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【御礼】春の星々(140字小説コンテスト第4期)

佳作をいただきました。ありがとうございます!

月々のお題に年末から投稿を続けていましたが、レベルが高く、これまでかすりもしなかった……なのでめちゃくちゃ嬉しいです。



もぐらはじゃがいも畑の隅に転がされた。土の中も温かかったが、ここはもっと温かい。陽気が自分を包み、遠くで何やらぴいぴい鳴いている。小さな羽虫が鼻先をかすめた。この地上が明るさに満ちた世界であるのが盲の自分にもわかった。自分はこのまま死ぬのだろう。しかしそれも悪くないと彼は思った。


以下は同時に送った二編です。

明石大橋の真ん中に差しかかった時、客が止めてくれと言った。お客さん、まさか飛び降り…? 冗談はやめてくださいよ。いやいや、満月があんまり綺麗だから。光源氏も明石の君とこの月を眺めたんでしょうなあ。お客さん、あれは架空の人物ですよ。そうでした。どうです、これから一杯、やりませんか?

目のわるい僕でも大星はわかる。夜空で一番明るい星だから。兵役を免除された僕は朝から晩まで原っぱにいる。家にいると役立たずと言われるんだ。夜、大星が輝く。今朝、二番目の兄ぃの戦死報が届いた。いつも僕の手を引いて遊びに連れてってくれた。兄ぃは大きいから、きっとあの大星に行ったんだな。


こちらもすぐにアップしたかったのですが、落ち着いた雰囲気のところだし、記事の引用は御迷惑でないかと色々考えておりました。なんでそんなこと気にするん? と皆さん思うかもしれませんが……。

hoshiboshiさんが提示されるお題の漢字っていつもセンスがよくて、今回の春は「明」。スタートの春、リセットの春は確かに明るい。私の一番好きな季節。お題を見た時、なんだか胸にすとんと来たんですよね。

次回の夏は「遠」。バァーッって夏の星空が浮かんで、これも選び方が素敵すぎる……!と唸りました。