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THINK TWICE 20211128-1204

11月29日(月) Tangled Up In Cats

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10日ほど前、松山の街なかで保護された子猫が、飼育経験豊富なBRIDGEの店主、大塚さん(今も自宅に6匹)のもとに持ち込まれた。彼女がSNSで発信した里親募集に反応し、別の友人が一度お見合いしてみたいという話になって、その橋渡しをした。

ぼくも友人と一緒に会ってきた。雑種のべっ甲猫。すごく賢そうで、おとなしくてかわいい。突然、抱きかかえたら不快だったみたいで鋭い爪を親指に立てられた。まち針のように細くて鋭い爪。けっこう痛かった。

お見合いした友人は見晴らしのいい快適な一軒家を2年ほど前に建てたばかり。彼女(友人)と彼女(猫)の組み合わせは、ぼくのなかでしっくりきてたんだけど、残念ながら彼女(友人)は決心できず。命あるものだし、レコードや本や洋服をトレードするようには気軽にいかないよね。

これまで可能性を考えることさえなかったけれど、ぼくも将来、動物と暮らす生活があっていいかな、と最近、考えるようになった。

別の里親候補が見つかって、無事に今日、大塚家から旅立って行った模様。新しい住まいは砥部町。幸せに暮らすんだよ〜!(12月4日付記)


11月30日(火) 猫にこんがらがったあとで。

THINK TWICE RADIO VOL.24

昨晩、猫にこんがらがった後で、Zoomを介したトークイヴェントに出演。地元大学の先生が主宰したもので、松山チームは市内のカフェにしつらえられた場所からの中継だった。

ぼくを含めてゲストは4人の編集者。ひとまわり下の世代がおふたり、ふたまわり下がおひとり。編集的思考について───という、ただでさえ語り過ぎちゃうテーマだったから、おのおの自己紹介を終えた時点で残り時間15分。むしろオフラインになって以降の、カフェに直接来ていたお客さんたちと車座で対話する時間の方が有意義だったかもしれない。まあ、そんなものだよね。

THINK TWICE RADIO

「今月中に1本くらいは!」という謎の義務感にかられて、制作。最近、Instagramのストーリーズから直接リンクが張れるようになったので、今までより手軽に聴いてもらえるようになった。なのに、手抜きみたいな───いや、まごうことなき手抜き回で申し訳ない。でも選曲は最高だと思う。

Return To Sender

ムスタキビのnoteでやってる連載「Return To Sender」は、日が変わる数時間前に無事アップされた。あとがき担当の黒川社長パートは公開されるギリギリにいつも初めて読むんだけど、毎回知らないことばかりで楽しい。

Fujiwo Ishimoto “Hohto“ (1980)

Hohtoはフィンランド語で、輝き、煌めき、閃光、といった意味。石本さんが手掛けたモアレのようなデザインのインスパイアで、光の粒子を描くことを標榜した印象派/新印象派、そこからキュビズム/絶対主義/オプ・アートへ───という流れをぼくの解釈でおさらいしてみた。そして、今の世の中に対する個人的な提言みたいな部分にうまく接続できた気がする。我ながら力作。ぜひ多くの人に読んで欲しいと思う。


12月1日(水) SOONER OR LATER

さて、今日から12月。今年中に一度くらい東京へ行こうと思っていたが、どうやら果たせそうにない。

絶対に見逃せないと思っている展覧会───

  • 国立近代美術館『民藝の100年』

  • 三菱一号館美術館『イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ─ モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン』

  • 東京都現代美術館『Viva Video! 久保田成子展』

  • 同所『クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]』

これらは来年まで会期があるのでいいとして、下記の展覧会はもうすぐ会期が終わる。

  • オペラシティ『和田誠』展

  • 江戸東京博物館『縄文2021─東京に生きた縄文人─』

  • 銀座のメゾンエルメスフォーラム『ル・パルクの色 遊びと企て』

後先考えずに行っちゃえばいいんだろうけど、なかなかそうもいかなくて。

THE GRASS ROOTS

The Grass Roots “Sooner Or  Later“ (1971)

