弥生
さくらんぼうの花が咲いたよ、
十年越しだね
おおきなおなかを抱えて
うら庭のお散歩から戻ってきたのは
きみのおかあさん
寒い朝にほんのちょっと、春色の水彩
はじめて花が咲いた樹の話題に
ぼくら、とてもゆたかな気持ちになれた
まだまだストーブの暖が恋しい日々だけど
暦の上ではあと幾日で、弥生三月
啓蟄もまぢか
さくらんぼうは甘い実がつくかな
小鳥や虫たちに食べられないうちに
出来るだけ早めにとってしまおう
おとうさんとおかあさんの
意地汚い会話に聞き耳をたてて
さくらんぼうの味見に間に合おうとしたのかい
きみったら、その晩のうちに準備を終えて
あっという間にこの世の住人になった
弥生、その食い意地に敬意を表して
生気あふれるきみに、このなまえを贈ろう
初稿:2010/06/07
Ⓒ2022 Akira Yoshiyama and AKIRA
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