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公募ガイド8月「小説でもどうぞ」感想

今月はだめでした。残念、でもここ最近続いてたのが奇跡のようでした笑。今後もアイデア出る限り出し続けます。今月のテーマ「最後」、何作か感想書かせていただきました。

佳作「嘘ばかり」有原野分さん

一番気になったのがこちらです。私、ぎくりとしました。この回の締め切りが5月31日。上司のパワハラにより鬱になった主人公は復讐のために偽装自殺を企てます。で、いまニュースで上げられている某地方自治体首長に関する騒動(敢えて詳しくは書きません)が起こったのがその後。なんだかオーバーラップしてるように思えてくるのです。

作者様ごめんなさい、私が勝手に感じたことです。くだんの騒動も偽装自殺であったらなあと。だって死んだら終わりなんですよ。生まれ変わりはありません。あるかもしれないけど前世の記憶は消える(たまに残ってる人もいる)。だから死んだら「無」。復讐のために抗議のために死んだところで無駄とは言わないけど(報道されてる通り問題点山盛り浮き彫りになってるので)自分死んじゃってるんだよ……。いいのそれで?

真面目な方は降りるとか逃げるとか出来ないのも判らないでもないですが死ぬほど辛いなら辞めて逃げたっていいじゃないですか、それか文春にネタ売ってぐちゃぐちゃにしてやったほうがマシ。死ぬよりずっといい。だから首長さんの方も報道されまくって今すごく辛いならもう降りても、と思うわけです。読んでお気を悪くされた方いらしたらすみません。死を選ぶほどの辛い心中を自分などの知りようがないのですが、思わず書いてしまいました。
(何が何でも自殺を否定してるわけではないのですが……自己プロデュースの最後の仕上げとしての自殺というカテゴリもあるので。でもこの場合も残された人は悲しむわけなので……ちょっといま述べるのは難しいです)

だから偽装自殺はグッドアイデア、「表には出ないがその手の専門的な会社が実際にあるらしく~」作者様手順を詳しく書かれていますがこれ本当にビジネスにしません? いや、もうあるのかも。死んだことにして仲介屋をかいして海外逃亡する人、実際にたくさんそうです。

作品では主人公は騙されつつ妻に殺されるんですけどラスト「自分の人生を振り返りながら、自分自身に最後の嘘をついて、自分を騙すしかなかった。」うまい。けど、諦念して死んでいく主人公が悲しい。


佳作「最終出社日」湯崎涼仁さん

こちらもお仕事もの。私どうもお仕事ものに惹かれる傾向があるようです。こういう人いるいる~!ってリアルに感じられるんです。主人公の課長。こういうやたら厳しいそして勘違いの上司、なにか懐かしい手触りをもって胸に迫ってきます。データ管理していることを、課長だけが知らない。悲しい。中盤の「課員は私を玄関で見送り、全員こわばった表情でこちらを見ていた。」うまい、課長に「お辞儀の角度が~」と叱られはしないか、あるいはどうか気が変わらず無事に去ってくれと祈ってるのでこわばった表情になってるんですね。そして悲しみはクライマックスへ、ラスト、AIタクシー! こんな時代遅れ課長に相手してくれる人間はもういない。


最優秀賞「母校へ」尼子猩庵さん

こちら文字数が極端に少ない。でも余情はたっぷり。省略の見本のような作品です。さくさく読めて、疲れてるときにはこういうのが嬉しいんです。なんとなく作者様は描写たっぷりの文章も書けるけど、この作品では敢えてこの手法を取られた。そんな気がします。中盤で「あー、二人は幽霊なんだな。オチが読めちゃったよ」と思ったんですが(すみません)どっこい、ラストで裏切られます。上品そうな二人がエッまさかこんなセリフを……? 学校を呪わしかったと言いつつも最後の「ありがとよォ!」「さようならァ!……」には哀惜が感じられて、ほろりときました。