東京のことをぼんやり考えていると、なんとなく《遅かれ早かれ》という言葉が頭に浮かんで、次に英語のSooner Or Laterを連想し、さっきからグラス・ルーツの「Sooner Or Later」を聴いている。

ぼくがこの曲を最初に耳にしたのは佐野元春さんのラジオ番組『サウンドストリート』だった。自作の「ヤング・ブラッズ」(1985年)に影響を与えた1曲、とたしか紹介していた。

翌年に出たTAKESHI & HIROKI「I’ll Be Back Again…いつかは」。「Soon Or Later」と「ヤング・ブラッズ」をもういっぺん掛け合わせて作った、合わせ出汁のような一曲。作詞はテリー伊藤。作曲は馬場孝幸(BABA)というシンガーソングライターで、編曲はスペクトラムのメンバーだった奥慶一。

1989年にグラス・ルーツの大ヒット曲「今日を生きよう(Let's Live for Today)」が、深津絵里がCMキャラクターを務める焼きそばのCMに使われて、お茶の間でガンガン流れはじめた。時はバブル末期。ヒトが生きていくためのコストはどんどん上がっていた。そんな世相を反映して、この曲は選ばれたんだと思う。

手持ちのレコードはかんたんに引っ張り出せない棚の奥にあるので、
この画像はdiscogsから転載。

そしてCMの影響もあって、東芝系列のレーベルから出ていたこのベストを中古レコードで買った。帯も解説書もなんにも付いていなかったから、たぶん1,000円しなかったと思う。

裏ジャケにも冴えない写真が一枚載っているだけ。「Sooner〜」と「Let's Live for Today」の2曲を繰り返し聴いていただけだったから、スティーヴ・バリとP.F.スローン(両者とも大滝さんに多大なる影響を与えているアメリカ西海岸のソングライター)による覆面ユニットとして誕生し、あるバンド(13th Floor)がオーディションでそっくり雇われて、Grass Rootsとして世に出た───なんて事情は今の今までよく知らなかったくらいだ。

http://the-grassroots.com/html/group_members.html

公式ページを見ると、この手のグループにありがちな激しいメンバーの出入りがその後もあって、1980年代以降に加入した人たちを中心に今もバンドは活動している。やっぱり”根っこ”というのは生命力が強くてしぶといね。


12月2日(木) 自然のLESSON

寒くなればなるほど上がってくる光熱費と珈琲の消費量。自宅で飲む珈琲はカリタの小さな電動ミルで豆を挽き、それをドーナツドリッパーで淹れていた。ところが最近、豆を買うときにお店のちゃんとしたグラインダーで挽いてもらい、それで淹れるようにしたら格段に美味しい。こだわるところを間違えると根本的にダメ……という教訓!

David Byrne Radio

ぼくが唯一mixcloudでフォローしているデヴィッド・バーンのプレイリスト。12月は「CUMBIA FOR THE HOLIDAYS」。これを聴いてたらカルディで買いたいものを思い出したので、今から行ってきます。


12月3日(金) JW’s BEST FILM OF 2021

John Waters

今年は例年より断然早くベスト〇〇が公表されている気がする。いずれクリスマスみたいにどんどんスタートが早くなり、10月くらいにリストが発表されるようになるかも。

そんななか、毎年この時期の発表を楽しみにしているのがジョン・ウォーターズのベストフィルム。今年も彼らしい10本が選ばれている。

1 - アネット
レオス・カラックスの新作映画。あのスパークスのロン&ラッセル兄弟が原作。アダム・ドライバー主演のロック・ミュージカルで、日本では来春公開されるそうだ。JWのコメントは《怒れるマッチョなパフォーマンスアーティストとオペラ歌手のガールフレンド、なぜかパペット人形として生まれてしまった彼らの娘を描く、今年最高の映画。狂気に満ち、常軌を逸していて、ありがたいくらいにわがままな、スパークス兄弟によるミュージカル。ひとりで観ると誰にも邪魔されずこの最高傑作を楽しむことができるはず。なんせ上映時間がチョー長い(144分)からね》。

