即興型ディベーターが調査型ディベートの大会で初めて審査員してみました

はじめに
10年以上即興型ディベートを行っていたのですが、先日初めて調査型ディベートの国際大会の審査員を務めさせていただきました。記念日ですね。迎え入れてくださった日本語ディベート国際大会の関係者の皆様、ありがとうございました!

詳細はこちら。日本国内外で日本語教育の教育者/参加者によってオンラインで行われました。
http://ndi.jp/
https://www.kandagaigo.ac.jp/kuis/news/131675/

議題は「救急車を有料化すべき」でした。調査型ではいわゆる古典と呼ばれ、英語即興型でも初心者向けに行われることがある議題の一つです。

感想を英語即興型ディベート出身者観点で書いてみたいと思っています、特に後半はややテクニカル(専門的)な内容となっていますがご容赦ください。

本大会でよかったところ
① コンセプトとして、”日本語ディベート”を世界普及しようとしているところ
英語ディベートはEFL/ESL(English as a Foreign Language / English as a Second Language)、すなわち英語を第二言語としている人たちも対象にしておりその部門も各種国際大会であったりします。日本国内でも、「英語がうまくなりたい!」と思い英語即興型ディベートを行っている人もいます。ある種日本語という観点でもいろいろな日本国内の留学生、アジア等海外での学生等国で日本語教育を行っている方/学んでおり同じように有益だと思います。

② 運営側も学生が主体的であること&学びの機会があること
「学生メンバーブログ」学生スタッフ は、学生主体で、運営にかけている想いや舞台裏、場合によっては参加者へのインタビューなどで発信されています。まずこれが素晴らしい。
また、別の角度から見ると、ディベートから得られるものは多くありますが、部活/スポーツとしてディベートを行う場合、他の部活動と同様、運営経験というものが生きてきます。私はこれがディベートと実世界の結節点の一つの在り方だと思っております(即興型では例えば、外務省/文科省が後援しているKyushu Debate Openという国際大会でも同様に、大学としてもマネジメントに関する講義とセットで単位認定を行うというような形で生徒のアクティブ・ラーニングを後押ししています。)特に調査型ディベートは大会運営に際して、教育/メンタリングに以前から力を入れている印象があり本大会も特定非営利活動法人全日本ディベート連盟(CoDA)の優秀な社会人メンバーなどからのメンタリングもきっとあったのだと推察しています。

③コロナ時代ふさわしく、参加者への寄り添い力が高いこと
正直なところ、いきなりディベートをするというのはなかなかハードルが高いかと思います。特にコロナによって顔を合わせて話すことができない、調査型の一つの醍醐味であろうチームとして団結して一つの議題に対して”膝詰め”で準備するというところが難しいところはあったかと思います。一方で、事前のインタビューで盛り上げることや、メンタリングがされていること、事前にセミナーがあるなどし、随所にいわゆる「カスタマージャーニー」ではないですが、「ディベータージャーニー」を最適化するための工夫を感じました。こちらは学生も含めた運営側に脱帽です。

審査員として感じたこと
①改めて審査員は「ディスカッション」や「意思決定」のトレーニングで有効だと感じた
実世界では、例えば1時間の会議の中でいろいろな論点がでてきます。それらをまずポイントごとの理解/整理を行い、その結果、どうするのかという意思決定すべきに入ってきます。今回の試合でも30分程度の試合内容があるため、それをリアルタイムで追いつつ、終わった後に数分で意思決定することが必要になります。これは普段の会議中も「今どうすれば意思決定できるのか?」「そしてその結果どうだろうか?」と考えていく、即ち理解や思考のスピードを上げていくうえでとても有益だと思いました。特に、今回は調査型ディベートのため、グラフや論文の引用などもされておりそれをどう判断するか含めて訓練になりました。

② (ややテクニカルで恐縮ですが)意外と調査型と即興型の審査の仕方は似ている
正直なところ少しカルチャーショックはあったことは事実です。調査型としては当たり前の「内因性」「重要性」「解決性」は言葉としては知っていたものの、いざスピーチで出てきて、また証拠資料が引用されると、普段と異なる頭の使い方になるため戸惑いはしました。一方で、即興型であれ、調査型であれ、結局は何をどう伝えたか、ということなのだろうなとある種開き直り(笑)、即興型で普段行うように論理構造を見たり、例や説明のわかりやすさ等を考慮して聞いていました。きっと調査型の方々が行う審査の仕方とは違うのかもしれませんが、私としては賛成側と反対側の論理に基づくとA→B→Cというような議論であるAをどれくらい分析しきれたか、というような部分で意思決定を行いました。ほかの経験のある先生方のお話も聞けて見方の違いなどを勉強させていただきました。(例えば、第二試合では松本茂先生が主審を務められていました)

今後の期待
今回はお邪魔できてとても面白かったです。今後としてはぜひ、他の方々もたくさん参加いただけるとよいなと思っておりました。例えば似たようなメンバーで日本語ディベートという意味ではCDSという場で即興型ディベートを進めているのもあるのでそちらとの相互交流もあるとよいなと思いました。

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