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THINK TWICE 20210801-0807

8月1日(日) CRYPTZOO

1日と日曜が重なると、キリの良さを感じるというか、なんとなく気分がいいのはぼくだけですかね。

ところで、アルバム『SEPTET』をリリースしたばかりのジョン・キャロル・カービーの新作が早くも登場します。

すでにサンダンス・フィルム・フェスティバルやベルリン映画祭で公開された、ビザールなアニメーション映画『Cryptzoo』のサウンドトラック。

幻想的な生き物を追跡して世界中を旅しているローレン・グレイは、彼らを虐待から救い、自らが運営する"クリプトズー"に避難させています。悲しいかな、ある軍隊がそれらの生き物の中でいちばん強力で謎めいたもの、夢をむさぼり食う"キメラバクー"に照準を合わせる───(あらすじ)

前作『俺の通っている高校が海に沈んだんだが(My Entire High School Sinking into the Sea)』で注目されたアニメーション作家、ダッシュ・ショウが監督。声優陣には『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』のマイケル・セラ、『ツイン・ピークス』でローラ・パーマーのお母さんを演じていたグレイス・ザブリスキーも名を連ねてます。これだけでおもろそう。

アメリカの伝説的アニメーター、ウィンザー・マッケイが1921年に手掛けた未完の映画『ケンタウロス』、ビートルズのアニメ映画『イエロー・サブマリン』、ラルフ・バクシ版『指輪物語』、フレンチ・アニメーションのカルト的作品『ファンタスティック・プラネット』などの作品にインスパイアされているそうです。たしかにそういう感じがしますね。

個人的には天久聖一さんが作るアニメーション作品を思い出したな。

アルバムは今月13日に配信開始。STONES THROWからはアナログ化も予定アリ。映画は20日にオンラインで全米公開。日本で観られるかは不明。見せろ!


8月3日(火) FIRST SHOT DAY-1

さっき近所のクリニックで1回目のワクチン接種。

そこまで規模の大きな病院ではないので、待合室にいたのは常時5、6名。看護師さんが希望者を入れ代わり立ち代わり問診。いったん診察室で医者の予診もあるけれど、それもほんの一瞬。処置室に入って、椅子に座るなり、気がつけば注射は終わってた。噂通りにシステマティック。接種後の待機時間15分も含めて、病院にいたのは実質30分くらいだったかも。ほんとに呆気なくて、びっくりしました。

ワクチンを打ったのが17時過ぎで、今、この日記を書いているのは、日付が変わった午前2時。9時間くらい経過している計算です。ぼくが打ったのはファイザー製のワクチンなんだけど、注射針を刺した左肩に軽いつっぱりとわずかな痛みを感じるくらいで、発熱やその他の症状は出てません。

朝、起きた時、どんな感じなのか───また明日書きます。


8月4日(水) FIRST SHOT DAY-2

朝8時過ぎに起床。

目覚めた瞬間はワクチン注射のことをまったく忘れていて、枕元に置いてあったスマホを手に取る瞬間、肩口に体重が乗っかった瞬間、ズキッと軽い痛みが左上腕に走り、それでようやく思い出した感じ。ただし動かさなければ、ほぼ気にならない。今のところ、熱や倦怠感もまったく無し。これがピークで徐々に痛みも治まっていく感じなのかな。

そこから半日が経過し、今は20時。

夕食とお風呂を済ませました。上腕の痛みは引きもせず、強まりもせず。相変わらず触ると痛いけど、飛び上がるほどではない。遅い午後からは仕事や用事もあって出歩いたけど、行動しているあいだはほとんど意識もしなかった。

そして24時。接種から31時間経過。

触れば相変わらず接種部位は痛いです。でも、ネットで出回っているクチコミのような、ベッドで寝返りが打てない、とか、腕が肩より上げられない、なんて書いている人に比べれば、副反応は無いと言ってもいいくらいかな。

それにしても。東京や大阪のような大都市圏に住んでいて、コロナ禍に関係なく歌舞伎町やキタあたりをノーマスクで飲み歩いているような人のところまでワクチンが行き届く日っていつなんでしょうね。


8月5日(木) FIRST SHOT DAY-3

摂取からまる二日。

肩の痛みはほとんど無くなりました。まあ、勝負は2回目の副反応ですよね。もう早く打って、出るにしても出ないにしても、早めに蹴りを付けたい感じです。

ところで、先週から今週にかけて、山下達郎さん、村上春樹さん、そして細野晴臣さんが自身のラジオ番組で夏にちなんだ特集を組んでました。

達郎さんは毎年この時期になれば、何十年もサーフィン&ホットロッド特集をやってきたので、今回はちょっと趣向を変えてポップス寄りの選曲。

細野さんはまるで大瀧さんのラジオ番組「ゴー・ゴー・ナイアガラ」を彷彿とさせるような、巧みな編集が冴えてました。いちばんヘンテコな選曲だったのが村上さんでしたが(笑)同じようなテーマなのに三者三様で、とてもおもしろかったです。

これらの特集を聞き終えて感じたことは、やっぱりザ・ビーチ・ボーイズの偉大さかな。

ビートルズのすごさは、良くも悪くもジョンとポールの全方位的才能(ソングライティング、歌手、演奏家、ルックス)に尽きるし、彼らの場合、音楽以外でもさまざまな発信力があって、音楽面だけでなく、ファッションや思想、ライフスタイルに至るまで、世界中の若者を感化するようなエネルギーがありました。