2 - サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)
1969年に開催された「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」のドキュメント。ザ・ルーツのクエストラブが監督。《カメラがクララ・ウォードの喉の奥にまで入り込み、彼女の素晴らしいゴスペル・ヴォイスが実際にどこから出てくるかを見せてくれる。またニーナ・シモンはかつてないほどに怒っている! 彼女はきっとあなたのケツを蹴っとばしてくれるよ》(JW)

3 - VORTEX
ギャスパー・ノエの作品で、テーマはなんと「アルツハイマー」。ノエ自身が1年半前に脳卒中で倒れ、生きるか死ぬかの瀬戸際を経験したことがこの映画に投影されたとか。主役のひとりとして、あのダリオ・アルジェントが出演している。

4 - FRANCE
『ユマニテ』『欲望の旅』を撮ったフランスの監督ブリュノ・デュモンの新作。ウォーターズが2018年と2019年のベストムーヴィーに選出していた『ジャネット』と『ジャンヌ』が二本立てでもうすぐ日本公開。主演はレア・セドゥ。人気女性キャスターがある事件に巻き込まれ、これまでの生き方に変更を迫られる……という物語。JWは《前半はありきたりだが、後半は人目を気にして生きることの退屈さと感情的なリスクへの痛烈な批判に変貌する》とコメント。

5 - 世界で一番美しい少年
ルキノ・ヴィスコンティ監督『ベニスに死す』に主演したビョルン・アンドレセンのドキュメンタリー。これもまもなく日本公開。《想像してみてください───あからさまにゲイであるルキノ・ヴィスコンティの目の前で半裸の10代の少年たちがパレードをしている姿を。主役の座を得て、最も美しくなるどころか最もめちゃくちゃになった10代の男の子をとおして、スターダムに昇りつめることの危険性が探られるのです》(JW)

6 - MANDIBLES
Mr. Oizoことクエンティン・デュピュの映画。IMDbによると「車のトランクに巨大なハエが入っているのを見つけたジャン・ガブとマヌ。そのハエを調教して、大金を手に入れようと考える」というお話。JWのコメントは《今年一番アホな映画》。

7 - RED ROCKET
『チワワは見ていた』『フロリダ・プロジェクト』のショーン・ベイカーの新作。個人的にはちょっと意外なセレクションだが、JWは「ファック、ファイト、そして真正面からのヌードが本来あるべきアート映画のスクリーンに戻ってきた」と大絶賛。

8 - THE TRAGEDY OF MACBETH
ジョエル・コーエンが単独で製作、脚本、監督を務めた初の作品(イーサンは映画界から引退したと報じられている)。マクベスをデンゼル・ワシントンが、妻をフランシス・マクドーマンドが演じ、シェイクスピアの原作に真向勝負。全編モノクロ。A24が配給し、公開はApple+で12月25日配信予定。JWのコメントは《もし、イングマール・ベルイマンが墓場から戻ってきて、シェイクスピアを映画化するとしたらこんな感じになるだろうな》。

9 - SAINT-NARCISSE
『ノー・スキン・オフ・マイ・アス』の監督、ブルース・ラブルースの新作。「1972年のモントリオール。ドミニクはポラロイドで自撮り写真を撮ることによってナルシズムを満たしていたが、彼には双子の兄弟ダニエルがいて、堕落した神父の愛玩具として仕えているという事実を知り、彼の世界は覆される」。JWも《彼の最高傑作》とべた褒め。

10 - THE ONANIA CLUB
『ムカデ人間』シリーズのトム・シックス作品。THE ONANIA CLUBとは「他人の不幸で性的に興奮する女性たちが集まるクラブ」のこと。いまだ配給の目処が立たず、日本はおろかアメリカでも未公開。JWは《ペドロ・アルモドバル監督の誰しもに愛される傑作『パラレル・マザー』をさしおいて、誰しもに憎まれるであろうこの作品をベストに選ぶなんて、我ながら思いっきたことをしたものだ》とコメント。


