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羽生結弦と私

ついにこの日が来ましたか…という感じで、さほど驚きはありませんでした。プロ転向の理由として、結果に対して取るべきものは取れたとのことですが、勝たなければ闘う意味はない…というのも本音にはあるのかなあと。怒られそうですが正直私も、表彰台の真ん中にいない羽生結弦を見るのはちと辛い…だからある意味、ほっとした気持ちもあります。

寂しさは特にないと、爽やかな顔されていました。引退でも何でもない、今がいちばんうまい、これからさらにうまくなると仰るのが強気の羽生さん健在という感じがして、嬉しかった。クワドアクセルも続けてくれるそうですし。どうか怪我にだけは気を付けていただきたいですが。

私が彼を初めて意識したのは、2012年ニースの世界選手権でした。それまでは、「なよっとした女の子みたいで、FPで体力が持たない子」という印象でした。すみません。

FP 映画「ロミオとジュリエット」

このFPのすごさは、途中の1転倒も含めて完成したプログラムになっている点です。私があれこれ言うよりも、ぜひYoutube動画を見て欲しいんですが、中盤のステップの途中で、バタンとコケるんですね。これが如何にも、傷付き倒れたロミオ、だがしかし、不屈の精神で起き上がる…!という予め設定されたストーリーに沿って演じられているように思えてならない。

いつもミスっていた最後のサルコウも降り、ドヤ顔のフィニッシュ、片手を高く上げて勝利宣言、くるっと回りうつむいて感極まる。顔を上げてやった、やった、やりきった…!とたぶん言ってる表情のここまで、何度も観返してしまいます。解説の荒川静香さんの涙声と共に、いつまでも心に刺さる名演技です。

ほか、1転倒も含めて完成したプログラムになっている名演技として、2009年全日本FP鈴木明子さんの「ウェスト・サイド・ストーリー」があります。

ニース次シーズンのNHK杯は彼の故郷宮城、高橋大輔との対決。このSP(パリの散歩道)で波が、オーラ様のものが、高橋大輔から羽生結弦に移ったのを画面越しにハッキリ、感じました。この大会で優勝した羽生さんですが、この時でも「この子が高橋大輔を継ぐエースかー」と思ったぐらいで、2度も五輪金を獲るとは、その頃は全く思っていませんでした。申し訳ありません。

ソチ五輪シーズン。GPFとソチ五輪であのパトリック・チャンを下して金。凄いとは思ったけど、五輪FPが2転倒ですし真央ちゃんのFPの印象が強かったので、この時でも今ほどの推しの選手ではなかったのです。ああ…誠に申し訳ありません。

ただこの時のFP2転倒は、多くの方が仰るように、団体戦直後の男子個人戦でしかもSP翌日にFPという気違いスケジュールの影響が大きいと、私も思っております。五輪関係者に強く言いたいのですがフィギュアの団体戦は個人戦が終わってからにしてもらいたい。なんなら無くてもいい。団体戦の応援も、結構体力奪うのではないでしょうか。大会の雰囲気が分かるので団体戦に出たいと仰る選手もいるようですが、体力の回復が遅いベテラン選手にとっては、不利なだけの気がします。ところで日本は銅メダルなん? 銀メダルなん? まだなん?(笑)

さて、私が羽生結弦は絶対に見続けなければいけないと初めて思ったきっかけ。それは、ソチ五輪の次シーズンのGP北京大会です。そう、あの衝突事故です。この試合、私は生中継を見てました。私はこの時まで、羽生結弦は、こういう場合さっさと棄権を選択するクールな子だと思ってたんですよ。ところが彼は試合続行しましたよね。

なんなん・・・なんなんこの子・・・

なんてアツいハートしてるの!


こんな漫画みたいな展開あるかー、というのは冗談で、松岡修造や佐野稔と同じく私も、やめて! 棄権して! って思いましたよ。だけども彼の、ある意味狂ってる、体がどうなってもいい絶対に滑りきるという執念に、こっちのハートも震えた。その瞬間、決めました。この子の演技はこれからもずっと見ようって。

5度転倒しながら最後まで滑りきった彼、この状態でもアクセルを跳んだ彼、キスクラでの涙、つられて私も貰い泣き。5度転倒で2位とは…大いなる忖度だなあとも思いましたが(笑)。
この時の衣装が赤×黒だったので、縁起が悪いと思ったのか、以降試合で赤系の衣装は着てくれなくなりました。それがちょっと残念。

私の友人の、これも伊藤みどりの時代からのフィギュアファン(♀)は
「プルシェンコも羽生結弦もナルシストだから好きじゃない。羽生結弦にいたっては同じ曲ばかりだから嫌い」
と言います。まあ…そういう意見があるのは認めます、しかしこの競技は大なり小なりナルシストじゃないと出来ませんぜー。

同じ曲ばっかりというのも、確かに、2020年の世界選手権前、FPのOriginを変更しまたSEIMEIを演ると聞いたときは正直もうええよ…と、思ってしまった。結局コロナで中止になりましたが、プルシェンコと同じ曲(Origin=ニジンスキーに捧ぐ)を演るというのがそもそも最初から無理があったのではないか?

