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母のエプロン

 中学の家庭科でエプロンを作らされた。私がミシンを動かすと必ず糸が絡まったりと碌な事がない。だから何もしないで家庭科の時間はずっと友達としゃべったり、まじめに縫ってる人にしゃべりかけたりして邪魔していた。みんなごめんなさい。さすがに期限ぎりぎりになり、若林さんぜんぜん進んでませんねと先生にせっつかれた。
 仕方なく母のミシンを借りて適当に作った。母は洋裁の内職をしている。エプロンをひとめ見て、縫い目を全てリッパーで解いた。こんなひどい出来を出す訳にはいかないと言う。そうだよなあ、お金もらって他人の服縫ってる人はそう考えるよなあ。そうして、母は自分で作り始めた。
 結局、母が作ったエプロンを提出した。まあ素晴らしく上手ですと、全てお見通しの先生は意味ありげに笑った。

ミシンの音切らしたことなきお母さんエプロンも雑巾も作ってくれた



歌は、NHK短歌5月号「短歌のはがき出そう運動」桜井健司先生に採っていただきました。先生ありがとうございます。
作ってもらっといて言うのもなんですが、どんなに下手くそでも自分で作らせるのが真の教育の気がします笑。気が強すぎる母。彼女とは考え方が合わないなど軋轢をたまに書いてきました。が、こうやって育ててくれた。お母さんありがとう。作品化して間接にすると感謝の気持ちが出せるのに。