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人生万事塞翁が馬−6

喪失後に遭遇する2つの課題

人生はしばしば物語に例えられる。

その物語の中には、大なり小なり、大切な身近な人間の喪失が生じ、そのたびに、進むべきシナリオを書き換えながら進んでいく。

詩人の谷川俊太郎さんによる「その後」という詩がある。

その後がある。

・大切な人を失った後

・もう後はないと思った後

・すべてが終わったと知った後にも

・終わらないその後がある。

大切な人を失ってしまった後のシナリオは白紙かもしれない。

しかし、命ある限り、人生という物語は、途切れなく続いていく。

大変な喪失に直面して間もなくは、その後のことなど考える余裕もなく、考えること自体が苦痛である。

そして時間は止まってしまったかのように感じたりもする。

我々は意識しょうがしまいが、重大な喪失に直面した後に取り組まなければならない課題は大きく2つある。

① 大切な人を失ってしまったという現実を自分なりにどのように受け入れるのかという難しい課題

② 喪失という結果、生じる生活上の問題とこれからの人生にどう向き合っていくのかという課題

この2つの課題は、行ったり来たりする並行したプロセスにある。

つまり、ある時は「喪失」という現実と向き合い、そしてもう一方では、生活上の問題とも取り組まなければならないという、行ったり来たりする課題である。

どちらか一方だけの課題ではなく、双方の課題に同時並行で向き合っていかなければならないのである。

喪失に対してどのように反応し、どのように向き合うのが正しいのか一律に定めることはできない。

喪失体験は極めて個人的な体験であるために向き合い方に正解はない。

他の人にとって役立つアドバイスでも自分にとつてはそうでないこともある。

喪失にどのように向き合うかは、人生をどのように生きるのかということに通じる。

向き合い方に正解はないのかもしれない。

「いつまでも悲しんでいてはいけない」「落ち込んでいてはよくない」と自らの感情に蓋をして無理に抑え込むのもよくない。

そうなると周囲の人に見せている顔と一人の時の顔は、違うのである。


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