり、一般的にも絶頂期ともいえる。

正午や絶頂期からやがて下降期である午後に入る、いわゆる老人期といわれる段階であり、いってみれぱ、午後から日没にかけての日が暮れていく時間帯、老いていく段階に入っていくわけである。

これから「暮れていく」「人生が終盤にさしかかる」というのは、どうしてもネガティブなイメージがついてくるので「自分のこと」として容易に受け入れられないのも仕方ないのかもしれない。

また、我々は、正午が一番の絶頂期であったということが容易に理解できず、それが一時期ではなく永遠に続くように錯覚してしまいがちな点も容易に変われない要因でもあろう。

そのために、自分が下降期であることが、容易に受け容れられず、下降期である午後に入っても再び上昇を夢見たりするのである。

高年期に向かう人生では、何よりもまずやらなければならないのが、自分の意識を改革することかもしれない。

何故ならば、仕事、生活様式といった基盤が根底から変化していくにもかかわらず、意識だけが、人生の正午というわけだから。

新しい意識、新しい生き方を確立していくためには、これまでの自分ときちんと向き合い、嫌なことでも、思い出したくないことでも、それらときちんと向き合い、それらを見つめる必要がある。

一般的に、年を重ねるごとに現役時代の虚栄心や自尊心が大きくなり、それがブレーキとなって人生の午後の歩みが出来なくなってしまうのかもしれない。

いずれにしても、人生の正午から午後そして日没にはいる段階では、「自分自身について」そして「これからの生き方について」真剣に考えることを迫られるのではないだろうか。

これまでの自分を初期化し、人生の午後や老年期における新しい自分を作り出していくことが大事になってくるものと思われる。


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