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だからあなたは今夜も妻に相手にされない

 同僚の男性医師の皆さんと話していると、パートナーとの関係を愚痴る先生が少なくありません。「うちはだいぶご無沙汰で…」「先生のところもでしたか!?」「うちなんて妻に触れただけでぶちギレられますよ」「子供ができてからというもの、僕なんて完全にATMですね。夫婦生活なんて、そんな雰囲気には全くならないです。」「僕はもう1年以上妻に無視されてるので、会話すらないですよ。」「え、、、(一同無言)」
 という感じで、ご無沙汰自慢の話が盛り上がります。一方で円満な家庭を築いている若手医師もチラホラいたりします。
 私が所属している日本性科学会の講演会に参加した時に、ある有名な講師の先生がおっしゃっていたことに衝撃を受けました。「ベッドの中のことを、ベッドで解決しようとするから上手くいかない」「ベッドの中はそれまでの2人の答え合わせをする場です」なるほどその通り。あなたが今夜ベッドの中で妻と愛し合えるかどうかは、実はベッドに入る数時間前までにはすでに決まっているということです。ご無沙汰になる原因は、妻の性欲の問題とか、仕事の都合とか、子どもの存在だと思ってはいませんか?ご無沙汰先生がご無沙汰になる理由は、他の誰でもなく自分自身の言動にこそあります。ご無沙汰になるようなことを言い、ご無沙汰になるようなことをやっているから、答えが合うわけはないのです。でも原因が自分であるということがはっきりしているので、自分が変われば絶対に解決するということでもあります。円満先生のマインドを学び、実践することで、誰でも今夜からはベッドの中で答えが合うようになるのです!私は以前、子供がなかなかできないと悩んでいた同僚の男性医師にちょっとしたアドバイスをしたところ、なんと2ヶ月後には「妻がおめでたしました〜!」と喜びの報告をもらったことがあります。
 「妻は子供達を起こして朝ごはんを食べさせるのに、自分は起こしてもくれなくて朝ごはんもありません。ひどい扱いじゃないですか?」とおっしゃる先生がいたので私は思わず聞き返しました。「なるほど。ところで先生が子供達を起こして、朝ごはんを食べさて学校に送り出す日はないんですか?」典型的なご無沙汰先生です。ご無沙汰組の先生方の行動を観察すると、夕方18時になっても20時になっても病棟で看護師と雑談をしたり、医局でパソコンをいじったり、スマホのニュースを延々と見たりしています。週休日でもなぜか病院に来て、どうしても今日やらねければならない仕事なんだろうか?と思うような業務やっていたりします。一方で円満組の先生たちは17時前に業務を整理して当直に申し送り、着替え始めます。当直でもない休日は決して病院に来ることはありません。話を聞くと、子供をお風呂に入れるのは自分の仕事だとか、休日には必ず子供たちを公園に連れて行くとおっしゃいます。この行動の差が、ご無沙汰になるか円満になるかの決定的な差なのですが、実は表面上の行動の話ではありません。「なーんだ、家事育児を手伝えってことか」と思った方もいらっしゃることでしょう。ここで「手伝う」という言葉が出てきたあなたは、残念ながら「ご無沙汰組」に入っている可能性が高いです。この記事があなたとあなたの家族の人生を変えることを願っています。
 ご無沙汰組の先生方は、基本的に家庭運営は妻の役割だと認識しています。さらに自分も妻にお世話をしてもらう対象であるという痛々しい勘違いをしているため、妻は自分にあれをしてくれない、これをしてくれないと不満を持ちます。「お手伝い」ができた時は、砂山にトンネルを掘ることに成功した3歳児のようにドヤり「これやっといたからね!」と良い夫アピールを忘れません。家事育児に対しては他人事で受け身マインドです。
 円満組の先生方は、パートナーが無職か否かにかかわらず、家庭運営は夫婦2人の共同作業だと考えています。自分が家事育児に果たす役割は「お手伝い」ではなく「役割分担」と認識しています。妻が自分のお世話をしてくれたことに対してではなく、家の掃除や子どものお迎えなど、家庭運営に協力してくれる妻の行動に感謝します。自分自身が主体性を持って家事育児を担うマインドです。
 はっきり言います。令和の日本において、女性が男性の「お世話」をするという価値観は完全に時代遅れです。「お世話」をされる権利があるのは赤ちゃんだけ。大人は子供の笑顔を守り、養育する義務があり、その義務を夫婦で一緒に負うだけのことです。
 「おつかれさま」という言葉は、外で仕事をさせてもらってきた人が、その間に家で子供をみてくれた人に言う言葉だ。という言葉を以前ききました。当時育児経験もなかった私には意味がよくわかりませんでしたが、今ならなるほどそうだなーと思います。仕事というのはあくまで、その人が好きでやらせてもらっていることです。なぜならどの仕事をどれだけするかは基本的に自由に選べるからです。もし「きつい、疲れる、やりたくない」と思う仕事ならば、確実に向いていないので一刻も早く転職すべきです。私は産婦人科医の仕事が大好きで、自分がやりたいから家族の協力を得てやらせてもらっています。一方家事育児は、家族の養育義務を負った大人が果たすべき義務です。自分が好きでやっていることとは根本的に異なります。子どもという不確実要素に振り回されるので、どっと疲れます。養育義務を負うかどうかは選べるのでその時点でよくよく検討すべきなのですが、一旦その義務を負うと決意したのであれば、最優先でその義務を果たさなければなりません。ここを理解できるかどうかが、ご無沙汰先生になるか、円満先生になるかの最初の分かれ道です。
 子供を育てている女性にとって、17時から21時は戦争だということを理解しましょう。夕方のラッシュの中子供を迎えにいき、スーパーの長い列に並び夕食の買い物をして、食事の準備をしながらお風呂の準備をする。1分1秒でも貴重な時間です。一生懸命考えて作った食事でもこれは好きじゃない、お腹空いてない、あれが食べたい、と言われ、挙句の果てには「お兄ちゃんが僕のコップを勝手に使った!」とか騒ぎ出し泣きわめく。兄弟喧嘩がいつの間にか鎮圧されたと思ったら仲良くテレビをいつまでもみていて、歯磨きもしないしお風呂にも入らないまま21時を迎えようとしている!早く寝かせないと、明日の朝寝起きが悪くて学校に行く準備に手間取ってしまうので焦ります。ふいに学校でもらったプリントを確認すると、工作で使う材料を明日までに持ってこいと書いてあったりして…。もちろんママは自分のことをする時間なんて1秒だってありません。まさに命懸けの戦争です。この戦争に、あなたは戦友として参加し、一緒に戦っているでしょうか?敵陣にマシンガンを持って、たった一人走り出す妻の、援護射撃をしてあげられているでしょうか?子供たちがお風呂から上がる頃に帰宅して、スマホを見ながら「俺のメシは?」「箸どこー?」「ビール冷えてないの?」なんて言っているご無沙汰先生は、妻にとってはミサイルを撃ってくる敵艦に見えていることでしょう。この時点で夜のベットで答えが合わないことは確定しているどころか、妻はあなたに殺意すら覚えています。「中途半端な時間に帰ってくるくらいだったら、子供が寝るのが遅くなるから、全員寝てから帰ってきてくれる?」と言われた経験のある先生方はいないでしょうか。何を隠そう、私自身が研修医の頃に娘の育児を任せていた父に言われた言葉です!これはいわゆる「戦力外通告」です。役に立たないのはわかっているから、せめて邪魔はしてくれるなという意味なのです。
 家に帰ってからあなたが絶対に言ってはいけない言葉の第一位は「あー疲れた」。表面上は「おつかれさまー」と言ってくれるかもしれません。しかしなぜか妻の目が笑っていないことにお気づきでしょうか?仕事は自分が好きでやらせてもらっていることだというのを忘れてはいけません。妻の心の中は「私の方がよっぽど疲れてるっつーの!自分の好きなことを好きなだけやって好きな時に帰ってきておいて、疲れたってよく言うよね?!」職場の愚痴や上司の悪口を漏らすのもお勧めできません。もしどうしても夕方戦争に加勢することができずに、子供たちが寝てから帰宅するのであれば、家に帰ってからやるべきことは、圧倒的に妻の話を聞くことです。「そうだったんだねー。それはおつかれさま」というのはあなたの方です。彼女が何を一日考えていたのか、「出来事」ではなく「感情」にフォーカスして共感的に聞いてあげましょう。もしあなたが女性の味方になってあげることができれば、今夜ベッドの中で答えが合う可能性がグッと高まります。「女性の味方になる」とは、子供がいる夫婦の場合、子供を大切にするということとかなりの部分重なります。全ての女性にとって例外なく、一番大切なものは子供たちだからです。女性が最も「この人と一緒にいたい」と思う瞬間は、高いプレゼントを買ってもらった時よりも、実はあなたが子供を笑顔にしているときなのです。お風呂に入る時間には間に合わずとも、子供たちに絵本を読んで寝かしつけることができれば、ギリギリ合格かもしれません。
 子供を育てている女性は、例えて言うなら、背中にバックパックを背負って、肩から鞄を下げて、両手に重い荷物を持ってフラフラ歩いている人と同じ状況です。「その荷物僕にかしてよ。僕が持つから」と言える男性がいたら、別に白馬に乗っているわけじゃないのに、王子様に見えるものです。逆に自分は手ぶらで歩いているのに、さらに荷物を積んで持たせる男性と、どうしてベットの中で仲良くしたいと思うでしょうか。ご無沙汰先生が無意識のうちにやってしまっているのはそういうことです。「なんで奥さん機嫌悪いのかな?生理前かな?」ではありません。原因は他の誰でもなくあなたです。

