『マッチ』の不倫は許されないのか⁈   ~ 近藤真彦 氏の不倫報道について(人権擁護法規の適用除外条項の対象となるのか)

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『マッチ』の不倫は許されないのか(人権擁護法規の適用除外条項の対象となるのか)


週刊文春が、筆者の理解するところでは部数の増進のために個人のプライバシーを不法に利用しているのではないかという問題提起をしておきたいと思った。

現代の日本の法律の枠組みにおいて、いわゆる「不倫」は刑法上違法とされる犯罪ではなく民法上不法とされる不法行為であることは多くの人は否定しないだろう。
この問題について、敢えてキャッチーな見出しをうたって少しネットで目立ってみるかと思ったけれど、切り取られて炎上する(というか誰も私のSNS投稿に興味など抱かないが)のも不本意だし「マッチの不倫は報道すべきではない!」という私の本心をタイトルにすることは出来なかった。

シンプルに言うと、マッチのプライバシー、近藤真彦氏の個人情報を、週刊文春がご本人の承諾なしに公にすることが果たして認められるのだろうかという素朴な疑問である。

ジャニーズにダメージを与えないようにメディアが忖度(「東出を刺すならマッチも刺せ」という論理は、不祥事で吉本だけを責めるなという意趣返しである)することは平等でないという一部の意見(なんかメディアのご意見番か何かと勘違いしているこの人がウザっ)が今回の報道の背中を押したとか「不倫しなきゃいい」とか「不倫の肯定は自己弁護」という耳障りのいい言葉が蔓延していてそれも解るのだけれども、僕はそんな単純な話でもないと思う。

法律の側面から言えば、社会システムを維持するための「法律という仕組み」は社会が変化すれば改正されるべきでしょう。多少飛躍するが仮に一夫一婦制度が一夫多妻制度に変更され、例えば不倫された側が、経済的補償によって報われるとか、された側にも自由恋愛を認めるというようなことが一般的になれば「不倫」という言葉自体消滅する。なので、不倫は実際に『あるもの』、存在する現実としてクールに受け止め、また個人の問題として個々には社会的に明らかにするべきものでないというコンセンサスは必要だと思っている。
男性が経済的地位や権力を傘に、女性の人権を疎外しかねないという危険ははらんでいる。しかし、既婚者が他の異性と性的な関係を持つことが一切許されないとしたら、それは別の意味で問題があると思う。

論点が少しずれたが、例えばマンションの隣に住む家族同士の付き合いのある一方の家の旦那さんが、月に一度他方の奥さんと逢瀬を重ねていることを知ったマンションの管理人が、その事実を何も知らない両方の家族に断りもせずマンション中の住人のポストに証拠写真を投函して公表したらどうだろう。名誉棄損にならないだろうか。
マンションの管理人はなぜそんなことをするのか。その旦那さんの会社のライバル社員が報酬を払うからと管理人に依頼していたとしたら、僕たちはどちらに嫌悪感を抱くだろう。


私たちには『知る権利』もある。しかしそれは公共の福祉、公共の利益を侵す行政や政治家の経済的な不正などに対するものであり、個人の私生活の内容にまで及んではいない。
近藤さんの社会的地位や社会的影響力に鑑みて、近藤さんを一私人とすることには無理があるだろう。一方で、近藤さんが25歳歳下とは言え、30代半ばの会社経営をする自立した大人の女性と合意の上で懇親を深めていたことについて、果たして公共の利害に影響することはあるのだろうか。

「これが正しい」「これしか認めない」という画一的な定説は、それが相応しい事象とそうではない事象がある。芸能人の不倫を面白おかしく報道して、何の関係もない人々があぁだこうだとSNSで論評しまくる現象は、将来的に自分たちの権利を疎外することに繋がるという深い洞察力を求めたい。

『そこは論点じゃないし、論じる話題でもないでしょ』となぜ皆、気づかないのか。

報道が、企業からの広告収入で成り立っているという側面と、企業が画一的な倫理感を押し付けるということについて、解決の道のりは遠いけれども、問題の本質はそこにあり、文春の媒体としての『倫理』、「パパラッチの在り方」が問われているのだと僕は思う。


スーダンの飢餓を訴えるために貧しい地区の人々、そのなかの何の抵抗の手段も持たない少女が野生のハゲワシに襲われる瞬間をとらえた報道写真家は、ピューリッツァ賞の受賞後に自殺したという。その写真を撮る時間があったなら、なぜその禿鷲を射たなかったのか。
近藤さんはかわいそうな少女ではないが、報道もどきの暴力と誤った世論に傷つけられていることは事実だと思う。文春、もっとやることあるだろ。


報道とその手段。
人の倫理観。
古くて新しい問題である。

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