12月4日(土) ON THE NET 

どうしても欲しい本と出会ってしまい(ネットで)、取扱店としてリストアップされていた店を片っ端から捜索(ネットで)。おそらく書店に流通していた最後の一冊を発見(ネットで)し、即座に注文(ネットで)。届くのが楽しみだ(ポストに)。

ところで最近、作業場や就寝前のベッドでよく聴いているアルバムがある。細野晴臣さんが選曲した民族音楽のオムニバス『La Voix De Globe 地球の声』だ。1989年に8枚組のCD/カセットボックスで発売され、リリース元は日本音楽教育センター。現在のユーキャンだ。当時、新聞の全面広告でデカデカとこのボックスセットが宣伝されていたことを覚えている。

細野さん責任編集を謳った雑誌『H2』(創刊0号だけ出た)。
その表3に掲載された『地球の声』の広告と、申し込みはがき。
この雑誌の発売は1991年なので、けっこう息の長いタイトルだったことがわかる。

世界中から集められた、いわゆる”ガチ”な民族音楽が全128曲も収録されている。値段は一括払いで25,000円。月々1,980円の13回払いも選択できた。貧乏な大学生だったぼくはいずれにせよ諦めざるを得なかった。
しかし、裕福な大学生だった細野好きの友人がポンと購入。彼の家で何枚か聴かせてもらった。そのときは正直「見送ってよかった」という気持ちだった。まだ青かったぼくの耳にはその魅力が半分も聞き取れていなかったのだ。

何年か前、ふと気になって探してみたら、中古盤が思った以上に安く出回っていた。ブックレット付きのフルセット狙いではなく、一枚ずつ探せば、定価の10分の1で揃えられそうだったので、チマチマと買い始めた。そして、パソコンでリッピングし、引っ越しのときにすべて処分してしまった。*1

*1 理由ははっきりわからないけど、VOL.8「律動」編だけ取り込み忘れたのか、その一枚だけデータが無いことがわかって今、ショックを受けている。無いとなると一番いい曲が入っていたような気がしてくるから嫌だ。

細野さんが1987年2月に足を骨折したことは、以前、近田さんについて書いたときに触れた。怪我の経緯をもとにして、最初で最後のラップシングル『COME★BACK』をリリースする。で、その直後からアニメ映画『紫式部 源氏物語』のサントラに細野さんは取り掛かった。

平安時代が舞台なので、筝など雅楽の楽器を導入しているが、和というよりも、どちらかといえば中近東的な響きを持つ音楽に仕上がっている。

そのあと、細野さんはテレビ朝日のドキュメンタリー番組の仕事で、イスタンブール、ブルガリアを旅行する。ちょうどその頃、ワールド・ミュージックが世界を席巻していた。その重要な拠点だったパリにも寄り道した。そして、日本の民謡、アラブのライ・ミュージック、アフロ、カントリーやスウィング・ジャズ、アシッド・ハウスなどを融合した、傑作アルバム『オムニ・サイト・シーイング』を完成させる。それもすべて1989年の出来事だ。

『La Voix De Globe 地球の声』は、案外振り返られることの少ない仕事とはいえ、中沢新一との共著『観光』(1985年)と共に、細野さんのキャリアで、わりあい大きなマイルストーンだと思っている。

地球の声───細野晴臣

おそらく、このように膨大な数の民族音楽が、国や民族に束縛されることなく、ただ象徴的なタイトルだけを頼りに並べ換えられたのは、 これが初めてかもしれません。その点で、私は稀に見る困難と幸運を併せ持つ仕事を手に入れることができたと、喜びを感じずにはいられません。民族音楽という枠をもはずし、よりイージーリスニング的に、リラックスして聴いていただければ、このシリーズの心地よさが音楽本来の楽しみ方であることに気付いていただけることと思います。(広告のコメント)

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