いっぽう、ザ・ビーチ・ボーイズの場合、もちろんブライアン・ウィルソンはソングライティングに関してはまぎれもなく天才だけど、それ以外の部分では不安定な要素が多々あったわけです。

そこを補うように、ウィルソン兄弟を中心としたバンドメンバーたち、ヴァン・ダイク・パークスやテリー・メルチャーといった才人、あるいはレコーディングで活躍した最強の演奏家集団「レッキング・クルー」なども含めた緩やかな共同体が誕生し、いろんな人が出たり入ったりしながら、常にどこか〈建設中〉で〈未完成〉のような雰囲気を醸し、そこがいかにも《終わらない夏》って感じがして、魅力があるんじゃないのかなと思います。

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ちなみに、ぼくが一番好きなザ・ビーチ・ボーイズの作品は1970年発表の『サンフラワー』です。*1

*1 『ペット・サウンズ』は殿堂入りとします。素晴らしすぎて。

ブライアンが『ペット・サウンズ』の制作で精根尽き果ててしまい、続けざまに取り掛かっていたアルバム『スマイル』も完成させられずに頓挫。ドラッグやメンタルヘルスの問題も相まって、彼がほとんど使い物にならなくなったとき、弟のカール・ウィルソンが奮起します。

そして、温厚そうなカールの人柄が前面に出た『ワイルド・ハニー』や『フレンズ』のような親しみやすいアルバムを挟んで、新たに設立した自分たちのレコードレーベル「ブラザー」から出したのが『サンフラワー』でした。快活で、バンドらしい結束感がある音がとても好きなんです。

『サンフラワー』といえば、もうすぐこれが出ます。

『サンフラワー』とその次のアルバム『サーフズ・アップ』のリマスター&未発表音源集。全135曲でCD5枚組。欲しいけど……値段も値段だし。我慢かなあ。


8月7日(土) UPCYCLING

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アップサイクリング───廃棄された物をただ再利用するのではなく、より良いものに変化して価値を高めて、社会に再還元する、といった意味で使われますが、日本ではなかなか普及していないキーワードですよね。

で、ときどき読んでいる『Juxtapoz』でこんな記事を見つけました。

https://www.juxtapoz.com/news/design/make-do-nicole-mclaughlin-s-movement-for-circularity/

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すでにアークテリクス、エルメス、クロックスのようなブランドとコラボレーションしていたり、HypebeastやViceのようなストリートメディアだけでなく、ヴォーグなどでも特集されてる人なので、何を今更なのかもしれないけど、モダン・アートとクラフトの中間にあるような作品で、凄くワクワクしました。

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彼女の名前はニコール・マクラフリン。

ニュージャージー出身のアーティスト。もともとリーボックで働いていたとき、廃棄されていた試作用のスニーカーをアップサイクリングして制作を始め、それをインスタグラムに投稿したところ、爆発的な人気を獲得して(フォロワーは約65万人)、専業デザイナーとして活動を開始しました。

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世界的なブランドとコラボして作品をつくるのは、収益をさまざまな社会団体に寄付するためだったり、あるいは彼女が作品づくり同様に重視してるのが、彼女のアイディア、思想、ノウハウをたくさんの人にシェアして、実践してもらうためのワークショップの主宰。現在はNPO団体をオーガナイズして、一般の人から大企業にまでアップサイクリングの楽しさと重要性を広めようとしている、社会芸術家でもあるんですね。

彼女の別のインタビューを掘っていたら、興味深い事を話してました。

「15歳のころ、聴覚障害者の男性と付き合うことになったんです。当時私は手話を知らなかったから、勉強しなくちゃいけなくて」と彼女は回想する。「私の人生の中でも、面白い時期だったと思います。それをきっかけに手話が芸術的な言語だと知ったし、それで進路を決めました」

高校卒業後、ペンシルバニア州のイースト・ストラウズ大学で言語聴覚療法を学ぶ。しかし、自分が選択した学部では、「芸術的な言語」のはずだった手話の神経学、音声学的側面ばかりで、手話自体の面白さを学ぶ場ではないと気づき、デザインの道に進むことを決める。そしてイースト・ストラウズ大学の一般メディア研究コースで学びはじめる。

ぼくも再三書いてますが、ずっと手話に強い興味を持っていて、自分でも学んでみたいなと思って、関連書を読んだり、YouTubeなどで動画を観たりしています。きっかけは肉体言語としての手話が持っている優美さや芸術性に惹かれてのことで、そこから先に言語としての興味があります。

でも、聾の人たちにとっては、自分と他者、あるいは自分の意識と無意識をつなぐための、すごく切実な道具なんですよね。そのギャップみたいなものに対して、どうそれを埋めるかというヒントが、これまでずっと見えてこなくて、ある種のもどかしさを感じていたんです。

言葉にできなかった思いを、別の表現に置き換え、言語のようにやりとりすることで、他者に伝えていく───そういう意味で、ニコールの活動はぼくに新しいアイディアを与えてくれる気がしています。

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ちなみに、あなたにとって必需品は? という質問に彼女は「JUKIの工業用ミシンよ」って答えてました。縫製工場や仕立て屋さんでよく見かけますけど、クールですよね。裁縫とか刺繍とかいっさいしないし、ちゃんと使ったこともないけど、ミシンって大好きです。老後の楽しみにしようかな。

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