自分の幼少期のルーツを探る意味でこの曲を選ばれたそうですが、どうしてもプルシェンコのイメージが強くて、なんとなく羽生さんには馴染んでないと思っていましたし。途中から本人も、「なんか違う…僕じゃない…」と気づいて、変えたのではないでしょうか。

そう考えるとフィギュアスケートというのはジャンプの難易度やスピードだけじゃないんだなと改めて思わせられる。プルシェンコのニジンスキーを20年近く経つのに折に触れて何度も観てしまうのは、ラストの薔薇の精、ポーズとってただ滑ってるだけの個所を繰り返し観てしまうのは、そこに醸し出されている芳醇なエキスを味わいたいから。そして、羽生結弦にとってのニジンスキーがSEIMEIであり天と地となのだろう、と思います。

まあ、私も、羽生さんにレゲエやボサノバ等でも滑って欲しかったなーという希望は若干あります。多分、なんでも滑りこなせる器用さは無いというか、きっと、これと思う曲じゃないとノらないんだよね。幾ら羽生さんでも、そんなに何でもかんでも応えられないよね。

クワドアクセルは、米のイリア・マニリンが今シーズンにも試合で成功させるかもしれない…だがしかし、それよりも前にエキシでいいから羽生さんがやっちゃって欲しい、たとえ公式認定されなくても! と思っている自分がいる。

才能・見た目・パッション・運が全部揃ったこんな子は、そうそう出てこない気がするんですよね…。ナルシストだから嫌いと言うた友人め、ナルシストで何が悪い! これは本物の天才だけに許される特権や。絶頂期の俺様発言、フィニッシュのドヤ顔、自分を指して「羽生結弦は」と言ってしまうところ、それらがないと、なんかこう…飽きたりへんのや。

言い訳が多いともいわれていますが、彼としては外国人風に説明のつもりで言っているのでしょう。ただ、五輪FP前日に捻挫して…は、正直、20年後に言って欲しかったかな。

最後に、順番は決められないですが、上に挙げたもの以外で特に印象に残っている演技を挙げます。

2018年平昌五輪SP「ショパン/バラード第1番ト短調」
怪我明け、久しぶりに登場した羽生さん。何度も見たショパンバラードですが、演技構成同じはずなのに、醸し出す空気感とかが全くの別物になっていた。ステップで「ウッフ~ン💖」が新たに入ったからでしょうか(笑)。

2015年NHK杯SP「ショパン/バラード第1番ト短調」&FP「SEIMEI」
夕方の演技だったため、会社を早退しネカフェに籠って観てました。録画なんか待ってられません。SPとFP両方ノーミスで揃えたのはシニアに上がってから初めてではないでしょうか? 会場の地響きと共に私の心も揺れた。

2021年全日本SP「サン・サーンス/序奏とロンド・カプリチオーソ」
ステップに入る前の手上げ、ステップ終盤のツイズルがたまらなくゾワワッとします。どこかのサイトで「狂気の演技」と言われていたが納得。

2022年北京五輪FP「天と地と」
冒頭の2転倒は仕方がないとして、その後ノーミスで滑り切った精神力、ミスはあってもプログラムとして完成させている点で、羽生結弦の意地を見た演技。やけに髪が長かったのは切る時間が無かったのでしょうか?

エキシビション「星降る夜 Notte Stellata (The Swan)」
ただもう…美しくて…神の子が…ここに舞い降りて…滑っているわ…。エキシで一番好きなプログラムです。後半で雄大なシングルアクセルを跳ぶんですが、アホな私は最初、アクセル失敗したと思ってました。これはディレイドアクセルといって、踏切じゃない方の脚を真っすぐの状態で跳ぶ、大きなシングルアクセルなんですね。大変難しい技らしいです。

えーと、絞りきれませんよね(笑)。40までスケートをやっているかはちょっと分からないですけど、と仰っていましたが、40歳近くでも滑っている羽生さんを見たいなあ。まだ余裕でトリプルアクセル跳んでたりして。

最後に、羽生さんをモデルに北京後に書いちゃった短編を貼っておきます。
よろしければ読んでやってください💖