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感想文部①/#毎週ショートショートnote

入学式の後、文芸部に勧誘された。
「無理です、俺創作なんて出来ないっすよ」
「うちは創作部と感想文部に分かれている。感想文でいいんだよ」
可愛い部員もいるという。まずは簡単な作品を書いた。

おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から桃が流れてきました。
人間の入ってる桃が水に浮くか?

助けを求めるたぬきを兎は櫂で押さえつけ、たぬきを沈めました。
兎ってエグくね?

白兎は鮫を騙して怒りを買い、全身の皮を剝がされてしまいました。
兎っていい奴に見えて悪い奴の筆頭じゃね?

「くだらなすぎる。部長に見てもらおう」

部室には教科書に載っている紫式部そっくりの女が上座に座っていた。
「部長です」
他に女は?
「女子は部長ひとり……」

勧誘員が申し訳なさそうに頭をかいた。俺が部室を出ていこうとすると
「待ちなさい。あなたのセンス、私大好き。文芸部にようこそ」

こうして俺は毎日、部長の書く、政治ドロドロ・不倫・エロ満載の超大作大河ロマン(連載物)の感想を書かされている。


(416字)
たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。