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NHK俳句への投稿作・1月号

選者:夏井いつき先生 題詠「七五三」
七五三あにいもうとで汚し合ふ
七五三祖母のはしゃぎもよき日なり

仏壇のまへで昼寝をしてゐたる  夏井いつき

仏壇部屋は怖いって言う人いますが、すごく落ち着くんですよ。線香とか蝋燭の蠟とか、何かよくわからない古の匂いが。夏井先生もおそらくそうなのでしょう。ひんやりした畳に身体をよこたえて、さぞ気持ちよさそうです。うちの家は電波の通りが仏壇部屋が一番よいので、ここで仕事してます。ゆえに昼寝もする。(昼寝しないと午後からもたない…)すごい落ち着きます。


選者:山田佳乃先生 題詠「冬構
通帳の印字の長さ冬構
少しづつ近寄る猫ら冬構

こぼれ聞く酒造り唄寒造  山田佳乃

蔵に試飲に行かれたのか、杜氏さんたちとの飲み会の場でしょうか。酒造り唄を聴きながら飲んでいて思わず聴き惚れて酒がこぼれてしまった。こぼれ聞く、の省略が巧い! 自分は省略ぜんぜんまだまだなので、こんな素晴らしくキレッキレの省略見ると本当にうっとりします。


選者:村上鞆彦先生 題詠「落葉」
金のゆめ落葉をかむる獣たち
ひとりでに落葉が回るビルの谷

一句目は佳作に採っていただきました。
村上先生、ありがとうございます!😂

選ぶべき句が堆し悴みぬ  村上鞆彦

私のような者でも100句のうちから5句選べといわれたら3句くらいはこれ!とすぐ決められますが、あと2句は同じくらいみんないいので正直言って困るのです。NHK俳句に届く膨大な量の句、それが目の前にどーんと積まれている。早く選んで!自分を呼んでいる句の前で、ちょっと待ってくださいね~と呼吸を整えている村上さん、といった景色が浮かびます。選ぶべき、なんだけど、逆にいえば落とさなきゃいけない。悴みぬ、にはそんな気持ちも込められているのかもしれません。


選者:高野ムツオ先生 題詠「手」
左右違ふ手袋のひと難波駅
手炙りにたこ焼きの生地ぼたと落つ
猫の腹に手を入れるとき血は熱し

詩に淫し炉心溶融する雪夜  高野ムツオ

被災体験をされた高野さん。炉心溶融の語を使われているのが大胆でギクッとしますが、ここで例えているのは詩にのめる心。詩に淫し。ただ愛するだけじゃない、切なくどうしようもなく溺れてやまない。詩という女の人と読んでもいい。



ほか、夏井先生、村上先生には今月初旬に特選でTV放送していただきました。ありがとうございます!🥰
Xに載せていますのでよろしければご覧ください。