なみだのわだち
小高くまぁるい丘をかすめて
いくつかの星がつらなって落ちていくよう
ぽろぽろぽろぽろ とめどないなみだ
おまえのちいさなこころにもあるのだろう
泣くことでしか向きあえない恐さを感じる、おさない回路
そういえば、おとうちゃんもたくさん泣いてきたな
しくしく泣いたり大泣きしたり、いろんな涙があったけど
今おもいだしたのは、とてもつらかったあの日のこと
ずぶ濡れで泣きじゃくった嵐の夜
そのとき、なぜひとは泣くのか
おとうちゃんははじめて考えたよ
トーコ、泣くことでしか向きあえないものがあるんだね
おまえも大きくなれば、どこかでそれを忘れてしまうだろう
おとなの世界へと至るみじかい旅の途中で
やみくもに、泣くことをこらえてしまったりするんだろう
今おまえがその頬につけているわだちの記憶は
いつかきっと救ってくれる
不運の迷路にさまよう時の、おまえの寄る辺ないこころを
初稿:2004/02/29
Ⓒ2022 Akira Yoshiyama and AKIRA
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