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STAR HOUSE SURF RIDER

昼過ぎ、打ち合わせがだいぶ巻いたので、仕事先の近所にある県営東石井団地の、通称〈スターハウス〉をひさしぶりに見に行きました。

スターハウスとは、戦後まもなく、災害に強い鉄筋コンクリート造りの公営住宅が求められ、全国各地で建築されていくなか、市浦健という建築家が生み出した斬新な仕様の住宅です。

市浦健(いちうらけん)は1904年、山口県生まれ。東京大学では前川國男、谷口吉郎と同級生だった。高度経済成長期、爆発的に増えた都市部の人口に対し、新しい形の都市開発=ニュータウン計画を先駆的にすすめる。その代表作が大阪の万博公園近くに建設された千里ニュータウン。

元・同潤会青山アパート

市浦は同潤会アパートのような集合住宅のスタンダード───つまり、ひとつの階段に対して、部屋が両サイドにひとつずつある〈二戸一階段〉式への反抗心(カウンター)として、このスタイルを編み出しました。

https://house.muji.com/life/clmn/danchi/danchi_190521/

図面でわかるように、真ん中に三角形の吹き抜け階段をつくり、その3つの辺に正方形の居住スペースがくっついています。星というよりも、三つ葉のクローバーといったほうが正確かもしれません。

地上から最上階を見上げたところ

全戸角部屋という形状ゆえ、居住者の人気も高かったんだけど、工程が特殊で建設費もかさむことから、わずか数年で廃れます。しかし、最盛期には全国で500棟もスターハウスが存在したそうです。

この県営団地も昭和37年に完成したもの。全部で9棟あるうちの2棟がスターハウスです。昭和37年といえば1962年だから、今年でちょうど60年経ちますね。見たところ、まだほとんどの部屋に住人がいるようでしたが、いつなんどき消えてしまってもおかしくありません。

昭和30年代に作られた団地や集合住宅は、およそ30年前から建て替えが進められてきました。令和を待たず、平成には全国のスターハウスはおおむね姿を消しています。しかし、2018年に日本建築学会からの要望で、赤羽台団地のスターハウスが国の登録有形文化財に指定され、今後も保存されることが決定しています。この東石井団地のスターハウスも今や貴重な建築遺産。その価値が認められて、うまく活用できたらいいのにね。

伊丹十三記念館から歩いて10分ほど。松山観光のついでにどうぞ

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