見出し画像

[MUSIC] 今年の二十枚、そしてその他。2020年版。

画像1

ミズモトアキラの選ぶ今年の二十枚(順不同)。

Kevin Krauter - Full Hand
R.A.P. Ferreira - Purple Moonlight Pages
John Carroll Kirby - My Garden
Marker Starling - High January
Snowy Band - Audio Commentary
Jerry Paper - Quicksand
Mk.gee - A Museum Of Contradiction
Aksak Maboul - Figures
Westerman - Your Hero Is Not Dead
Richard Houghten - Sailing Through Rainbows of Sound
klark sound - Artifactory
Dent May - Late Checkout
Eddie Chacon - Pleasure, Joy and Happiness
JW Francis - We Share a Similar Joy
Vansire - After Fillmore County
Paul Grant - Waves
Ginger Root - Rikki
Jake Sherman - Jake Sherman Gets Sexy
Hala - Red Herring
Koney - Koney


1月に中国で起きた肺炎の集団発生が口火となった新型コロナウィルス。ダイヤモンド・プリンセス号のクラスターはなんとなく他人事として見ていたのに、3月に入ってパンデミックは一気に拡大。志村けんさんが亡くなったあたりから、日本でも一気にシビアなムードになりました。あれから10ヶ月ほど経ちますが、薄日はさせど収束の見込みは立たず、世界は相変わらず濃い霧に包まれた状態のまま。なんとも不思議な1年を終えようとしています。

もともとこういう仕事ですし、人口密度の低い地方都市に住んでいることも相まって、暮らしぶりにもさほど大きな影響は受けずに済んでいますが、東京や大阪、あるいは諸外国に目を向けても、いまだに厳しい行動制限が続けられているのは周知のとおりです。*1

*1 日本一の人口密度を誇る新宿区は18,959人/km2。それに対して、わが松山は1,181人/km2。新宿のわずか6%という計算になります。

それでもなお、2020年の世界の音楽シーンはいざ終わってみれば、けっこう明るく充実していたのかな、と感じています。おいおい、なに寝ぼけたこと言ってんの、みずもっちゃん───という声さえ聴こえてきそうですが、そういう結論に至ったのはこんな理由からです。

音楽家たちは密集を避けて、自宅もしくは厳しい条件付きの有観客、あるいは無観客を前提とした空間でしか演奏の機会は持てません。木戸銭ではなく、投げ銭やクラウドファンディングを含めた個人からの寄付をあてにせざるえず、16世紀後半の室内楽の時代に───つまり芸術家とパトロンによって芸術が守られるような状況に数百年分も一気に逆行しました。でもそれは退化ではなく、言うならば原点回帰であり、作り手と聞き手の関係性を再び問い直すチャンスだと言えるのです。

コンサートホール、ライブハウス、ナイトクラブの従業員や裏方として働くスタッフたちも大打撃を受け、苦労は想像に難くないのですが、長い目で見れば、先進国はおおむね少子化に歯止めが効いていないし、コロナ禍以前から音楽ファンも高年齢化し、マーケットは急激な収縮が続いていました。いっぽうレコーディングに関しては、ベッドルームでもスタジオと遜色ない高音質で録音できる環境が整っているし、出来あがった作品はアーティストから配信サーヴィスをとおしてダイレクトにリリースできる。なんなら自宅から映像配信も可能。時勢に応じて、身の丈にあった適正なバランスが生まれ、テクノロジーの進化がそれをサポートし、今よりもっとポジティヴな状況になるかもしれません。

いずれにせよ、2020年はここ数年の中でも、とりわけ充実した作品と巡り会えたし、ぼくもまたいつになく真剣に、音楽にじっくり耳を傾けた気がします。ベスト20に入れたアーティストは、シングルやEPはおろか、複数枚のアルバムをこの1年で出した人もけっこういます。*2

*2 John Carroll Kirby、Richard Houghten、Vansire、Paul Grant。EPやフィーチャリングを加えればもっとたくさん。

特にJohn Carroll Kirbyは、noteで以前紹介したピアノだけのインストアルバム『Conflict』や、同じくベスト20に入れたEddie Chaconの『Pleasure, Joy and Happiness』をプロデュースしたうえ、新しいシングルを2曲(『High』『Love Theme』)リリースするなど、活動は旺盛でカリフォルニアのロックダウンなどどこ吹く風です。

5曲入り前後のEP、もしくはシングルオンリーのリリースだけだったアーティストの楽曲はSpotifyで別途にプレイリスト化しました。いつものようにプライベートルール───ひと組に対して1曲ずつ選んだんですが、それでも約170曲/10時間分あります。年末年始にゆっくり楽しんでください。

あと、何かしらリリースするたび、年間ベスト級のアルバムになってしまう殿堂入りアーティストは上掲のベスト20からはあえて外しました。今年は以下の人たちです。おめでとうございます。

Andy Shauf - Neon Skyline
Jeff Parker - Suite fo Max Brown
Khruanbin - Mordechai
Whitney - Candido
Fleet Foxes - Shore
Haim - Women In Music Pt. III
Yo La Tengo - We Have Amnesia Sometimes
Thurston Moore - By The Fire
Steve Lacy - The Lo-Fis

かたや国産の音楽作品はほとんど耳に引っかかりませんでした。ぼくがときめく欧米の音楽家たちは20代前半の人がほとんどですが、この世代にも魅力的なアーティストが見当たらない。これは年齢にかかわらないことだけど、彼/彼女、オーヴァーグラウンドもアンダーグラウンドも、日本の音楽シーンは世界的な潮流とまったく無縁に、相変わらず日本のマーケットにのみ向けた商品───ガラケーやテレビデオや軽自動車のようなレンジの狭い商品を相変わらず作り続けているように見えます。もちろんそうした旧態然としたモノの良さ、ローカライズされた商品の優れた点もあるけれど、そろそろ真剣にアップデートしたほうがいいんじゃない? というのが、ぼく個人の意見です。

そんななか、例外的にMei Eharaさんのアルバム『Ampersands』は、風通しが良くてファンキーで文学的でユーモアがあって抜群でした。

といったわけで、今年の二十枚はいかがだったでしょうか。どういう切り口にするのかまだ決めかねていますが、これらの作品をもとに、次のPodcastを作ってみようと思ってます。こちらもお楽しみに。

以上、なんだかんだ偉そうに言いつつ、ウーバーイーツもzoom飲み会の経験も無く、あつ森もやらず、半沢直樹も鬼滅の刃も見ていないミズモトアキラがお届けしました!

サポートしていただいた資金でレコードや本を無駄遣いし、執筆の糧にしております💰