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THINK TWICE 20211219-20220101

ついに来るべきときが来たというか、毎週土曜更新を謳っていたこのnoteを放置して、2週間が経過。

そのあいだほんとうに一文字も書けないくらい忙しかったか……といえばもちろんそうではない。書こうと思えば何かしら書けたはずだ。書けないときには書けないということが話題になるわけだし。

───とはいえ、この期間にポッドキャストは2回更新。今年のベスト・アルバムからの特集、そして夢をテーマにした正月編をアップ。

また、Spotifyにはベストソングを集めたプレイリストを公開中。

で、この2週間をふりかえってみると、やはり飲む機会が多かった。2年ぶりに松山へ帰ってくる友人もいたし、大人数ではないにせよ、忘年会的な集まりも躊躇が無くなった。

そして、ちょっとした隙間を見つけては、ひさびさに加入したディズニープラスで、映画やドラマをしこたま観ていた。

・ビートルズのドキュメンタリー『ゲット・バック』
・ポール・マッカートニーにデフ・ジャムのリック・ルービンが迫る『マッカートニー 3,2,1』
・スター・ウォーズ・シリーズのドラマ『マンダロリアン』シーズン2
・同じく『ブック・オブ・ボバ・フェット』
・ずっと食わず嫌いだったCGアニメ『クローン・ウォーズ』(これがはっきり言って諸悪の根源。足掛け8年、全133話の「沼」)
・マーベルの映画『シャン・チー/テンリングスの伝説』
・同シリーズのドラマ『ワンダビジョン』
・同『ホークアイ』
・同『ロキ』
・映画『サマー・オブ・ソウル』
・映画『最後の決闘裁判』

───など。

これらを並行して、観終わったり、観続けたりしている。note書く暇がないのもわかるでしょう?(笑)

草森紳一『記憶のちぎれ雲』(本の雑誌社)

もちろん本も欠かさずに読んでいる。特に印象に残っているのが、草森紳一のエッセイ集『記憶のちぎれ雲』。

真鍋博、伊丹十三、田中小実昌らについての長大なメモワール。クイック・ジャパンで続けられた連載(2004年7月号から2007年6月号までの全18回)をまとめたものだ。連載は残念ながら草森さんの逝去によって終了した。

茂木淳一『MOGY-TV』(Quick Japan Records)

QJ本誌を読者として手に取ることこそ少なくなっていたが、ときおり編集部から献本をしていただいたとき、目を通していた。特にその時期は、QJがソニーと組んで立ち上げたレーベルから茂木淳一くんがアルバム(『MOGY-TV』)をリリースすることになり、プロデューサーとしてぼくも関わっていた。2005年のことだ。その関係で当時の編集長、森山裕之くんによく会っていた。しかし、草森さんのこの連載について何かを話した記憶は無い。

草森さんの手足となって、面倒な資料収集に森山くんが奔走していたことが文章から伺い知れた。おそらくそうした作業をぼくらのレコーディングと並行してやっていたはずだ。まだご存命だった草森さんの為人ひととなりについて、彼から貴重な話をリアルタイムで聞けたかもしれなかったので、残念だ。

『記憶のちぎれ雲』を読みおわった後、ずいぶんご無沙汰だった田中小実昌のエッセイをちくま文庫の全集で読み直している。

20歳代後半、殿山泰司のエッセイにドンハマりしていた。その流れで読んだから───もう4半世紀以上ぶりの再読だ。

30代前半で翻訳家として頭角を現し、40歳代前半で小説家として認められ、54歳で直木賞を受賞したコミさん。エッセイ集に収められたほとんどの文章は、今のぼくと同じくらいの年齢で書かれている。

ハタチ前に出征し、中国で敗戦を迎え、帰国後は東大に無試験で入学。その後、米軍基地で働いたり、ストリップ劇場で演出家兼コメディアンとして活躍したり───と、波乱万丈の人生のコクやオリが中年になって、後年、文学的に花開く形になった。

もちろん自分の人生と比較するつもりはない。

素材そのままの味で勝負できる食材もあれば、釣ったそばから海に捨てられるような下魚げざかなだって、小骨やウロコを取ったり、皮の剥き方や切り方にひと工夫すればおいしくなる。野菜くずだって集めて煮込めば美味しいスープができる。

コミさんや殿山さんのような文章に憧れつつ、これからも自分だけの文体を探したい。草森さんの文章もコミさんや殿山さんに比べれば、これといった"型"は無い。でも、太極拳の達人のような、つかみどころのなさが味わいとなっている。焦ってすぐ本題に切り込まず、全身をリラックスさせ、まわりをゆっくり回っていたかと思えば、急所に届くときにだけグッと力を込めている。ぼくもそんなふうに言葉に向き合いたい。

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水本アキラ
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