 そうは言っても、僕なりに頑張っているんだと言いたくなりますよね。そう、ご無沙汰先生だって頑張っているのです。女性にとって大切なものの優先順位は①子供②パートナー③仕事④自分の順です。一方男性は①仕事②自分③パートナー④子供の順です。これはおそらく本能に刷り込まれているレベルなので、努力でこの順位を変えることができません。ほとんどの男性は自分が眠い時に、子供の泣き声で起きることができません。一方女性は自分がどんなに疲れていても眠くても、泣いている子供のそばで寝続けることができません。「あなたは父親のくせに、どうして子供たちのことをもっと考えてあげられないの?」と男性に言うことは、ペンギンに対して「君は鳥のくせにどうして空を飛べないの?」と言っていることに似ています。ペンギン君としては一生懸命羽をバタバタさせて、渾身のジャンプをしているのに、なんでこんなに責められるのか悲しくなることでしょう。じゃあ円満組の先生たちはどうやって妻の心を掴んでいるのでしょうか。彼らはもしかして、空を飛べるように進化したスーパーペンギンなのでしょうか?彼らは価値観をアップデートさせているという点で進化を遂げていることは確かですが、残念ながら空を飛べるわけではありません。ただし自分が空を飛べないということを理解し、大空を飛び回る美しい鳥を眩しく見上げています。つまり自分にとって大切なものの優先順位を変えられないということを理解しつつ、女性が子供を最優先にする気持ちに共感して寄り添うことができるのです。



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